VRの先進的な医療応用

バーチャルリアリティ(VR)技術は、スマートフォンのゴーグルへの取りつけやヘッドマウントディスプレイの小型化・低価格化で身近となった。また、3Dディスプレイやプロジェクションマッピングの進化はゴーグル不要のVRを可能とした。それらの技術がVR医療として応用されている先進的な例を紹介する。

Healioによると、強い血管閉塞性疼痛を伴う小児の鎌状赤血球症患者に、VRによる没入感の強いリラックスできる映像体験をさせたところ、痛みスコアの改善が認められたという。米デューク大学の報告では、自力歩行のできない脊髄損傷患者にVRで自分の足が歩行している映像を見せ訓練したところ、歩行機能が回復したとのこと。また英NIHRの例では、自閉症スペクトラムの各種恐怖症に対して、Blue Roomというゴーグル不要のVR環境でシナリオによる克服プログラムを受けさせたところ、恐怖症への対処能力の向上を認めた。

紹介したVR医療の分類は、1.鎮痛と緩和ケア、2.身体機能回復、3.心理教育効果である。既存の標準治療を補完するVR治療は、治療による害が極めて少なく、導入へのハードルが低い。大規模試験が計画しにくい領域ではあるが、脳神経科学の解明に伴い積極的な応用が模索され続けている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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