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精索静脈瘤による男性不妊を予測するニューラルネットワーク

男性不妊症(不妊の原因が男性側にあるもの)も少なくないという事実について、世の中の認識が近年進んできた。精巣静脈瘤という、陰嚢内で精巣に連なる静脈がこぶ状に太く蛇行した状態が、男性不妊の大きな原因のひとつとして、医学的には注目されている。ただし、その重症度と妊娠可能性の関連を予測する臨床指標やマーカーは確立されていなかった。

学術誌BioMed Research Internationalには、精巣内のカンナビノイド系(ECS)と呼ばれる遺伝子発現に注目し、ニューラルネットワークを利用して妊娠可能性を予測する研究が収載されている。実験動物で進められた本研究は、やがてヒトにおいても、精索静脈瘤が関与する不妊症の診断と妊娠可能性に利用できる予測モデルの開発に繋がる可能性を示唆している。

これまでの精索静脈瘤の臨床重症度分類は、必ずしも精液サンプルの質と相関しないといわれ、妊娠可能性との関連には未知の部分が大きかった。そのため臨床現場では、男性不妊に関して重症度分類の解釈に難渋する側面もあり、本研究の発展が期待されるところである。以前に紹介した、体外受精の成功率を高めるDeep Learning(過去記事)など、AIと生殖医療との関わりについては人々の期待も大きく、今後も注目してゆきたいトピックスである。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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