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中国のメンタルヘルスケア – 流行の最先端はVR療法

仮想現実『VR: Virtual Reality』の医療応用(過去記事)は可能性を秘めている。なかでも精神疾患への利用が注目されるものの、研究の多くは小規模で質が保証されていなかった。ようやく今年3月、JAMA Psychiatryに「高所恐怖症へのVR療法がランダム化比較試験で、効果的・安価・患者に好評」との良質な報告がなされた。世界の医療現場でVR療法が求められる理由は様々だが、中国ではメンタルヘルスケアにおいて革新の動きを見せている。

Scientific Americanには、中国のメンタルヘルスケアでVR療法が流行する様子が報じられている。理由のひとつは、広大な国と人口に対する精神科医の不足である。米国の10万人あたり精神科医10.5人と比べ、中国では2.2人に過ぎない。また、精神的な問題を抱える人の90%が治療を受けていないと推定される。

受診率が低い理由には、精神科医不足だけではなく、文化的背景も指摘される。他国に比べ、中国では精神疾患を汚点とする向きが強いと言われる。マサチューセッツ大学医学部の精神科准教授で中国精神保健プログラムの責任者Xiaoduo Fan氏は「精神科の利用ができても、助けを求めることに消極的なことが多い」と述べている。医学の成熟と、精神疾患の社会的オープンさは関係が強い。精神疾患を抱えた親族を閉じこめて隠す、いわゆる座敷牢のような話は、世界各国どこでも抱えてきた歴史である。

中国では急進した技術と合わせ、メンタルヘルスケアにVR療法の需要が高まった。医療資源の不足と、精神疾患を汚点とする消極的な姿勢、両方に役立つと考えられたためである。VR療法は、自宅で・プライバシーが守られ・ニーズに合わせ簡単に拡張できる。メンタルヘルスに焦点をあてる国際的VR企業Cognitive LeapのCEO、Jack Chen氏は「中国では精神疾患患者を犯罪者同然に見なした歴史から、精神医療の提供者への信頼が低い。一方でテクノロジーへの信頼は高い。VR療法はとても科学的と思われて偏見が少ない」とユニークな分析をする。

メンタルヘルスにVRを活用する企業は、前述のCognitive Leap以外にも、Oxford VRShanghai Invision Digital Technologyがあげられ、大学の支援を受けて精神保健プログラムを展開する。中国が精神科医療の不足を技術革新で乗り越えたとき、小売や金融のAI開発競争と同じように覇権を握るのだろうか。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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