手術の上手い下手 – AIが判定します

仮想現実(VR: Virtual Reality)を手術のトレーニングに用いることは、近い将来ごく一般的になるだろう。しかし、そのトレーニングをどのように評価し技術向上に結びつけるか、検討の余地がある。そしてついにひとつの方向性が打ち出された。『機械学習アルゴリズムが、脳神経外科医の手術の能力を正確に評価・クラス分けできる』という研究成果がカナダのマギル大学のグループによってJAMA Network Openに8月2日公開されている。

FUTURITYによると、同研究では脳神経外科手術のシミュレーター『NeuroVR』を用いて、技術レベルの異なる参加者50名(上級から順に、脳神経外科医・フェロー・シニアレジデント・ジュニアレジデント・医学生)に250の脳腫瘍切除を行ってもらった。手術器具の動きや強さ、腫瘍の切除の様子、出血の結果などによって、機械学習アルゴリズムが参加者の技術レベルを判定した。k近傍法によるアルゴリズムでは、90%の精度で参加者を正しく分類できたという。このことは、アルゴリズムが外科手術のレベルを正しく重みづけして、いわゆる上手い下手を判定できるようになってきたことを意味する。

同研究グループによると、開腹手術など別の研究モデルでは、技術レベルを分類する能力が実証できていなかったという。シミュレーターで正しく手術レベルを評価できるようになれば、やがて患者の安全性向上にも大きな役割を果たす。リーダーであるマギル大学のRolando Del Maestro氏は「医師とその教育者たちには、手術技術向上に対する時間的プレッシャーが増大している。オンデマンドで客観的な評価を得られるシステムが設計できれば、トレーニング成果の向上だけではなく、実際の手術中に用いてヒューマンエラーの可能性を減らせるだろう」と述べている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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