医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例その息切れは心不全かCOVID-19か? - 米メイヨークリニックのAI拡張心電図

その息切れは心不全かCOVID-19か? – 米メイヨークリニックのAI拡張心電図

米国では年間120万人が息切れを理由として救急外来を受診するという。しかし、COVID-19が流行した本年は心臓の問題と呼吸器感染症を区別するために救急部門は負担を強いられている。10秒ほどで記録されるルーチンの心電図検査をAIで解析し、息切れの原因が心不全であることを血液検査よりも有効かつ迅速に判断する研究が学術誌 Circulation: Arrhythmia and Electrophysiologyに発表された。

同研究を発表したメイヨークリニックのニュースリリースによると、AI拡張心電図は、心不全を疑った際に行われるNT-pro BNPのような血液検査よりも正確かつ迅速にLVSD(左室収縮機能障害)を識別することができた。アルゴリズムは駆出率35%以下の場合でAUC 0.89、50%未満でAUC 0.85を達成しており、NT-pro BNPがカットオフ値を800 pg/mL以上に設定した場合のAUCは0.80であった。

5月に米FDAはCOVID-19が疑われる状況での心機能障害スクリーニングにAI拡張心電図の使用を緊急承認した。循環器領域に限らず、発熱などCOVID-19と重複する症状の患者が受診した際、そのスクリーニングに多大な労力が必要となった。その結果、専門診療科になかなかたどり着けない例が臨床現場では多発している。AI拡張心電図は新型コロナウイルス陽性疑い患者の心機能障害スクリーニングのあり方を大きく変える可能性を持っている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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