医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例中国平安「AskBob」 - 骨盤X線診断AIを革新

中国平安「AskBob」 – 骨盤X線診断AIを革新

中国平安(Ping An)保険グループが展開する医学的判断支援AIツール「AskBob」を以前に紹介した(過去記事1)。AskBobは骨盤・股関節・大腿骨の外傷を骨盤X線画像(PXR)から診断する深層学習モデル「PelviXNet」を実装し、平安グループ関連医療施設や、台湾の長庚紀念病院などの実臨床現場で使用され、リアルワールドデータが集められている。このほど、PelviXNetの検証結果が学術誌 Nature Communicationsに発表された。

平安グループのプレスリリースによると、実装されたAIモデルはPXR全体から骨折や脱臼など網羅的な所見を複数かつ同時に検出可能で、その総合的な精度は92.4%を謳っている。それは大腿骨頚部骨折を単独で検出するような従来のAIシステム(過去記事2)の限界を克服しつつある。2021年3月までの約8ヶ月間、長庚紀念病院で同システムが使用された結果、骨盤の外傷に関してPXR画像での誤診率は、救急医で9.7%→0.7%、研修医で11.3%→1.58%、整形外科医あるいは放射線科医で6%→0.5%と、大幅に低下させる成果を示したという。

股関節・大腿の骨折は特に高齢者に頻発し、診断の遅れは機能予後のみならず生命予後にも影響する。平安グループが展開するスマートイメージングモデルは、同領域の医療AIにブレイクスルーをもたらすだろうか。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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