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統合失調症リスクを捉えるエピジェネティックマーカー

ベイラー医科大学などの研究チームは、機械学習アプローチによって統合失調症リスクを示すエピジェネティックマーカーを特定し、統合失調症の有無を血液検査で高精度に識別できることを明らかにした。

生物科学における比較的新しい概念として「エピジェネティクス」がある。生命はゲノムに依存し存在するが、遺伝子発現を細胞がコントロールするプロセスをエピジェネティック制御と呼ぶ。塩基配列の一部がメチル化すると遺伝子の働きが制御される事実があり、DNAにおける「4種の塩基配列だけ」が遺伝子の働きを決定するのではないというもの。同大学が3日明らかにしたところによると、研究チームは血液サンプルに基づき、統合失調症の診断を持つ人と持たない人の間で異なるメチル基プロファイルを特定したという。この新しいエピジェネティックマーカーによって構築したモデルは、独立したデータセットでの検証において80%の精度で統合失調症患者を識別できたとする。

研究チームはsPLS-DAと呼ばれる機械学習アルゴリズムを用い、ヒトゲノムの特定領域(CoRSIV)を分析することでこの成果を得た。研究を率いたChathura J. Gunasekara氏は「我々の研究は非常にエキサイティングだ。人生の早い段階で統合失調症リスクを予測できる可能性を示しただけでなく、他疾患への適用余地も大きい新たなアプローチを提案している」とし、成果の重要性を強調している。

原著論文:A machine learning case–control classifier for schizophrenia based on DNA methylation in blood

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