糞便から食生活を予測するAI研究

日々の食事内容は腸内細菌叢に直接的な影響を与える。これまで、血液や尿は栄養バイオマーカーの探索のために広く活用されてきたが、このほど、糞便から食生活を予測しようとする研究成果が公表された。 The Journal of Nutritionにて6日公開された論文によると、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームは、健常成人285名からなる5つの研究データベースを活用して本研究成果を導いたという。研究では、特定の食品(アーモンド・アボカド・ブロッコリー・クルミなど)の摂食量を、糞便微生物叢から予測するランダムフォレストモデルを構築した。全体の分類精度は70%だったが、大麦とオートミールを1つの穀物カテゴリにまとめると、23の分類群に対して77%まで向上がみられた。同様に15の分類群に絞ることでは、85%までの精度改善がみられている。 研究チームは「健常成人の食物消費は、バイオマーカーとしての糞便細菌から予測することができる」とし、食生活指導や栄養研究におけるコンプライアンスの尺度としても利用できる可能性に言及している。

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米Jvion社 – COVID-19ワクチン接種優先順位づけをAIが支援

新型コロナワクチンの接種が世界的に開始されているが、他国と比較し米国でのワクチン接種が想定より進んでいない現状が伝え聞かれる。米国でのワクチン接種は行政単位ごとに、CDCガイドラインに基づいた優先順位がつけられている。効果的な優先順位づけのため、医療AI開発企業のJvionは「AIを適用したCOVID-19ワクチン接種優先順位指数(VPI: Vaccination Prioritization Index)」の提供開始を発表している。 Jvion社の19日付プレスリリースによると、同社の提供するVPIは昨年春から発表してきたCOVID-19に対する地域脆弱性マップに更新を加え、CDCガイドラインと社会経済的脆弱性に基づき、地域のワクチン接種優先度を指標化したものである。ワクチン接種優先順位は、郡と郵便番号ごとに1から6までのスケールで評価するレイヤーがマップ上に示され、公衆衛生当局がワクチンの優先順位の高いエリアを地域社会の構造に基づいて絞り込むのを支援する。VPIツールはMicrosoft Azure上に構築された「Jvion CORE」という機械学習と予測分析を行うJvionの基幹AI技術で実装されている。2020年3月の公開以来Jvionのマップは、ホワイトハウスタスクフォース・連邦緊急事態管理庁(FEMA)・各軍組織・州および地方自治体のメンバーを含め、200万回以上閲覧されてきた実績を持つという。 日本においてもCOVID-19のワクチン接種計画が次第に明らかにされてきたが、初期の接種対象者である医療従事者の間でも計画に対する不安は否めない状況にある。COVID-19の打開策として期待される第一歩のワクチン接種が効果的に進むか、優先順位づけを含む各国の計画の推移に注目していきたい。

精子の細胞内pHから「体外受精の成功」を予測する機械学習アルゴリズム

体外受精(IVF)は不妊治療の1つで、取り出した卵子と精子から体外で受精卵を作り、これを子宮に移植するものだ。米ワシントン大学やノースウェスタン大学などの共同研究チームは、正常精子のpHからIVFの成功を予測する機械学習アルゴリズムを構築した。 Fertility and Sterilityからオンライン公開されているチームの研究論文によると、IVFを受ける男性で、精子に異常のみられない76名のデータからこのアルゴリズムを導いたという。ここではIVF成功予測のための主要な決定因子として、精子の細胞内pHを仮定している。精子pHおよび膜電位、臨床データから構築した勾配ブースティングによる機械学習アルゴリズムは、AUC 0.81、感度0.65、特異度0.80でIVFの成功を予測していたという。 研究チームは、臨床パラメータとともに精子pHなど受精能のマーカーを利用することで、IVFを受けている正常精子男性からの受精成功を予測できると結論づけている。生殖領域における機械学習手法の有用性にも言及しており、対象集団を拡張した研究継続とエビデンスの蓄積が期待されている。

ユーイング肉腫患者の5年生存率を予測するAIツール

ユーイング肉腫は小児期から青年期に好発する悪性骨腫瘍の1つだ。これまで個別化された予後予測手法は限定的であったが、このほど中国・福建医科大学などの研究チームは、米国患者データを利用し、ユーイング肉腫患者の5年生存率を個別化予測できる機械学習ツールを開発した。現在、開発されたウェブベースのアプリケーションは無償公開されている。 17日、Journal of Orthopaedic Researchから公表されたチームの研究論文によると、米国で1975年から2016年の間にユーイング肉腫に罹患した2,332名の患者データから、この機械学習アルゴリズムを導いたという。患者コホート全体としては、5年間の追跡調査による全生存率は60.72%であった。ツールには最も高い予測パフォーマンスを示したランダムフォレストモデルが選択され、診断時の年齢や性別、婚姻状況、原発部位、腫瘍グレード・ステージ、放射線治療の有無など13項目から高精度な予測を実現している。 著者らは「ユーイング肉腫における予後予測のための最初の機械学習ツール」として、研究成果の重要性を強調している。簡便に利用できるツールではあるが、現時点で臨床的有効性・妥当性の程度を外的に評価されたわけではないこと、またベースとなる対象集団が米国人が中心であることなどから、日本人を含む他集団への一般化可能性は未知であり、ツールの利用には注意が必要となる。

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医療費請求を自動化する機械学習ツール – Nym Health

米国における医療費の請求は、複雑なコード入力によって医療システム全体に負荷をかけている。コード関連の医療費支払い拒否が、医療機関に年間150億ドルのコストを負わせているという試算もある。イスラエル拠点のNym Healthは、病院の請求書発行を自動化する機械学習ツールを提供している。 TechCrunchでは、Nym Healthがツール開発と販売拡大のために新たに1650万ドルの資金を調達したと報じている。Nym社のツールは医師のカルテから自動的に適切な請求コードに変換する技術を用いている。臨床の用語を理解するための自然言語処理と分類のアルゴリズムによって、処置・検査・治療に対して最適な請求額を決定できる。 Nym社のソフトウェアは、医療の意思決定に対して介入しないコンセプトで「医師は最善を尽くしてプロトコルを守っている」と仮定しており、不正な水増し請求には対応していないという。現在、同社のサービスは分析1件あたり1-4ドルの料金で、米国内の約40の医療機関と提携している。

Apple Watchで人工関節置換手術を受ける患者のデータ取得・解析する臨床実験

Appleは、人工関節トップメーカーの米ジンマー・バイオメットと共同し、人工関節置換手術を受ける患者に関する新しい臨床研究を開始すると発表した。研究では、Apple WatchおよびiPhone用に開発されたアプリを通じ、患者の生体情報を含む医療データを医師に自動送信し、患者アウトカムが改善するかを評価する。 英メディアMedical Device Networkによると、アプリは患者からの言語的なフィードバックだけでなく、Apple Watchによって取得した手術前後のアクティビティログと統合・解析することで、現在の標準治療に新たなアプローチを加えることを目指しているという。ジンマー・バイオメットCEOのBryan Hanson氏は、「現在の治療法選択を改善したい。整形外科領域の歴史上、最大級の臨床研究を我々が開始できることが楽しみだ」としている。 近年、医療水準の向上と高齢化の両面により、人工関節置換手術は極めて一般的な手術となっている。手術後は積極的な活動の推奨によって、治癒の促進と全身状態の改善を図るが、患者本人には必要活動量を判断しづらいことも多い。米TechCrunchの報道では、遠隔医療部門Ted Spooner氏のコメントとして「適切な患者指導だけでなく、患者本位の治療を実現できる」との期待を示している。

RNA創薬で躍進する米スタートアップ・Panorama Medicine

これまで創薬のスタンダードはタンパク質を標的としたものだったが、近年、RNAを標的とした創薬の動きが活発となっている。特にこの3年ほどの間、ノンコーディングRNAを低分子で狙う創薬研究に対しては、米国のスタートアップが多くの資金を調達している。 PR Newswireの報道によると、2018年に生物学系研究者を中心として創業した米スタートアップ・Panorama Medicineは、ゲノミクスとAIを活用したRNA創薬およびプラットフォーム開発を進めているとのこと。16日の公表では、新たに370万ドルの資金を調達し、事業の加速を図るという。 日本においては、低分子を利用した核酸標的の創薬研究は盛んとは言えず、アカデミアを中心に散見される程度にとどまる。次世代医療とも名指しされるRNA創薬の行く末に、世界の注目が集まっている。

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豪大手VC Blackbirdの共同創業者 – AIに強気な姿勢と医療応用への展望を示す

AIベンチャーにとってベンチャーキャピタルが果たす役割は大きい。オーストラリアの大手VCであるBlackbird venturesは、12.4億ドルの資金を管理しており、今年8月には同国内史上最大規模のファンドで5億ドルを調達し、地元ベンチャーの支援を行っている。Blackbirdの共同創業者Rick Baker氏は「AIを取り巻く技術的リスクがほとんどなくなった」と語っている。 Baker氏の発言は豪州のメディアWhich-50で報じられている。同氏によると「5年前の投資家は、企業が実際にAIを用いて規模拡大が可能か、AIの技術的なリスクを意識していた。私が思うに今その技術的なリスクの多くは消えた。なぜならAI・機械学習を中心としたプラットフォームの構築が進んでいるからだ」という。 AI技術に適した分野としてBaker氏は「医療の診断分野」が特に有望であると挙げる。現在、パターンマッチングの経験から高度な技術をもった人々が診断を下しているところに、AI・機械学習が価値を提供できるという。パターンマッチングは特に機械学習アルゴリズムが得意とするところであり、人的な作業パフォーマンスを超えられるという観点から最適な分野であることを同氏は強調している。