仏研究「患者はAIの臨床利用を危惧している」

パリ第5大学の研究チームは、慢性疾患の治療を受けている患者1000名に対して「AIに対する意識調査」を行なった。医療におけるAIの進展は著しいが、これに反し、当の患者間では新技術に対する期待感ばかりでないことが明らかになっている。 Health IT & CIO Reportが報じたところによると、「サイバーセキュリティやプライバシー問題による弊害が新技術による利益を上回る」と答えたのは3%にとどまる一方、35%もの慢性疾患患者が「AIを利用したデバイス、治療オプションの一部を拒絶する」と述べたという。ここに例示された医療AIは、皮膚がんスクリーニングアルゴリズム・増悪予防のモニタリングシステム・リハビリ目的のスマートスーツ・救急電話窓口におけるAIチャットボットの4つである。さらに20%の患者は、4つの医療AI全ての利用を拒絶する旨を明らかにしたとのこと。 特に予防・診断領域において、AIは革新的なブレイクスルーを引き起こすことが大きく期待されている。企業・アカデミアを問わず医療AI開発が加速するなか、ヘルスケアの中心にいる患者たちは必ずしも前向きであるばかりではない。説明可能な方法で頑健に構築された妥当性と、責任の所在を含む医師-AI関係の明確化が、いま強く望まれている。

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新型コロナウイルスが医療AIに変化をもたらす可能性 – マイクロソフト社のCTOが言及

テック大手各社が新型コロナウイルス感染症への対抗策を次々に打ち出すなか、Microsoft社も鋭意的に取り組んでいる。The Seattle Timesには、Microsoft社のCTO 最高技術責任者 Kevin Scott氏のインタビューが掲載されている。同氏はCOVID-19のパンデミックの結果、ヘルスケア領域のAIが大きく変化する可能性について語った。 Scott氏は、1960年代の米国アポロ計画と月面探査に魅了されて育った。現在米国で崩壊した医療体制に対して、AI技術を中心とした資金調達をすすめる必要性を強調する。「我々のムーンショットは、公益のためにヘルスケアを根本的に変革するものであるべきだ」と述べている。 Microsoft社は、シアトル拠点のAdaptive Biotechnologieと共同で、この数週間AI利用による免疫システムと反応をマッピングする研究を進めている。COVID-19に対する臨床試験へ進めることを検討しているという。Scott氏を中心とした多くの研究への投資は、今回のパンデミックを越えたその先も見据えている。彼個人の生い立ちと内面にも迫る叙情的なインタビュー内容を一読してみて欲しい。

英国 COVID-19に関する患者データを科学者コミュニティに提供

英国における保健福祉の執行機関であるPublic Health Englandは、ケンブリッジ大学の要請に対し、匿名化した「COVID-19の感染患者データ全て」を科学者たちに提供することを決めた。これらのデータは、科学者らの構築したAIアルゴリズムのトレーニングに活用される。 Medical Xpressが6日報じたところによると、これらのデータセットには患者の入院記録・人工呼吸器の使用記録・治療内容・転機などが含まれているという。科学者らはこのAIによって、「どの患者が最も人工呼吸器の恩恵を受けるか」「どの患者が積極的治療なしでの軽快が望めるか」「病院への患者受け入れ可能数」などを予測することを目指し、COVID-19に対する医療提供体制の抜本的な効率化を早期に目指す。 先進各国における比較的安定した医療システムでさえ、予期しない医療需要の急激な増加には容易に崩壊し得ることが明らかとなった。この脆弱性はどの国・地域にとっても対岸の火事ではなく、システムの堅持を見据えた最適化行動が欠かせない。特に医療・保健システムは各国固有の発展を遂げてきた経緯があり、地域性に寄り添った効率化の指針策定が急務となる。

スマートインスリンペンは糖尿病治療のゲームチェンジャーになれるか

AIが糖尿病治療を変革するといわれてきたものの、当初の期待に応えられていない現状がある。その理由には、実用的データの不足・AIのコスト・糖尿病治療にあたる医療関係者とAI開発者との関連性の欠如などが指摘されている。内服薬で糖尿病コントロールの幅は広がったがインスリン注射の需要は一定続き、インスリン使用者は3つの障害(投与のサボりや忘れ・投与量調節の必要性・低血糖のリスク)に直面し続けている。従来のインスリンペンの延長線上でユーザーに馴染みやすいとされる「スマートインスリンペン」は糖尿病治療の景色を変えることができるか。 Entrepreneurの記事では、インスリンの投与量と投与タイミングを記録し、Bluetoothのような通信を介しワイヤレスで連携したモバイルアプリに情報送信する、スマートインスリンペンを紹介している。ペンに搭載された血糖値センサとリンクしてインスリンの適切な用量を提案できるプラットフォームが期待されている。その具体例としてHIT Consultantでは、アイルランドMedtronic社とデンマークNovo Nordisk社がスマートインスリンペンによるインスリン投与データを共有するシステム開発で協力している件を報じている。 米国を中心にインスリン投与法は、体内埋め込みタイプのチューブから持続的にコンピュータ制御で注入する「インスリンポンプ」が発展してきた。一方、日本ではインスリンポンプの普及度が相対的に低い。スマートインスリンペンは検証結果次第で、より低コストでインスリンポンプを代用し、市場に浸透する可能性がある。糖尿病も他の疾患と同様、新技術の採用に高齢者が適応できていないという課題にも立ち返る必要がある。次世代の標準治療技術として、スマートインスリンペンは机上の理論を越え、実用性・血糖値測定精度・コスト面でのメリットを証明していけるであろうか。

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脳の蛍光染色画像におけるアストロサイト自動検出AI

トルコ・米の共同研究チームは、脳組織の蛍光染色画像において、グリア細胞の1つである「アストロサイト」を自動検出・セグメンテーションするための深層学習フレームワークを開発した。全てのコードはオープンソースとしてリリースされ、科学コミュニティが自由に利用できるとする。 20日、学術誌Scientific Reportsに掲載された同論文によると、アストロサイト画像を効率的に処理し、複雑な形態学的特徴を定量するための正確なフレームワークを構築したという。これにはマルチスケール方向フィルタに基づく革新的な細胞検出モジュールと、深層学習・スパース表現の活用によりトレーニングデータの必要量を減らしたセグメンテーションルーチンなどが含まれる。 アストロサイトは複雑な星型形状を持つグリア細胞のサブタイプで、過去10年間の多くの研究によって「アストロサイトが基本的な脳プロセスにおいて非常にアクティブな役割を果たしている」ことが明らかとされた。近年では、脳障害や神経損傷を治療するための有望なターゲットとして、アストロサイトへの関心は劇的に高まっている。一方で、アストロサイトの顕微画像における自動解析は、サイズと形態の大きなばらつき・複雑なトポロジ・高度にもつれた細胞ネットワーク、などのためにこれまで特に困難とされてきた。

Mindshare Medical 肺がん診断AIでCEマーク認証を取得

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子どもの肺音を自動分析 – 過剰受診を減らすAI技術

子どもの体調不良において、病院受診のタイミングは非常に難しく、子を持つ親の共通の悩みと言える。ポーランドのStethoMe社は、聴診器型デバイスを使うことで子どもの肺音を家庭で記録でき、独自AIアルゴリズムが呼吸器疾患とその重症度を識別する画期的なシステムを開発している。 Medgadgetが報じたところによると、同社のシステムでは、家庭で録音された肺音データをかかりつけの小児科医とリアルタイムで共有することができるという。医師は肺音データとアルゴリズムによる解析結果を参考にして、患児が一般外来受診をすべきか、救急外来受診をすべきか、あるいは家庭で様子をみることができるのかを判断する。 日本においても時間外を含め、過剰な外来受診はしばしば問題となる。一方で受診判断の拠り所は、その大半を一般感覚とインターネットによる情報に依存しており、受診前に適切な医学的アドバイスを得られる状況は限られている。患者・医療者双方に利益を与え、医療資源の効率運用と小児健康増進の両立を目指す同技術の今後には、各方面から大きな期待が集まっている。

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全米AIコンテストに選出 – バージニア大学の再入院を減らすAI プロジェクト

米国の公的医療保険制度であるメディケアとメディケイドの管理局(CMS)は、AIで医療を改善するアイディアを募る全米AIコンテストを開催している。バージニア大学(UVA)ヘルスデータサイエンスチームが提案する「再入院を減らすAIプロジェクト」が、300を超えるアイディアの中から絞られた25のプロジェクトに選出された。退院後早期の再入院は医療資源を圧迫する課題のひとつとして注目されている。 News Medicalが報じるところによると、UVAのチームはAIによってどの患者が退院後に再入院するかを予測するとともに、再入院を防ぐために患者個別の退院後の健康管理計画を提案することを目指している。UVAの病院では、全体の3%の患者によって退院後30日以内に再入院する件数の30%を占めることがわかっていた。保険請求と電子カルテからのデータ分析で、再入院を防ぐために対処可能ないくつかのリスク要因が特定されてきている。例として、予防ケアの社会制度を十分に活用していない、糖尿病などの慢性疾患を抱えている、医療リテラシー欠如による管理不十分、といった要因が挙がる。 UVAのデータサイエンティストBommae Kim博士は「私たちのプロジェクトの核となる考えは、介入可能な提案をすることにあります。例えば認知症で自身のケアが不十分な患者について、介護者と健康管理の選択肢について対話したり、患者を支援するための社会リソースを見つけたりすることが可能となるでしょう」と語っている。2020年2月までにUVAのチームはプロジェクトのアップデート版を、コンテスト主催者のCMSに提出し、2021年後半に100万ドルの賞金を獲得する7つのファイナリストへの選出を目指す。AIが健康管理の質を高めるとともに、医療コスト負担を削減する改革が期待されている。