2型糖尿病治療薬の開発にAI活用

デンマークの世界的な製薬企業 Novo Nordisk社は、AIを用いて創薬研究を行うe-therapeutics社と共同で創薬研究を行うと発表した。今回の共同研究では、e-therapeutics社が開発したAIシステムを利用して、2型糖尿病の治療薬開発を目指すという。 FierceBiotechによると、e-therapeutics社は、生物学的な視点で疾患の治療薬となり得る化合物を予測するAIシステムを持っているという。従来の創薬で用いられるAIは、ターゲットとなる単一の生体分子に作用する化合物を予測し、薬として応用するが、ほとんどの疾患は生体内の様々な要因が重なり合って生じるため、研究が成功する確率は高くなかった。しかし、今回の研究で使われるAIは、生体内の様々なタンパク質をネットワークとして認識した上で、その相互作用の中で作用する化合物を見つけることが可能だという。今回の共同研究は、オックスフォード大学の施設で12カ月間にわたって行われ、まずは2型糖尿病治療の鍵となる生体分子をAIによって探索するという。 Pharma Phorumによると、e-therapeutics社のCEOであるRay Barlow氏は、今回の共同研究はe-therapeutics社がこれまでよい成果を上げてきたから実現したことで、非常に光栄だと述べた上で、2019年にはほかの企業とさらに多くの共同研究を発表できるようにしたいと自信を見せている。

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心不全治療薬の適切な初期投与量を機械学習で予測

慢性心不全の治療薬ジゴキシンは、最適な血中濃度の範囲が狭く、薬物同士の相互作用(DDI)を受けやすい性質から、臨床で強い注意を必要とする。特に高齢者では中毒症状などの有害反応で入院や死亡に至るケースが多く、課題とされてきた。 Journal of Healthcare Engineering収載の論文は、台湾の医療センター307名の患者でジゴキシンの初期投与量の適切さを機械学習で検討した。複数の機械学習手法を比較し、決定木(decision tree)ベースのランダムフォレスト(RF)や、多層パーセプトロン(MLP)の優位性が示された。血中濃度の測定前に、初期投与量の適切さを予測することは、臨床での意思決定に大きく役立つ。単一施設のデータであり研究の更なる発展が必要と著者自ら指摘するものの、AI応用の臨床研究モデルとしての方向性は興味深い。 ジゴキシン以外にも、治療薬物モニタリング(Therapeutic Drug Monitoring, TDM)で血中濃度の解析を必要とする薬物は抗てんかん薬・免疫抑制剤・抗菌薬・抗不整脈薬など多岐に渡る。影響を与えるパラメータが複雑で、臨床面では扱いの難しい治療薬として認識されることも多い。特に初期投与のように個人の過去データがない局面では、AIによる予測モデル研究の発展の可能性が高い。

シンガポールのスタートアップ・Biofourmis デジタルバイオマーカーで3500万ドルを調達

シンガポールのスタートアップ・Biofourmisは、ウェアラブルデバイスから得られた生体データを収集・解析するAIプラットフォーム「Biovitals」で知られる。今回、同社のシリーズBラウンドとして、3500万ドル(約38.6億円)の資金を調達したことを公表した。 Venture Beatが21日報じたところによると、今回の資金調達によりBiofourmisは、米国・アジアにおける宣伝広告および販売の促進、データサイエンス部門の強化、規制対策などに重点投資を行うという。Biofourmisは2015年創業のヘルス系AIスタートアップで、強力な技術力を背景に急激な成長を遂げた。ウェアラブルデバイスによる生体データと既往歴などの患者情報から、各種健康アウトカムを予測する「デジタルバイオマーカー」の生成を目指している。 ヘルスケアAI開発において大きな障壁となるのが、有効な臨床データを利用できるかどうかだ。アルゴリズムのトレーニングに利用できる匿名化済みデータベースのうち、広く利用可能なものは非常に限られており、質の高い自前のデータセットを用意できることが成長の鍵となる。Biofourmisは米メイヨークリニックとの提携を公表するなど、臨床機関との積極的な連携も示してきた。

ラジオとAIが認知症高齢者を救う

英国では近年、認知症高齢者の入院が急増しているが、主な原因は定期内服の失敗や情緒の不安定などで、必ずしも重篤な疾患罹患に伴うものではないとされる。ラジオとAIを利用し、認知症高齢者の生活を変容させることで、入院を避け家庭での豊かな生活を取り戻そうとする取り組みを紹介する。 英プリマス大学が20日公表したところによると、英国の公的研究助成機関の1つ"The Engineering and Physical Sciences Research Council"による270万ポンドの助成を受け、新しい高齢者対象研究が行われるという。AIによるラジオ放送内容の個別最適化により、認知症高齢者の入院率低減を図ろうとするもので、放送内容は個別の服薬リマインダーや治療関連情報の提供だけでなく、嗜好に応じた音楽放送など多岐に渡るとのこと。 IT技術の向上を背景に、Connected Healthcareと呼ばれる「患者情報の統合による個別化医療の実現」が注目を受けるようになった。一方で、特に高齢者においては先端デバイスの導入が壁になりやすい。本研究では、高齢者により馴染みの深いラジオをメインのプラットフォームとして採用していることに大きな新規性があり、関心が集まっている。

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ハーバード大学 手術後の退院先を予測するAIアルゴリズムを開発

ハーバード大学を中心とした研究チームは、脊椎すべり症の手術を受けた患者がどのような退院先となるか、機械学習を用いた予測アルゴリズムを開発した。研究成果は3月27日、学術誌European Spine Journalにて公開された。 同チームの研究論文によると、大規模な患者データベース(The National Surgical Quality Improvement Program)を利用し、2009年から2016年までの間に脊椎すべり症に対して外科的手術を受けた患者のデータから、高精度な機械学習アルゴリズムを構築したという。アルゴリズムが予測を行うのは、自宅退院かそれ以外かで、非自宅退院にはリハビリ施設や介護施設などが含まれるとのこと。 脊椎すべり症は、壮年期以降に椎間板が変性することによって引き起こされることが多い。手術後の自宅退院が不可能となる症例では、社会福祉的な対応が欠かせず、退院先調整が難航するケースも少なくない。事前に退院後リスクまでを考慮した治療計画を立てることは、医療者・患者双方にとっての大きなメリットとなる。著者らは、今後他疾患についても同種の研究が加速することを指摘している。

ブラジルの手話翻訳アプリ Hand Talk – Google AI Impact Challengeから75万ドルの助成

Googleは世界における社会・人道・環境にかかる重大な問題をAIの活用を通じて解決を図る案を募り、資金の助成と同社による専門サポートを与えるプロジェクト『Google AI Impact Challenge』を開催している。 ラテンアメリカの民間資本投資協会LAVCAの公表によると、ブラジルの手話用リアルタイム翻訳プラットフォーム『Hand Talk』が最優秀プロジェクト20のひとつに選定され、Googleから75万ドルの助成を受けたという。助成金とGoogleの専門家によるサポートで、Hand Talkは手話翻訳の質向上と、国際標準化としてアメリカ手話(ASL)の翻訳サービス開始を目指す。 聴覚障害者のコミュニケーションの壁を破ることが使命のスタートアップHand Talkは、2012年に創設された。同社はポルトガル語からブラジル手話(Libras)への自動翻訳をWebアプリとモバイルアプリで展開している。世界保健機関WHOによると、世界の約3億6千万人の聴覚障害者のうち、約80%が自国の言語を理解できない問題を抱えているという。優良なアクセシビリティを提供する同種のAI技術開発(過去記事)は、重要な社会的使命を果たすことが期待されている。

「がんの最適な治療方針」を提示するAI開発

米MDアンダーソンがんセンターの研究チームは、AIを利用し、患者の病歴から最適な治療の選択肢と日常管理上のアドバイスまでを提示するシステムを開発した。医師がこのシステムを利用して患者の病歴を入力することで、現在存在している無数の治療方法から有効な選択肢を探ることができるほか、患者の病態に応じて挑戦可能な臨床試験の有無についても知ることができる。 医学誌The Oncologist11月号に掲載された論文によると、同チームは、MDアンダーソンがんセンターを受診し、診断・治療が行われた1000名のがん患者データをアルゴリズムに学習させたほか、2300万におよぶ論文をデータベース化し、システムが参照する治療法群を構築したという。著者らは「AIシステムにより、患者がどこに住んでいるのか、誰なのかにかかわらず、最良な治療を受けられるようになる」と大きな期待を寄せている。 医療、特にがん治療領域の進歩は目覚ましく、まさに日進月歩で知識が更新されており、専門医であっても最新の知識を持ち続けるのは非常に難しい。米ジャクソン研究所で同様のシステム構築を目指すSusan Mockus博士は、「大切なのは、重要な情報を置き去りにしてしまわないことだ」と話し、知識更新に遅れのないAIならではの有効活用であることを指摘している。

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Google アフリカのマラリア・デング熱対策にAI活用

Googleは、2015年に429,000人のアフリカの人々の命が失われたことを受けて、マラリアやデング熱に対処するためにAIの導入を検討している。このAIを活用することで、雄雌の蚊の分別が可能になる。さらにウルバチア菌に感染させた雄蚊だけを野に放つと、菌を持った蚊と交配して、孵化しないようにさせることができるという。同社のヘルスケアAI部門は、これまでにも糖尿病性網膜症による失明を防ぐAI開発など、世界的に必要なヘルスケアAIの開発に取り組んできた。その目的は、医療作業を簡略化し、医療従事者が患者に向き合う時間を増やすことにある。近年IT企業のヘルスケアAI開発は盛んで、IBMはすでにアフリカのマラリア対策のためにAIを提供している。 Googleは、マラリアやデング熱などへの対策に使用できるAIをアフリカへ導入する方法について検討している。Googleの子会社・Verilyが開発したAIは、大量の蚊を孵化させて雄と雌に分別することができる。その後、ウルバチア菌に罹患させたオスの蚊のみを大量に放ち、ほかの蚊との交配をさせると孵化しない卵が生まれる。その結果としてマラリアやデング熱の菌を持つ蚊の個体数を減らすことができると米・ITメディアCNETは解説する。南ア・新聞社Business Dayによると、GoogleヘルスケアAI責任者のKatherine Chou氏は、「私たちはマラリアやデング熱への対策について真剣に取り組み、Googleがどのように支援できるのかを考えてきた」と述べているという。WHOによると、2015年にサハラ以南のアフリカでは、約429,000人がマラリアによって亡くなっている。 Googleヘルスケアチームは、世界的に必要とされるヘルスケアAIの開発に取り組んでおり、糖尿病性網膜症を予測して失明を防ぐためのAI開発をすでに行っている。このAIは、網膜画像から網膜症を識別するための機械学習訓練を繰り返し行い、開発された。ナイアガラ・ビジネスメディアFootprint To Africaによると、同チームは「AIを活用して医療プロセスをより簡単にし、医療従事者が患者を向き合う時間を増やす」ことを目指しているという。IT企業のヘルスケアAI分野への進出は昨今盛んだ。IBMはすでにアフリカのヘルスケア市場に参入しており、アフリカの政策担当者はマラリアに対処するためにIBMのAIを使用している。