AIを利用しマイクロRNAから感音性難聴を予測

マイクロRNA(miRNA)は近年大きな注目を集めている。遺伝情報を持たないことからノンコーディングRNAとも呼ばれるが、特に哺乳類においてはmiRNAが遺伝子発現の多数を制御していると考えられ、疾患発症との関わりも多く指摘されている。今回、AIを利用した解析で、このmiRNAと感音性難聴との関連も明らかとされた。 学術誌Scientific Reportsに4日公開された論文によると、米カンザス大学の研究チームは、機械学習アルゴリズムを利用することで、外リンパ由来のmiRNAの情報単独から、感音性難聴の存在を予測することに成功したという。この成果は感音性難聴の発生メカニズムに関して、分子レベルでの理解に役立つ可能性もある。 感音性難聴のリスク因子には加齢があり、高齢化の進む社会においては疾患が与えるインパクトも大きい。研究チームは昨年、NeuroReportにおいて、miRNAが他の内耳疾患とも関連していること示した研究成果を公表しており、発生機序に基づく新しい内耳疾患治療法の開発にも大きな期待が集まっている。

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MyHealthTeams シリーズBで約10億円の資金調達

米サンフランシスコのスタートアップMyHealthTeamsは、ベルギーに本拠を置く世界的製薬メーカーであるUCBなどから、シリーズBラウンドにおいて約10億円の資金調達を実施した。 MyHealthTeamsは、慢性疾患を持つ人々を対象としたソーシャルネットワークサービスで知られる。現在33のネットワークを提供し、多発性硬化症・過敏性腸症候群・血友病・うつ病など疾患は多岐に渡り、13の国々から200万人を超えるユーザーを抱える。ソーシャルネットワークを介した心理的サポートや日常生活上のアドバイス共有などだけではなく、AIを活用したユーザー個々の需要に応じた患者教育も提供する。 同社による発表のなかで、CEOのEric Peacock氏は「慢性疾患と生きることは、世界の半数の人々が直面する現実だ。我々のサービスは適切な情報の共有とサポートを通して、患者のより良い病状管理につなげることができる」と述べる。

医療AI研究を守るのもまたAI – メリーランド大学のサイバーセキュリティ技術提携

個人情報の宝庫である医療機関の患者データに、サイバーアタックの脅威が迫っている(過去記事)。メリーランド大学は、ボルチモア校(UMB)とボルチモア郡校(UMBC)の間で協定を結び、医療データと医療機器をサイバーアタックから保護するためにAIを活用することを発表した。 Healthcare Innovationの報道によると、ボルチモア校の医学知識と、ボルチモア郡校のサイバーセキュリティ技術を組み合わせることで、医療データの安全性を高める計画が進められる。同大学の大規模データセットから機械学習モデルを設計する際には、関連する医療デバイスとシステム上のセキュリティリスク自体をAIが発見するという。 「今後の臨床研究プロジェクトは、その一部にサイバーセキュリティを含むものでなければいけない」と、ボルチモア校の担当者は述べる。医療AI研究のためデータ収集するデバイスやシステムの経路が増えるほどに、セキュリティに抜け道が生じることも自明である。従来のセキュリティホール探索に限界が生じたとき、そこにもまたAI活用の余地があるだろう。

誤警報がオオカミ少年にならないために – アラーム疲労を防ぐAI

病院内は患者の状態をモニタリングする電子機器で満たされている。無駄で頻繁なアラームに晒された医療者には、重大な知らせを見逃したり、判断が鈍くなるような反応が起きる。その現象は、通称 ’Alarm fatigue’(アラーム疲労)と呼ばれ問題視されてきた。特に集中治療室(ICU)ではアラームが救命に直結するリスクも高く、看護師らのストレスが高まり、医療の質を低下させる可能性が指摘されている。 米メディアNBCの報道によると、集中治療室へAI導入が進む中、アラームの質が改善されて、患者と医療者の双方にメリットが生じている。既存の単純なルールにしか従えない監視システムは誤検出率が高かった。とあるICUでは平均90秒ごとのアラームに看護師が反応し、アラームの3分の2が誤っている状況にあった。FDAは2005-2008年の間にアラーム関連の問題で500人以上の患者が死亡したと警告している。それらアラーム疲労の影響もうかがえる状況をAIアシスタントが改善しつつある。 カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)は、医療AIを推進する現場のひとつである。学習を受けたAIアシスタントは、偽の緊急フラグを無視して、確実性の高い警告を出す。また、既に起きている問題の緊急警告ではなく、重大イベントを事前に予測して通知するメッセージならば、事態を穏やかに受け取れる。同大学の救急医Christopher Bartonは「誤ったアラームが減少し、仕事が速く効率化されていると、病棟の看護師から肯定的なフィードバックを受けている」と語った。

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AIはオピオイド乱用からアメリカを救えるか?

鎮痛薬のオピオイド(広義での麻薬)は90年代以降、米国で急速に流行し世界消費の大半を占める。鎮痛を求めた患者が薬物自体に依存するようになった。過剰摂取での中毒死亡、依存患者のトラブルが後を絶たず、2017年にトランプ大統領は米国の公衆衛生上の非常事態『オピオイド危機』を宣言した。 Emerjによると、インディアナ州hc1.com社のオピオイド乱用検出プラットフォーム『Opioid Dashboard』は、処方箋の機械学習から、処方量と乱用の相関を検出できる。郵便番号・年齢・性別などの指標でリスクが高い地域を地図表示する。医療者は処方の際にリアルタイムデータでリスクを把握できる。インディアナ州は年間1000人超のオピオイド過剰摂取死亡者と多額の医療費を経験し、同社のパートナーとして流行改善に強く取り組む。 中毒患者治療では、IBMのAI ワトソンをベースとしたスタートアップ『Behaivior』が注目される。FitBitのようなウェアラブルデバイスが、中毒患者の心拍・体温・動き・皮膚反応を検知し、GPS位置情報と統合し、依存症の再発危険性を検知し早期介入可能という。オピオイド乱用は貧困地域で起こりやすく、経済格差の影響を受けやすいAIビジネスが持続可能な収益を確保できるかも今後の課題となる。

サーモグラフィーでの乳がん診断はAIによって確立されるか?

X線撮影によるマンモグラフィーは、乳がん早期発見のための基本的な検査手法である。一方、熱の分布を赤外線撮影するサーモグラフィーが、乳がんスクリーニングに有効という説も唱えられてきた。しかし科学的根拠が乏しく、マンモグラフィーを代替するには至っていない。 インドのメディアYourStoryは、サーモグラフィーをAIアルゴリズムで解析する乳がん診断技術Thermalytixを開発した、インドのスタートアップNiramai社を紹介している。マンモグラフィー撮影時の乳房圧迫の痛みを避けられる点や、アジア圏女性に見られる高濃度乳房でのマンモグラフィーのがん検出率低下に対抗できるとして、同社はサーモグラフィーの利点を強調し、有効性の検証を進めている。日本のドリームインキュベータ社が資金調達をリードしていることも話題となった。 米国FDAは2019年2月のプレスリリースで、「乳がん診断にサーモグラフィー単独でマンモグラフィーを代替すべきではない」と警告している。これはサーモグラフィーの有効性を不当に強調しマンモグラフィーを行わない民間団体やホメオパシー・クリニックに対抗する声明で、これまでも複数回出されてきた。果たして、AIによる乳がんサーモグラフィー診断は従来の技術的な限界を超えて、科学的根拠を確立できるだろうか?

AIがAiに光を当てる -死亡時画像診断への取り組み-

Autopsy imaging: 死亡時画像診断をご存知であろうか。Ai (iは小文字)は略語で、Artificial IntelligenceのAIと区別される。Aiは死後のCTやMRI撮影で、死亡時の病態や死因を究明する取り組みである。AI技術でAiを発展させる試みを紹介する。 学術誌Autopsy and Case Reportsでは、腫瘍の量が微小でも死亡に至る治療抵抗性のがん症例にVirtual Autopsy (Virtopsy: Aiとほぼ同義)を行い、機械学習で画像解析する手法が提唱されている。従来の解剖で困難な総腫瘍量を定量し、がん悪液質など病態の理解を深め、がん標的治療の発展が期待される。学術誌Brain Informaticsには、神経変性疾患患者の死後の脳MRIに機械学習を応用し、神経病理学との整合性を解析する手法が紹介されている。脳容積減少のモニタリングで神経変性疾患の早期診断を補助し、初期で進行を遅らせ止めるための治療法開発につながるという。 生体画像の読影でも人員不足が指摘される放射線科医が、Aiのすべてを担当するのは現実的ではない。また、死後変化に適切な解釈を加えられる放射線科医は少ないといわれ、Aiの普及にはAIによる支援が解決策となるのかもしれない。

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シンガポール、ヘルスケア産業での医療データを「統合」へ。

シンガポールのヘルスケア産業では、現在、AIの導入が積極的に進んでいる。業界をリードするのは、2018年7月に国立大学ヘルスケアシステム(NUHS)のNgiam Kee Yuan教授により開発されたサービス「Discovery AI platform」だ。 シンガポールメディアのChannel NewsAsiaによると、Discovery AI platformとは、病院に入院するすべての患者のデータを一元管理するプラットフォームで、これを参照することで、医師が診断の参考にしたり、病気の再発時期の予測が可能になるという。Discovery AI platformにより、医師が入院患者に対して適切な時期に適切な治療を施すことができるようになると期待され、実際に、シンガポールのある病院では試験段階として導入が開始されている。 Discovery AI platformの開発者であるNgiam教授は、Channel NewsAsiaの取材に対し、「これまでの医療では、複数の医療団体がクリニックに対して個別でコンタクトを取っていたが、医療組織間の横のつながりはほとんどなかった。しかしこれからのトレンドは統合 (integration)である。各自業者が持っているノウハウやデータベースをAI技術で統合をし、医師の仕事にどんな良い影響を与えられるか、考えていかなければならない。まずは2019年末までに医療現場での活用を目指し、研究を進めている」と語ったという。