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がん患者の健康状態をモニターするゲーミフィケーションアプリ

ゲーミフィケーションは、ゲーム要素を取り入れることでユーザーの行動変容やパフォーマンス向上を狙うもの。近年では医療分野においても発展の余地が模索されている。スペインのコンプルテンセ大学とサラゴサ大学の共同研究チームは、がん患者における心身の健康度モニタリングへのゲーミフィケーション応用に努めている。 Journal of Healthcare Engineeringに掲載されたチームの研究論文によると、Close2Uと名付けられたこのアプリケーションでは、がん患者に対して気分や疼痛部位に関する一連の質問に答えさせ、モチベーション向上を狙ったアドバイスや歌などが報酬として与えられるゲーミフィケーション機能がテストされている。疼痛の強弱測定においては「非常にひどい」と「非常に良い」を結ぶ直線上をマークする、疼痛部位の測定においては身体画像に該当領域をマークするなど、視覚的なスケーリングを取り込みゲーム性を高めている。また、患者間の報酬交換機能も備え、コミュニティにおける緩やかなコミュニケーションも実現する。 EurekAlertの取材に対し、研究を率いたGarcía Magariño氏は「このアプリにより、楽しみながら適切な健康モニタリングと相互支援を提供することができる。ただし、私たちのリソースと潜在的なユーザーの関心が重要であるため、いつ製品化されるかは分からない」とする。一方でスマート家電やスマートウォッチなどのデバイスに搭載することを計画するなど、野心的な一面ものぞかせている。

歯科のAI導入を促進する団体「DAIC: Dental AI Council(歯科AI協議会)」

歯科医療におけるAIの可能性を探り検証することで、AI導入を加速する目的の団体「DAIC: Dental AI Council(歯科AI協議会)」が米国において発足された。 歯科業界メディア DentistryIQに28日付で発表されたプレスリリースによると、DAICの設立メンバーは開業歯科医院・歯科業務支援組織(DSO)・メーカー・ソフトウェアプロバイダー・保険会社・研究所・大学などに所属し、歯科業界を代表する15名が集結した。DAICは、歯科業界がAIの活用に遅れをとっているという認識のもと、AIに対する懐疑的な見方や誤解を、正しい理解へと主導する役割を果たそうとしている。 AIによる歯科領域への直接的な恩恵である画像診断AIの一例を以前にも紹介した(過去記事)。DAICはその他にも診療計画・補綴物製作・審美歯科・保険請求などあらゆる面への活用を想定する。特に保険請求では過重な審査業務にもかかわらず不正請求が多数紛れこみ、無駄なコストは顧客に転嫁されている。その矛盾をAIが解消することで保険料が安くなり、歯科医療を求める人が増える。そのような業界全体が受ける恩恵をDAICは模索し提案していく。

ディープラーニングで変わる麻酔管理

全身麻酔で静脈注射されるプロポフォールの制御方法がディープラーニングによって変わろうとしている。現在主流のプロポフォール麻酔を制御する手法 Target controlled infusion(TIC)で血中濃度の目標を適切に維持するには、麻酔科医の専門的判断を要してきた。適切な麻酔レベルを自動制御できる次世代の手法の探究が進められている。 本年開催の International Conference on Artificial Intelligence in MedicineでMITのグループから発表された研究では、プロポフォール投与を管理するためのニューラルネットワークが開発された。論文の全文はプレプリント版としてarXivに公開中である。同研究では深層強化学習(Deep Reinforcement Learning: DRL)によって適切なプロポフォール麻酔深度が仮想環境で訓練された。 開発されたアルゴリズムは、標準となる自動制御手法のひとつであるPID制御の性能を有意に上回る結果を示した。同研究は、実患者で試行されていない仮想環境内の結果であり、承認を受けた臨床試験に進む必要がある。しかし、将来的には従来の機械制御にとって代わり、理想的な麻酔量をさらに洗練させる可能性を秘めているだろう。

チャットボットベースの症状チェッカーに欠けているもの

チャットボットベースの症状チェッカー(CSC)は現在、スマートフォンアプリとしても広く普及を始め、初期診断と受診先選定の拠り所となろうとしている。一方で、「CSCには決定的にかけているものがあり、従来の受診プロセスに及ばない」とする研究成果が明らかにされた。 Medical Xpressが報じたところによると、米ペンシルベニア大学の研究チームは、この種のCSCアプリがサポートするのは既往歴の確認や症状評価、初期診断、追加検査の選定、紹介などに限定されることを示した。研究チームは、既にサービス提供の行われているCSCアプリの機能レビューのほか、インタビューによるユーザーエクスペリエンス分析を加えた定性評価を行った。アプリ単独では実際の検査施行や検査結果の解釈、最終診断の提供などの機能が不足することを指摘する。また、アプリユーザーは柔軟な症状の伝達ができないこと、曖昧な病歴が許容されないこと、意図の分からない質問などに機能の不足を実感していた。 研究チームは、入力システムの改善や分かりやすい文章表現・説明、チャットボットにおける会話機能の向上などによって大幅に改善できる可能性があるとする。CSCが完全に臨床ワークフローに取り込まれるのは時間の問題とみる向きが強い一方、研究成果は当該テクノロジーの進む方向性にひとつの示唆を与えるものとなっている。

ヘルシンキ大学 – 頭に浮かぶイメージを画像化するAIテクノロジー

フィンランド最大の教育・研究機関であるヘルシンキ大学の研究チームは、脳波(EEG)をモニタリングすることにより「頭で想像するイメージ」を具体的な画像として描出する技術を開発した。これは近年急速に技術革新の進む「ブレインコンピュータインターフェース(BCI)」に基づくもので、文字のスペリングやPC上のカーソル移動などについては既に一定精度での実現をみており、新時代の技術として多大な関心を集めている。 オープンアクセスの査読付き学術ジャーナルであるScientific Reportsに今月掲載されたチームの研究論文によると、「neuroadaptive generative modelling(神経適応型生成モデリング)」と名付けられた新手法が成果の根幹をなすという。研究参加者はEEG測定下において、笑っている顔や年老いた顔などといった特徴的な顔貌を想像するように求められ、眼前のスクリーン上には大量の顔画像を連続して表示した。研究参加者のダイナミックな脳波変化から学習したAIアルゴリズムは、人間が頭で想像するイメージに類似した顔画像を生成し提示できるようになり、最終的な精度は83%を示していた。 Science Dailyの取材に対し、研究を率いたTukka Ruotsalo氏は「コンピュータは表示する画像と人間の反応をモデル化することで、ユーザーの意図に一致する全く新しい画像を生成できるようになった」とした上で、人間の顔を取り扱うことはこの新手法の一例に過ぎないことを強調する。将来的には、何かを描いたり説明する際にコンピュータが人間の創造性を補うといった活用や、人間の社会的・認知的・感情的なプロセスへの洞察を得る可能性までに言及している。

社会的孤独をスピーチから解析する研究

COVID-19の流行は社会的孤独をめぐる現状を浮き彫りにしており、孤独に対する技術について以前に紹介した(過去記事)。自己申告による孤独の評価には限界もあるため、表現される言語から感情を定量化するための自然言語処理が模索されている。 カリフォルニア大学サンディエゴ校からのニュースリリースによると、同校の研究グループは「自然言語処理で高齢者の孤独感を評価する手法」を学術誌 American Journal of Geriatric Psychiatryに発表している。研究に参加した80人の高齢者へのインタビューから言語的特徴を抽出し、機械学習アプローチによって質的な孤独感を精度94%、量的な孤独感を精度76%で予測することができた。 同研究によると、孤独を抱える人は孤独についての直接的な質問に対して「悲しみの表現が多く、回答が長くなる」特徴があった。また女性は孤独を自認する傾向が強く、男性は恐怖と喜びに関する表現が多用される、という解析結果もあわせて示された。「孤独者のスピーチ」を解析する手法の社会実装が近づくことを実感させられる研究のひとつである。

Savana EHRead – 深層学習と自然言語処理による精密医療の加速

過去20年間において、生物医学研究への資金提供は世界的に倍増したが、新薬の承認は3分の1となった。ここでは、対象を絞ったより特異的な薬剤と治療法による「精密医療(precision medicine)」の促進が求められていることには明確なコンセンサスがある。このブレイクスルーを実現するためには、日常診療によって生み出される膨大な記録情報である電子カルテ記述を活用することが欠かせない。 欧州連合(EU)の政務執行機関である欧州委員会(EC)はこのほど、EUが2018年から支援するプロジェクトの成果報告を行った。スペインに本拠を置くSavanaに対する支援は、2020年4月末までで120万ユーロを超える。SavanaのEHReadは、深層学習と自然言語処理によってカルテなど臨床記録上のフリーテキストを構造化・匿名化し、臨床研究の推進や日常臨床の質的向上に結びつく知見抽出を助ける。同システムは追加的なセキュリティレイヤーによって、競合他社と比較して大幅にプライバシー保護を強化しながら、非構造化テキストから効果的にデータベース構築を行うことができる。また、研究者の効率的な研究活動をサポートするため、臨床変数間の相関関係を自動検出・提示できるほか、疾患の予後因子の特定や薬理学的有効性の程度を評価する機能などを併せ持つ。 現在、EHReadは17の医療分野において、世界各国における臨床研究に取り込まれている。うち、2つの国際研究においては慢性閉塞性肺疾患とCOVID-19に関する有意な研究成果に結びついており、今後のツール活用と知見導出にも期待が集まっている。

網膜画像から体組成や腎機能を定量するAI研究 – 韓国「Medi Whale」

網膜は微小な血管や神経組織を、体外から非侵襲的に直接覗き込める臓器として、様々な疾患の前兆あるいは進行を可視化できる。網膜のスキャンから神経変性疾患を検出するAI技術の一例を以前にも紹介した(過去記事)。韓国のスタートアップ Medi Whaleは、網膜の血管をスキャンすることで、年齢や身長・体重といった体組成の指標、さらには腎機能を反映する血中クレアチニン値を予測して定量するといった、全身のバイオマーカーとして利用するAIアルゴリズムを開発している。 Medi Whaleの研究成果は、学術誌 Lancet Digital Healthの10月号に収載され、オンライン版が公開されている。血液などの生体サンプルを利用せず、網膜画像単独のディープラーニングによって47種の全身バイオマーカーを予測するアルゴリズムがVGG16ベースで開発され、そのパフォーマンスが評価されている。47項目の中でも特に高い予測力を発揮して応用の可能性が示されたのは、体組成指標(筋肉量・身長・体重)とクレアチニン値であった(決定係数R-square値で評価)。 網膜画像データは韓国・北京・シンガポール・英国から23万枚あまりが使用され、民族や人種的な背景によって予測力がバラつくなどの課題がある。しかし、全身の評価を網膜から行うことは、非侵襲的な観察が可能な臓器という利点が活かされたもので、今後のさらなる可能性が示されたユニークな技術開発成果と言える。研究グループは、健康診断を含めた臨床への技術応用を見据えて、研究の発展と評価を進めている。

ジョンスホプキンス大学 – COVID-19患者の予後を予測するAIアルゴリズム

米ジョンスホプキンス大学の研究チームは、COVID-19患者の予後を予測するAIアルゴリズムを開発した。予測ツールは、医療者の意思決定とリソース分配の改善に有用とみられ、大きな注目を集めている。 研究チームが23日、Annals of Internal Medicineにて公表した研究論文によると、本年3月から4月にかけてジョンスホプキンス大学の5つの関連病院に入院したCOVID-19患者827名の臨床データから、このAIアルゴリズムを導出したという。取り込まれた特徴量には、潜在的リスク因子である年齢や既往歴、BMI、バイタルサイン、肺機能、入院時における症状の重篤度などがあった。研究では、リスク因子保有の程度に応じて、COVID-19が重症移行しやすいことを疫学的に明らかにしており、重症化あるいは死亡した302名の患者では、進行の中央値が1.1日であるなど急速な転機を迎えやすい疾患特性も明確にしている。 Health IT Analyticsの取材に対して、研究チームのAmita Gupta教授は「病院への入院段階で、COVID-19による重症化または死亡のリスクを定量的に評価できる要因を明らかにした」としており、患者家族との事前連絡においてこれらの情報を聴取することにより、医療リソースの割り当てを適切に行うことが可能となることを強調する。

AIアルゴリズムの訓練データが米国3つの州に偏っている問題

新薬開発では、臨床試験参加者が特定の集団に偏ると、別の集団で効果が不十分となったり副作用が多く発生するようなことがよく起きた。その歴史を経て、近年では試験参加者の多様性を重視するのが当たり前となっている。しかし、医療AI開発でも同じ過ちが繰り返されようとしているのかもしれない。データセットの性別不均衡によるバイアス問題は以前に紹介した(過去記事)。 スタンフォード大学のニュースでは、米国におけるほとんどのAIアルゴリズム開発が3つの州の患者データセットに偏っていることを示した論文を紹介している。同大学の研究グループは「ディープラーニングアルゴリズムに使用されたトレーニングデータの地理的分布」について学術誌 JAMAに発表した。査読付き学術誌に投稿された近年5年間の研究論文を調査したところ、71%の論文でカリフォルニア・マサチューセッツ・ニューヨークの3州のいずれかの患者データを使用していた。また60%の研究では3州いずれかからのデータのみに限って利用していた。一方、34州からは全くデータ提供がなく、残り13州からも限られたデータしか提供されていなかった。 同研究では、この地域的に偏ったデータセット利用のAIが、望ましくない結果を示したかどうかについては明らかにしていない。しかし、革新的なAIアルゴリズム開発には、より大規模で多様なデータセットが必要であることは誰もが認めるところであろう。筆頭著者であるAmit Kaushal氏は「AIが臨床医学に参入しようとするときに、かつてと同じ誤りを繰り返すのを30年40年も待つべきではありません。問題の向かう先を見定め、前もって対処すべきです」と語っている。

爪の毛細血管から自己免疫疾患の診断を助けるAIソフトウェア

キャピラロスコピー(毛細血管顕微鏡)は爪郭部の毛細血管所見から、強皮症をはじめとする自己免疫疾患を早期に発見する目的で利用される。この検査の効率と客観性を向上させる目的に、スペイン・サラゴサに本拠を置くCapillary.ioは、ディープラーニングを利用したツール開発に努めている。 Capillary.ioが23日明らかにしたところによると、同社の新しいAIツールはスペイン内科学会(SEMI)と共同して開発されたという。このAIアルゴリズムは爪郭部の毛細血管の形状とサイズを自動検出し、高精度な測定と分類によって医師の診断を支援する包括的な指標を提供することができる。自己免疫疾患が微小循環に影響を及ぼす事実から、キャピラロスコピーは長く有用な診断アプローチと捉えられてきたが、顕微鏡観察による主観的な評価が主体となっていたため、高い客観性を備えたツールが望まれていた。 Capillary.ioのユーザーでもある、SEMIのPatricia Fanlo氏は「このツールによってキャピラロスコピーのパフォーマンスと有用性を劇的に改善できる。また、疾患診断に役立つ臨床パラメータをレポートとして素早く取得できるだけでなく、臨床情報を体系化して分析できるため、毛細血管における微小循環研究の促進も期待できる」としている。

医療画像AIマーケットの急成長はCOVID-19により鈍化の可能性

COVID-19のパンデミックは、「画像診断を中心としてAIによる自動化を加速させる」と多くの専門家は見込んでいたが、実際は市場の成長を阻害している可能性が示唆された。 英Signify Researchが22日公表したところによると、医療画像AIアプリケーションの臨床現場への取り込みは想定よりも下回っており、これにはCOVID-19のパンデミックに伴う技術的・商業的障壁が一因となっているという。一方で、医療画像AIマーケットの成長率そのものはおしなべて順調な加速が見込まれ、2022年には年平均成長率で44%、マーケット全体として2024年までに15億ドル規模に達することを予想している。 同マーケットのうちでも循環器系は最大の収益成長を享受することが見込まれており、呼吸器系がそれに続く。また、これらに脳神経系と乳房を加えた4セグメントで2024年における市場規模の75%以上を占めることとなる。2018年以降、60の医療画像AIアプリケーションが米食品医薬品局(FDA)の承認を受けており、ほぼ同数がCEマーク認証をクリアした。Signify Researchのシニアアナリスト・Sanjay Parekh博士は「医療画像AIの成長は今後も続く」ことを明言している。

AIとバイオスキャフォールド – 創傷治癒を加速させる先進技術

米テキサス州ヒューストンに所在するライス大学の研究チームは、機械学習アプローチにより「3Dプリントされたバイオスキャフォールド」の開発に取り組むことで、創傷治療における革新を求めている。スキャフォールドは「足場」を意味し、細胞増殖を促す環境の土台となるもので、再生医療における主要な要素のひとつと考えられている。 ライス大学が22日公表にしたところによると、同大学のLydia Kavraki氏が率いる研究チームは、3Dプリンティングにおける印刷パラメータからバイオスキャフォールドの品質予測を行うAIアルゴリズムを構築したという。チームが開発を進めるスキャフォールドは、損傷組織のプレースホルダーとして機能する骨のような構造を取る。多孔性のスキャフォールドは新しい組織に変わることで、細胞・血管の成長をサポートすることができる。創傷部位に対して最適化させるためには、3Dプリンティングによる個別のスキャフォールド生成が有用で、材料選定と設計を含む開発プロセスの迅速化と質的向上のために機械学習アプローチを取り込み、試行錯誤を重ねてきたとのこと。 Kavraki氏は「材料工学とコンピューティングの交差点には多くの課題がある」とした上で、同領域に参入する研究者が増えることを望む考えを明らかにした。Tissue Engineeringにオンライン公開されたチームの研究論文はこちら。

Ibex Medical Analytics – 英国「AI in Health and Care Award」を受賞

イスラエル・テルアビブに本拠を置くIbex Medical Analyticsは、英国が展開する「AI in Health and Care Award」を受賞し、総額5000万ポンドの資金を共有するプロジェクトの1つに採択された。 Ibexが22日公表したところによると、この受賞に伴い、同社のGalen Prostateはオックスフォード大学やロンドン大学ユニバーシティカレッジなどの大規模NHS病院6施設へ導入されるという。Galen Prostateは前立腺標本から高精度にがんの存在を識別するAIソリューションで、既に世界各国において多数の病理検査室に実装され、日常臨床のワークフローに取り込まれている。直近ではピッツバーグ大学医療センターにおける検証研究成果が、Lancet Digital Healthに公表され話題を呼んだ(過去記事)。 英国では毎年10万人が前立腺生検を受けており、その数は今後10年間で2倍になることが予想されている。病理医による詳細なレビューは時間を要するため、専門医の不足と相まって診断と治療導入の遅れ、誤診の増加が強く懸念されており、同領域におけるテクノロジーへの期待は多大となっている。

変形性関節症を発症3年前に予測する機械学習モデル

変形性関節症(Osteoarthritis: OA)は、軟骨の破壊や劣化により痛みを伴う関節炎や関節の変形をきたす疾患である。骨の損傷は不可逆的な段階まで進行して発見されることが多く、人工関節置換の手術などでOAは米国の医療システムに年間165億ドルの負担となっているという。 ピッツバーグ大学医学部とカーネギーメロン大学工学部の研究グループは「MRI画像による軟骨の3Dモデル構成に機械学習を応用し、発症前のOA発見を可能にする研究」を米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した。同研究では膝関節OAのMRI画像で訓練された機械学習モデルによって、発症や骨損傷の3年前に78%の精度で将来のOA進行を予測できた。 OA発症前のまだ可逆的な段階で患者を検出できるようになれば、将来的には手術を回避する予防措置が可能となるかもしれない。患者の予後と医療コストに大きな負担を強いるOAの臨床風景が変化する期待が持てる。

川崎病の血液検査がAIで確立されるか? – 米Prevencio社「HART KD」

日本の小児科医である川崎富作によって発見された「川崎病(Kawasaki disease:KD)」は乳幼児の発熱疾患として有名である。全身の血管に炎症を引き起こし、冠動脈瘤のような後遺症を残すことも川崎病が重要な疾患として認知されている理由の1つである。現在でも疾患の原因が特定されておらず、診断のための特異的な検査は確立していない。COVID-19の流行で、川崎病に類似した症状を呈する患者が発生していることから再び注目を集めるようになった。 米Prevencio社はAI主導のプラットフォーム「HART」で高精度の血液検査手法を開発している。同社は17日、川崎病診断のための「HART KD」を開発したことを、Business Wireにおけるプレスリリースで発表した。川崎病の子どもたちから採取した血液サンプルに対して同社のAIプラットフォーム上でタンパク質の解析を行い、疾患診断を可能にするという。 Prevencio社はシアトル小児研究所との共同研究を進めており、診断精度を裏付ける臨床での検証成果の発表が待たれるところである。特異的な検査手法が確立していなかった川崎病に、AI技術による恩恵がもたらされるか、革新がすぐそばまで迫っている。

Aidoc – 医療画像AIの導き手はイスラエルから

医療画像のAI解析ソフトウェアを提供するイスラエルのスタートアップ・Aidocは、Square Peg Capitalが主導するシリーズBラウンドの一環として、新たに2000万ドル(約21億円)の資金を調達したことを明らかにした。これにより、同ラウンドにおける調達額は4700万ドルとなった。 2016年設立のAidocは、高度な深層学習技術によって種々の医療画像AIを開発し、複数のモダリティに対して6つの米食品医薬品局(FDA)における認証を取得している。また、5月にはCTスキャンからのCOVID-19スクリーニング機能についても追加承認を得るなど、医療画像AI開発におけるトップランナーのひとつに数えられている。 Aidocの創設者であるGuy Reiner・Elad Walach・Michael Braginskyの3名は、科学・テクノロジー分野における研究者養成機能を担うイスラエル軍のエリートプログラム・Talpiotの卒業生としても知られている。同社のソリューションは現在、5大陸において400の医療センターに導入され、日常臨床の拠り所となっている。

デジタルフェノタイピングが精神疾患の分析を加速させる

デジタルフェノタイピング(Digital Phenotyping)と呼ばれる、「スマートフォンやウェアラブル機器に収集されるデジタル化された個人の行動データの特性」を解析する動きが盛んとなってきた。精神疾患へのデジタルフェノタイピングと機械学習の利用状況を評価したシステマティックレビューが学術誌 Harvard Review of Psychiatryに収載されている。 News-Medical.Netでは、ハーバードメディカルスクールの研究者から発表された同論文を紹介している。レビューでは、精神疾患にデジタルフェノタイピングが応用された51件の研究が絞り込まれ、そのうち16件に機械学習アプローチが用いられていた。対象とされた精神疾患は統合失調症・双極性障害が主であり、平均31名の参加者が約4ヶ月モニターされている。ほとんどの研究で加速度計・GPSからのデータが収集され、その他の指標として音声通話・テキストメッセージのログが用いられている。最も一般的に使用されていたアルゴリズムはランダムフォレストであった。 レビューによるとスマートフォンの機種・OS・年齢・人種・民族などに高いばらつきが見られており、著者らは研究同士の比較を促進するため報告形式の標準化を提案している。今後もデジタルフェノタイピングは精神疾患の評価と予測に応用が進むであろうが、より質の高いデータと大規模な研究が必要とされている。

体外受精における適切な胚選択をサポートするAIシステム

体外受精(IVF)は、妊娠を望む人々にとって価値あるソリューションとなってきた。一方で、体外受精の平均成功率は30%程度にとどまっており、技術的な打開策は多面的な検討が進められている。米国ブリガムアンドウィメンズ病院とマサチューセッツ総合病院の研究チームは、健康な出産に繋がる可能性が高い胚を高精度に選択できるAIシステムを開発した。 eLifeにて15日公表されたチームの研究論文によると、人工授精後113時間で取得された数千に及ぶ胚画像から、深層学習アルゴリズムをトレーニングしたという。導出されたアルゴリズムによる妥当性試験では、742個の胚から高品質なものを90%の精度で識別するなど高い汎化性能を示していた。また、胚の選定を行う臨床専門家との比較試験においても、そのパフォーマンスは有意に上回っていたとのこと。 アルゴリズムは高い識別精度を有す一方で、著者らは「当該システムが専門家による胚選択を支援するツール」であることを強調しており、あくまでスタンドアローンの選別システムとして臨床展開する意図のないことを明らかにしている。

ハーバード大学 – 医療的介入が寿命にどう影響するか?

ハーバード大学の研究チームは、マウスの健康生存期間を推定するAIシステムを構築した。これはヒトにおける「医療的介入がどの程度健康寿命延伸に影響するか」を明らかにするための基礎的研究となるため、大きな注目を集めている。 NeuralはNature Communicationsに収載されたチームの研究論文を紹介している。ハーバードメディカルスクールが主導した本研究では、マウスにおけるフレイル(frailty: 「高齢者の虚弱」を指すが、医学用語としての適訳は見つからず、日本老年医学会は現在「フレイル」との呼称を提唱している)を一生のうちに追跡した最初の研究だという。特定の薬剤や食事が老化プロセスを遅らせるかを確認するためには、マウスであっても通常は最大3年程度が必要となる。研究チームは60匹のマウスが死ぬまでを追跡し、歩行能力や背中の屈曲、聴力と言った非侵襲的検査を継続的に行い、フレイルに基づいてマウスの生物学的年齢を検出するモデルと、マウスの寿命そのものを予測するモデルを構築した。これらにより、2ヶ月以内の観察で各アウトカムの高精度な推定が可能となるため、医療的介入がどう機能するかをテストするツールとして利用でき、研究スピードの加速が期待できる。 ヒトの健康に影響を与える因子は、実験室におけるマウスと異なりはるかに多様であるため、即時的な応用はできない。一方で研究者らは、本研究をベースに「ヒトの健康スパンと寿命延伸に寄与する医学的介入」を迅速かつ正確に予測できるシステムの開発を見据えている。

院内転倒を予測するAIモデル – 韓国 Hallym University Medical Center

患者の転倒リスクを評価するAI技術を以前にも紹介した(過去記事)。韓国のHallym University Medical Centerは、医療施設における患者転倒事故を予測するAIモデルを開発したことを発表している。 Aju Business Dailyの報道によると、同医療センターが開発したAIモデルは過去10年・約34万件の症例に基づき、病歴や歩行パターンなどの情報をもとに患者の転倒事故リスクを予想する。さらには臥床や車椅子によって皮膚に発生する褥瘡の予測も可能という。 同AIモデルは、看護師が患者の健康状態をチェックするたびに、転倒や褥瘡のリスクをリアルタイムで示す。そのリスクが60%以上と予測された際に、医療センターでは医師と看護師を含む特別なチームを派遣して監視にあたる体制とのことである。

ブリティッシュコロンビア大学 – 医学生向けAI教育を開始

カナダの公立大学・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)はこのほど、医学生向けのAIコースを設定し、10月からのワークショップ型授業としての提供を開始する。 UBCが明らかにしたところによると本コースでは、AIエンジニアによる機械学習の理論講義、Pythonを利用したAIプログラミング演習、AIアプリケーションの評価トレーニングなどが含まれているという。また、受講者にはAI研究者らとの交流の場が用意され、「臨床キャリアにおけるAI」を考察する機会が設けられる。 ヘルスケアにおけるAIは急速な発展をみせており、次世代の臨床現場においてAIを度外視することはできない。医学生に対するAI教育の必要性も多面的に議論されるようになり(過去記事)、標準的な医学教育科目として取り込まれる日も遠くないかもしれない。

Nvidia – AIによる臨床音声の書き起こし・解析システム

9月13-14日に開催されたConference on Machine Intelligence in Medical Imagingで、Nvidiaの研究者は「日常臨床における医師と患者の会話を書き起こして分析できる、新しいAIシステム」を発表した。 Voicebot.aiが報じたところによると、PubMedデータベースの61億語でトレーニングされたBio-Megatronは3億4500万のパラメータを持ち、米国立衛生研究所(NIH)の自然言語処理・音声認識ソフトウェアによって調整されているという。Bio-Megatronは1ミリ秒の処理遅延のみで92.05%の精度での書き起こしを実現するとともに、会話中から主要な臨床概念を抽出し、先行するエビデンスとの紐付けや分類を行うことができる。NvidiaでヘルスケアAIのプロダクトマネージャーを務めるRaghav Mani氏は「過去数年間、当該領域に継続した注力を行ってきたが、情報の取得・データの抽出・患者体験の改善の観点から、その優位性は明確になりつつある」とする。 Amazonは昨年12月、医療者向けの自動文字起こしサービス「Amazon Transcribe Medical」を発表している(過去記事)。また、MicrosoftはNuanceとの提携により、同社のDragon Medical Virtual AssistantをMicrosoft Azureプラットフォームに統合するなど(過去記事)、大規模マーケットを見据えた積極的な開発競争が進んでいる。COVID-19の拡大に伴い医療者への負担が急激に大きくなるなか、日常臨床を直接的にサポートする技術として現場からの期待も多大と言える。

自動テキストメッセージで術後のオピオイド使用を減らす研究

米国では麻薬性鎮痛薬オピオイドの乱用が社会問題となり(過去記事)、手術後の漫然としたオピオイド多量服薬も依存につながる可能性が指摘されている。それらの問題に対して、認知行動療法のひとつ Acceptance and Commitment Therapy(ACT)で個人の認知プロセスに介入して心理的柔軟性を高め、疼痛治療を改善させる手法が模索されている。 米ペンシルバニア大医学部から学術誌 Journal of Medical Internet Researchに報告されたのは、整形外科の術後患者に携帯電話で自動メッセージによるACTを提供し、術後のオピオイド使用量減少と、痛みに関する患者報告アウトカムPatient-Reported Outcome(PRO)を改善させた研究である。骨折手術を受けた76名を2群に割付け、一方はチャットボットから術後2週間、1日2通、痛みの認知に介入するACT手法に基づくメッセージを受け取った。介入群では平均26.1錠のオピオイド使用で、対照群41.1錠と比較し使用量が約37%少なかった。痛みのPROスコアは介入群45.9点、対照群49.7点で有意なスコア改善を認めた。 自動プログラムからのメッセージは「痛みの感情が手術後に伴うのは正常であり、回復過程の一時的なもの」と言及し、鎮痛薬の使用に直接的な反対をせずに別のことを考える手助けをしていた。患者ごとにメッセージの個別化はされておらず、研究グループでは他の患者集団にも応用できる可能性が高いと指摘する。デジタル手法による痛みへの心理的介入が、オピオイド使用の減少という実用性を発揮したユニークな研究としても発展が期待される。

腸内細菌叢への機械学習 – 心血管疾患の新しいスクリーニング手法

米国心臓協会(AHA)が刊行する学術誌・Hypertensionに、機械学習を用いた腸内細菌叢の解析によって、心血管疾患のスクリーニングを行うという斬新な研究成果が報告された。 米オハイオ州に所在する公立大学であるトレド大学の研究チームは、糞便サンプルから腸内細菌叢を解析し、心血管疾患の長期的な発症リスクを推定する機械学習アルゴリズムを構築した。先週オンライン版として公表されたチームの研究論文によると、American Gut Projectに含まれる患者から1,000の糞便サンプルを用いてこのアルゴリズムを導いたという。random forest、support vector machine、decision tree、elastic net、neural networkの5つの教師あり機械学習モデルによってアルゴリズムをトレーニングしたところ、最適化されたAIアルゴリズムは心血管疾患の有無や特定のクラスターを識別できるだけでなく、腸内細菌叢から個人を識別できる可能性さえあることを示したとのこと。 Health IT Analyticsの取材に対し、トレド大学で生理学・薬理学の教授を務めるBina Joe博士は「糞便の微生物叢における組成解析が、心血管疾患の簡便なスクリーニング手法となり得るほどの高い識別精度を示したことには我々自身も驚いている」とした上で、実臨床への適用が高い確率で可能となる研究成果に自信を示した。

うつ病リスクをウェアラブル装置からの心拍数で解析する新研究

うつ病と心拍数の関連性はこれまでにも指摘されてきた。しかし、うつ病の長い期間の病勢と、短期間観測される心拍数がどのように関連しているか確認することは困難であった。European College of Neuropsychopharmacologyのバーチャル会議で「ウェアラブル心電図測定装置で連日の心拍を解析し、うつ病を90%の精度で識別する研究」が発表され注目されている。 Medical Xpressでは同学会ECNPからの研究に関するリリースを報じている。過去の研究でも、治療介入の有無に関わらず、うつ病患者の心拍数が高く変動しにくいという傾向が示されていた。新しい研究で鍵となったのは、難治性うつ病の治療薬としての可能性が模索されている麻酔薬ケタミンであった。ケタミンにはうつ症状の急速な改善効果が示唆されているが、研究対象となったうつ病患者で1分間当たり10-15回高く記録されていた平均心拍数が、ケタミンによる治療介入で正常な対照群と近くなる解析結果を得た。また、安静時心拍数が高い患者の方がよりケタミン治療に反応しやすい可能性も示唆されている。 同研究はうつ病患者16名を対象とした極めて小規模な概念実証試験であり、対象者の総数とバックグラウンドの多様性を増した追試験が欠かせない。しかし、心拍数がうつ病のバイオマーカーとして利用可能となる可能性には大いに期待が高まっている。

英ニューカッスル大学 – 神経変性疾患を網膜スキャンで検出

パーキンソン病やアルツハイマー病といった神経変性疾患を、網膜スキャンによって検出するAI技術の開発が英ニューカッスル大学の研究チームによって進められている。 ニューカッスル大学が10日明らかにしたところによると、このプロジェクトは英国民保健サービス(NHS)が主宰する「AI in Health and Care Award」を受賞しており、総額5000万ポンドに及ぶ研究助成を分け合うという。英国ではパーキンソン病とアルツハイマー病は100万人以上の市民に影響を与えており、この予防と早期診断・治療は喫緊の課題として扱われてきた。研究チームは、神経変性疾患の罹患に伴い、初期から網膜に微細な変化が出現することに注目。OCTスキャンからこれら疾患の保有を識別するAIアルゴリズムを導出した。 昨年、英国首相は「NHS AIラボ」の立ち上げを表明し、革新的な医療技術を積極的に医療サービスに取り込む姿勢を明らかにした。本プロジェクトが受賞した「AI in Health and Care Award」もNHS AIラボによって主導されており、単に高い臨床的有効性が期待されるものが選定されるだけではなく、患者プライバシーに配慮した安全で倫理的なシステムであること、また実証研究はその透明性が重視されるなど、理想的なAI開発姿勢を強く求めている点でも大きな注目を集める。

肝細胞がんに対する「機械学習ベースの臨床的意思決定支援システム」

肝細胞がん(HCC)の初期治療における実際の選択と、現在広く利用されているBCLC病期分類に基づく推奨項目の間には現実的な不一致がある。韓国・ソウルに所在する蔚山(ウルサン)大学校の研究チームは、有効な初期治療オプションと全生存期間を明示する「機械学習ベースの臨床的意思決定支援システム」の開発に取り組んでいる。 Nature Researchが刊行するオープンアクセスの電子ジャーナル・Scientific Reportsにて先週公開されたチームの研究論文によると、1,021人のHCC患者における診療記録を利用しこのシステムを構築したという。初期治療方法や生存状況に加え、治療開始前変数など61項目を抽出し、実際のモデル作成にあたっては21項目を利用した。各治療オプションに対して計7つの生存予測モデルを開発し、妥当性の検証試験においては、当該システムによる治療法の推奨と生存予測の点で優れたパフォーマンスを示したとのこと。 本研究は単施設研究で一般化可能性が限定的であること、移植術やラジオ波焼灼療法など一部の治療方法についてはサンプルサイズが非常に小さく解析結果が不安定であること、治療法選択の重要な因子である患者の嗜好が評価されていないこと、など明確な研究の限界を伴う。一方で、疾患単位の意思決定支援ツールにはAIの導入余地が大きく、今後も種々の検討が進められることは間違いない。本研究もその一例として今後のエビデンス構築に資することが期待されている。

半導体からCTスキャン「Nano-X」 – X線装置に革新を起こせるか?

イスラエル発祥のスタートアップ「Nano-X」は、金属フィラメントの代わりに半導体を使用してX線を発生させる画像装置の開発を行っている。19世期のX線発見以来、基礎的な技術が変わらなかった産業に対して、Nano-Xは変革を起こそうとしている。 Bloombergが報じたところによると、Nano-Xは先月8月のNasdaq上場で約20億ドル規模の企業価値が付けられている。Nano-Xによると、半導体から放射線を発生させる技術によって、画像撮影の際の放射線量が低減されるとともに、従来の大型冷却システムなどが不要となり装置が小型化され、製造コストも数分の一に抑えられるという。同社の技術は、ハイエンドのCTスキャンへの利用ではなく、大がかりな装置を購入する余裕がない小規模医療施設における、骨折や出血などの評価が対象と予想されている。また、高速無線接続によって救急車やヘリコプター内での画像スキャンを実現できる可能性もある。 Nano-Xへの期待が先行する一方で、その技術に懐疑的な意見も少なくない。現在まで装置に対する規制当局からの承認はいずれの市場でも得られていない。米FDAに対しても承認申請が提出されたものの、承認プロセスにはさらに数ヶ月かかるとの予想がある。MASSDEVICEの報道によると、Nano-Xには富士フイルム、中国 Foxconn、韓国 SK Telecomらが出資しており、ユニットの生産・供給や無線接続の支援にあたるとみられている。果たしてNano-XはX線装置に世紀の革新を起こすことができるだろうか。

CheXaid – HIV患者における結核診断支援AI

結核はHIV陽性患者における「予防可能な死」の主因として知られ、未診断のまま適切な治療介入なく経過している症例が少なくない。これは胸部レントゲン画像における所見が非定型であることや、HIV感染の多発エリアでは読影を担当する放射線科医が不足していることがその背景にある。米スタンフォード大学などの研究チームは、胸部レントゲン画像からHIV陽性患者の結核を検出する深層学習アルゴリズムを開発した。 Natureの関連誌にあたるnpj Digital Medicineで9日公開されたチームの研究論文によると、南アフリカに所在する2つの病院で、結核感染が疑われる677名のHIV陽性患者における臨床情報データベースからアルゴリズムを構築したという。さらに、開発した結核診断AIを利用し、臨床医の診断業務を適切に支援できるかの評価までを行ったところ、臨床医単独での平均読影精度0.60(95%信頼区間0.57-0.63)から、AIアルゴリズムを診断業務に併用することで0.65(同 0.60-0.70)へと僅かな改善がみられた。一方で、テストケースとして施行した「アルゴリズム単独での平均精度」は0.79と高値を示していた。 研究成果は、HIVと結核の共感染が特に深刻となるエリアでの、AIアルゴリズムの臨床的有効性を示唆するものとなる。また「読影に関する専門人材の確保が難しい状況下において、AI導入は有効な選択肢となること」を研究チームは指摘する。頑健なエビデンス構築に至るには今後、一定の識別精度を有するAIアルゴリズムを導入してなお「なぜ医師の診断パフォーマンスを大幅に改善することはできなかったのか」を、質的研究を含めたより精緻な検証を行っていく必要があるだろう。