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新型コロナウイルスが医療AIに変化をもたらす可能性 – マイクロソフト社のCTOが言及

テック大手各社が新型コロナウイルス感染症への対抗策を次々に打ち出すなか、Microsoft社も鋭意的に取り組んでいる。The Seattle Timesには、Microsoft社のCTO 最高技術責任者 Kevin Scott氏のインタビューが掲載されている。同氏はCOVID-19のパンデミックの結果、ヘルスケア領域のAIが大きく変化する可能性について語った。 Scott氏は、1960年代の米国アポロ計画と月面探査に魅了されて育った。現在米国で崩壊した医療体制に対して、AI技術を中心とした資金調達をすすめる必要性を強調する。「我々のムーンショットは、公益のためにヘルスケアを根本的に変革するものであるべきだ」と述べている。 Microsoft社は、シアトル拠点のAdaptive Biotechnologieと共同で、この数週間AI利用による免疫システムと反応をマッピングする研究を進めている。COVID-19に対する臨床試験へ進めることを検討しているという。Scott氏を中心とした多くの研究への投資は、今回のパンデミックを越えたその先も見据えている。彼個人の生い立ちと内面にも迫る叙情的なインタビュー内容を一読してみて欲しい。

英国 COVID-19に関する患者データを科学者コミュニティに提供

英国における保健福祉の執行機関であるPublic Health Englandは、ケンブリッジ大学の要請に対し、匿名化した「COVID-19の感染患者データ全て」を科学者たちに提供することを決めた。これらのデータは、科学者らの構築したAIアルゴリズムのトレーニングに活用される。 Medical Xpressが6日報じたところによると、これらのデータセットには患者の入院記録・人工呼吸器の使用記録・治療内容・転機などが含まれているという。科学者らはこのAIによって、「どの患者が最も人工呼吸器の恩恵を受けるか」「どの患者が積極的治療なしでの軽快が望めるか」「病院への患者受け入れ可能数」などを予測することを目指し、COVID-19に対する医療提供体制の抜本的な効率化を早期に目指す。 先進各国における比較的安定した医療システムでさえ、予期しない医療需要の急激な増加には容易に崩壊し得ることが明らかとなった。この脆弱性はどの国・地域にとっても対岸の火事ではなく、システムの堅持を見据えた最適化行動が欠かせない。特に医療・保健システムは各国固有の発展を遂げてきた経緯があり、地域性に寄り添った効率化の指針策定が急務となる。

スマートインスリンペンは糖尿病治療のゲームチェンジャーになれるか

AIが糖尿病治療を変革するといわれてきたものの、当初の期待に応えられていない現状がある。その理由には、実用的データの不足・AIのコスト・糖尿病治療にあたる医療関係者とAI開発者との関連性の欠如などが指摘されている。内服薬で糖尿病コントロールの幅は広がったがインスリン注射の需要は一定続き、インスリン使用者は3つの障害(投与のサボりや忘れ・投与量調節の必要性・低血糖のリスク)に直面し続けている。従来のインスリンペンの延長線上でユーザーに馴染みやすいとされる「スマートインスリンペン」は糖尿病治療の景色を変えることができるか。 Entrepreneurの記事では、インスリンの投与量と投与タイミングを記録し、Bluetoothのような通信を介しワイヤレスで連携したモバイルアプリに情報送信する、スマートインスリンペンを紹介している。ペンに搭載された血糖値センサとリンクしてインスリンの適切な用量を提案できるプラットフォームが期待されている。その具体例としてHIT Consultantでは、アイルランドMedtronic社とデンマークNovo Nordisk社がスマートインスリンペンによるインスリン投与データを共有するシステム開発で協力している件を報じている。 米国を中心にインスリン投与法は、体内埋め込みタイプのチューブから持続的にコンピュータ制御で注入する「インスリンポンプ」が発展してきた。一方、日本ではインスリンポンプの普及度が相対的に低い。スマートインスリンペンは検証結果次第で、より低コストでインスリンポンプを代用し、市場に浸透する可能性がある。糖尿病も他の疾患と同様、新技術の採用に高齢者が適応できていないという課題にも立ち返る必要がある。次世代の標準治療技術として、スマートインスリンペンは机上の理論を越え、実用性・血糖値測定精度・コスト面でのメリットを証明していけるであろうか。

COVID-19のX線画像データセットをGithub上でオープン化 – 画像診断AI開発を加速

胸部X線画像から新型コロナウイルス感染症患者を迅速に診断する試みが世界各地で行われている。画像診断用のAIプログラム開発支援のため、カナダのモントリオール大学のポスドク研究員であるJoseph Paul Cohen氏らが主導し、COVID-19のレントゲン画像のデータセットがGitHub上に公開されている。画像コレクションは当初123枚から始められ、さらなる拡充を進めている。 英メディアDaily Mailでは、同データセットを利用してCOVID-19患者を診断する機械学習モデルを作成したオックスフィード拠点のZegami社を紹介している。同社は、開発した新しいプログラムでX線画像からCOVID-19を簡単で迅速な自動診断を可能とし、いずれは重症度や死亡と関連する潜在的な転帰を予測できるようになることを期待している。 現在のところ、使用している画像データセットには患者に付随した詳細な臨床症状などの情報が不足しているため、開発されたAIはCOVID-19と他の肺疾患との鑑別に役立つのみという限界がある。プロジェクトのさらなる進行のため、Zegami社は英国NHSに対して画像および臨床データの提供などを依頼しているという。同社のCEOであるRoger Noble氏は「開発されたモデルによって、英国NHSの素晴らしい医療スタッフ達が臨床の意思決定を行い命を救うだけでなく、世界中で共有されることでCOVID-19を打倒する手助けとなるでしょう」と述べている。

docandu – 個人カルテ記録に基づいた医学的アドバイスを行うAIアプリ

英国において新しいAIアプリ「docandu」が公開された。これは、これまで医療機関ごとに蓄積されていた患者個人の医療記録をクラウド上に保管し、患者自らが自由に参照できるようにするもの。また、搭載されたAIは患者からの健康関連の質問に対し、個人医療記録に基づく個別化された回答を行うことができる。 英The Daily Starは今月、このAIアプリの詳細を報じている。docanduの利用によって患者記録の参照性が高まり、医療情報の有効利用が促進されるだけでなく、遠方の専門医に対しても高速・安全にデータを共有できることから、セカンドオピニオンや遠隔診療の幅を広げるものとしても期待される。 英国においてもCOVID-19の感染拡大に伴う外出・活動制限は深刻で、急を要さない診療・手術に関する予約は全て延期となるなど、医療機関の体勢にも大きな変化がみられる。さらに、多くのGP surgery(英国の一般的診療所)も一時閉所しており、市民の日常的な傷病管理は危機的状況を迎えようとするなか、在宅で医学的アドバイスを得られるバーチャルケアシステムへの需要は益々大きくなっている。

代替ではなく能力拡張 – 皮膚科医と一般市民の診断精度を向上させるAI

皮膚科領域で発展を遂げるAIは、メラノーマ(悪性)と母斑(良性)を鑑別するなど専門医に匹敵する結果を示している。しかしそれは特定の狭い問題についてであり、炎症性疾患や感染症のような数多くの皮膚疾患が混在する実臨床に近い環境での性能を検証する必要性が指摘されてきた。Journal of Investigative Dermatology誌に、ディープラーニングをベースとしたAIアルゴリズムが皮膚科医と一般市民の初期診断精度を向上させた研究成果が報告されている。 メディアEurekAlert!では、韓国発の「ディープニューラルネットワークで医療従事者の皮膚がん診断と134種の皮膚疾患鑑別を能力強化する」研究について紹介している。アジア人と白人合わせ22万枚の皮膚画像で訓練されたアルゴリズムは、それ自体の診断性能は皮膚科研修医とほぼ同等、皮膚科専門医のパフォーマンスをわずかに下回るくらいであった。研究が強調する利点は、試験参加者にアルゴリズムの回答を通知して一次診断を修正できるようにすると、参加した皮膚科医の悪性腫瘍診断の感度を77.4%から86.8%に向上させ、一般市民で感度47.6%から87.5%に向上させたという結果にある。皮膚科医の診断能力向上のみならず、一般市民が悪性腫瘍を放置することなく皮膚科受診のきっかけを生み出せるかもしれない。 ソウル大学を中心とした研究グループによると、彼らのアルゴリズムはAIが人間にとって代わるのではなく、人間をサポートする拡張知能として機能することを期待している。このアルゴリズムをスマートフォンで利用し、専門医受診へとつながるという流れを想定して、研究者たちは初期のデモ版をウェブサイトで公開している。一般市民の撮影では画像品質や構図の問題でアルゴリズムの結果に影響するなど研究の限界には注意が必要である。現在、新型コロナウイルス感染症 COVID-19感染拡大の中、遠隔診断のメリットはますます注目されている。実際に使用してみるとシステムの迅速なレスポンスなど大いに期待できるものであるため、まずは体感してみて欲しい。

中国平安保険 – COVID-19のAI診断システムなど150万ドル相当をインドネシアに寄付

世界最大の保険会社の1つであり、革新的金融グループとして知られる中国平安保険(Ping An Insurance Company of China, Ltd.)は先月28日、インドネシアに対して150万ドル相当に及ぶ医療機器の寄付を行った。 中国平安保険の発表によると、寄付された医療機器には、医療用ゴーグル・COVID-19診断キット・輸液ポンプ・患者モニターなどが含まれる。また、同社が開発したAIシステムも1000セット提供されており、これは胸部CT画像から15秒以内で97%の正確性をもって、新型コロナウイルス感染を自動診断するものであるという。 同社は湖北省を含む中国国内1500以上の医療機関にAIシステムを提供しており、2万人を超える患者、100万件のCT画像分析を行った実績を持つ。

AIが予測するCOVID-19の3つの重症化因子

どのような患者で新型コロナウイルス感染症が重症化するか。議論と研究が進められている。初期の患者における因子、肺の画像パターン・発熱・強い免疫反応・年齢・性別などが候補として挙げられている。ニューヨーク大学(NYU)が主導し、中国Wenzhou Central HospitalとCangnan People's Hospitalと共同開発したAIツールでは、それら前述の重症化予測因子とは異なる3つの因子が導かれている。研究成果は3月30日にComputers, Materials & Continua誌にオンラインで発表された。 ScienceDailyでも同研究を紹介している。ここでの重症化は急性呼吸促迫症候群(ARDS)の発症と定義された。アルゴリズムが示したCOVID-19の重症化予測因子は、肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼALT値の上昇・筋肉痛の存在・赤血球ヘモグロビン値の上昇という3つであった。従来予想されていた他の因子は同研究では有意なものとならなかった。ALTは感染が肝臓に与えた炎症、筋肉痛は全身の炎症、ヘモグロビン値は喫煙などを反映した可能性がある。2つの病院の患者53名で学習された同アルゴリズムは70-80%の精度で重症化予測を達成した。 研究グループによると、ツールを開発する目的として「どのような中等症の患者が本当にベッドを必要としているのか」、「医療リソースが不足している中でどの患者を帰宅させるのか」、現場の意思決定を補助することを期待している。研究の限界点として、比較的少ない人数での学習であること、患者の平均年齢が43歳で高齢者の数が少なかったことを著者らは挙げている。おそらくこれからも重症化予測因子をめぐる多くの研究が追従し総意が得られていくであろう。次第に明らかになってくる因子に注目しながら臨床医達の戦いは続いてゆく。

その抗うつ薬はあなたに効くか – AIが予測するうつ病治療効果

米国での抗うつ薬の使用量は約10年で65%増加したという国民健康栄養調査データがある。増加する薬物療法に対して、うつ病の根幹の理解を深め、治療法を評価することがますます重要となってきている。学術誌Nature Biotechnologyに機械学習アルゴリズムでうつ病薬物療法の効果を予測する研究が発表された。 ScienceDailyでは、テキサス大学サウスウェスタンを中心とした同研究について紹介している。300人以上のうつ病患者を対象に、プラセボ群と治療薬SSRI群を無作為割り付けし、脳波データから機械学習アルゴリズムを開発。2ヶ月以内に薬物治療効果が発揮される患者を予測するのを可能にしたという。薬物治療への反応性が疑わしい患者は、心理療法や電気刺激療法で改善する可能性が高いことも示唆されている。 研究グループの精神科医Madhukar Trivedi氏によると「どの治療法がどの患者に適しているか初期段階で特定したほうが良いのではないか」という考えが研究の発端と言う。これまでMRI画像データ解析など様々な治療効果予測方法が研究されてきたなかで、脳波は最も一般的に使用されるツールになるだろうとTrivediは述べている。広く全米でとられている脳波検査データと統合し、開発されたAIインターフェースのFDA承認をプロジェクトは目指している。「抗うつ薬が効くのか」という患者の根本的な不安が解消される日がAIによって一歩近づいたことを感じさせる新研究である。

中国Neusoft Medical – ケニアへのAI画像診断システム導入

中国Neusoft Medicalは、同社が開発したAI画像診断システムのケニアへの導入を推進している。CT画像から新型コロナウイルス感染も識別できる同システムは、現在ケニア国内37病院で実働する。 Shanghai Dailyが運営するSHINEの報道によると、Neusoft Medicalはケニア国立病院群と提携し、CT撮像機器やAI診断機能を備えたクラウドイメージングシステムなどの導入を進める。同システムでは、放射線科医間の遠隔読影会議も可能とし、ケニア・フランス・アラブ首長国連邦・中国の放射線科専門医による積極的な意見交換が行われている。また、これには中国・武漢の医師たちも参加しており、診断例や治療成功例に関する有益な知見提供もなされているとのこと。

Biofourmis CEO独占インタビュー

Biofourmisは、「ウェアラブルバイオセンサー」と「AIを活用した健康解析プラットフォーム」で知られるシンガポールベースのヘルステックスタートアップだ。現在、BiofourmisはCOVID-19の急速な感染拡大に伴い、プラットフォームへの機能付加を介して新型コロナウイルス感染症対策を強化している。彼らの取り組みは他国にも取り入れられ、特に現在注力する香港でのプラットフォームの導入・展開と、その効果には大きな注目が集まっている。 今回、同社CEOであるKuldeep Singh Rajput氏に対し独占インタビューを行ったので、その内容を紹介したい。   - この度はインタビューの機会を頂き、まことにありがとうございます。まずは貴社についてと、現在進行中のプロジェクト群について教えてください。 我々に関して最も重要な点は、Biofourmisがデジタルセラピーを掲げる企業(digital therapeutics company)であることです。テクノロジーによって、多種多様な慢性疾患を持つ人々が健康に、より良い生活を送れるようにすることが我々の最大の使命です。私たちは、Biovitalsと呼ばれる標準化されたモジュール式プラットフォームを構築しました。これは、センサーとモバイルアプリケーションを使用し、優れたユーザーエクスペリエンスを通じて患者からアクティブデータとパッシブデータを多面的に収集する機能を備えています。また、患者の心不全イベントを適切に予測するため、多くのデータサイエンスおよび機械学習技術を取り込んでいます。これは、医療ワークフローに最適化された治療を加えることに役立つでしょう。   - 独自プラットフォームについて詳しくお教え頂けますか? Biovitalsプラットフォームは、多くの医学的領域に対応することのできる、効果的なプラグアンドプレイソリューションです。企業全体としてBiofourmisは、主に心血管疾患と悪性新生物(悪性腫瘍)に焦点を当てています。当社の主力製品であるBiovitalsHFは、心不全患者向けに設計されました。これは、妥当なガイドラインに基づく治療を受けられている者は20%未満であること、そのうち、最適な治療薬を選択されているのは心不全患者の1%未満のみであること、などが背景にあります。事前に心不全イベントを予測する機能を備えたBiovitalsHFは、適切なタイミングで適切な用量を示すことができます。患者はオンボーディング後、バイオセンサーとモバイルアプリケーションと共に自宅に帰ります。その後、AIを活用したBiovitals Analyticsプラットフォームによって、データを継続的にキャプチャ・処理するなかで、心不全イベントの初期兆候を検出することができるというものです。 私たちのアルゴリズムは経時的変化を捉え、最適化された投薬量を導くことができます。この情報を臨床医に提供することで、正しい臨床判断をサポートしています。BiovitalsHFは現在、複数の病院システム・保険会社・製薬会社で実際に導入・使用されています。また、私たちは最近、Novartisとの提携を公表しました。今後、Entresto(心不全治療薬で、ネプリライシン阻害薬とARBの配合剤)を処方された患者は、Everionウェアラブルデバイスも受け取るということになります。これは、生活の質向上を含めた患者中心の医療ををもたらすだけでなく、通院数の減少に伴う医療経済の効率化、および医療の質的向上に伴う死亡率の低下にも資するはずです。   - 貴社は現在、香港における疾病モニ​​タリングプログラムを展開していますが、その詳細とBiofourmisが果たす役割についてもお教えください。 この疾病モニタリングプログラムは、香港保健当局と提携して実現したもので、香港大学とも協力して2つの主要なアプリケーションを通した展開を行っています。まず、Biovitals Sentinelプラットフォームは、隔離された個人をリモートでモニタリングするために使用されます。中国のCOVID-19患者の29%は医療従事者と言われ、臨床医は孤立し、感染リスクの著しく高い危険な状態です。Biofourmisは単一プラットフォームで、ビデオ会議を介し隔離された個人をリモートモニタリングすることができます。さらに、患者は感染して症状が現れるまでに5~6日かかりますが、この期間にも十分な感染力を持ちます。隔離された個人に、体温・呼吸数・心拍数など複数の生理学的パラメーターを捉えるバイオセンサーEverionを提供することで、データをBiovitals Analyticsエンジンで処理し、微妙な生理学的変化を検出することができます。つまり、感染および症状の進行具合をモニターできるということになります。また、現在ウイルスの詳細についてほとんど知られていないことを考えると、多次元データ(臨床所見・採血結果・画像データ・生理学的データなど)をキャプチャし、AIを使用してこれらのデータソースを組み合わせることで、疾病の詳細を知ることができるようになる可能性もあります。   - リモートモニタリングプラットフォームは各種先行システムが存在し、ある程度機能の重複も見られますが、貴社プロダクトが他社の従来型システムと決定的に異なる点は何ですか? Biovitals Sentinelは、単純なリモートモニタリングプラットフォームではなく、単一のデバイスであるEverionを使用して、24時間年中無休で20のマルチパラメータバイタルサインを継続的に取得することができます。Biovitals Analyticsエンジンは膨大な量のデータを使用し、患者が症状を示す前であったとしても、微弱な生理学的信号をリモートで検出することができます。これにより、治療プロセスがより積極的なものとなり、予防・検査・治療などあらゆるフェーズにおける早期介入を容易に実現することのできる個性的なプラットフォームと言えます。   - 私たちは医学者および臨床専門家として、COVID-19に感染した人の実数は、日本でもある程度過小評価されていると考えています。その場合、より厳格で広範な感染拡大抑止策と手洗いうがいを含む感染防御行動の更なる徹底が重要となりますが、貴社の革新的ツールを活用してこの国を支援するためのアイデアなどお持ちですか? この状況は、日本だけでなく世界中で見られています。たとえば、米国で確認されたCOVID-19症例の数もまた、大きく過小評価されています。今月中旬段階では1日あたり3000人が診断され、確認された症例数だけでもわずか24時間で倍増しました。 1日6000件以上の新規発症と累計100人の死亡者がみられる現在(3月30日時点では、米国での感染者は14万人・死者2400人となった)、症状が現れるまで5~6日かかることも考え併せると、この感染症の背後にある科学を理解することが最も肝要です。臨床医は対症療法を中心に行っていますが、患者は感染初期の6日間で既に感染性があることが分かっています。これらの個人を初期段階から隔離し、微弱なシグナルを十分に早く取得できるようにすることで、さらなる感染拡大を防ぐことができると信じています。   - 弊メディアの読者層には、メディカルテックに強い関心を持つ実業家・研究者・臨床家・政府関係者を含め、多方面における多様な意思決定者を抱えています。したがって、日本での展開が視野にあるのであれば、読者の中でも支援・協力したいと考える団体は少なくないと思います。あなたが考える、日本における潜在的な協力者はどのようなグループですか? 私たちは、プラットフォームとソリューションの活用に熱心な政府機関や病院システムなどのパートナーを真剣に探しています。現在は、韓国・シンガポール・オーストラリア・米国などの国々でプログラムを実施するために政府と事前に話し合っており、数週間以内に複数の国でプラットフォームおよび各ソリューションを展開する準備があります。   - 最後に、プロジェクトの見通しと、今後のビジネスについて教えてください。 このようなパンデミックでは、「時間」が最も重要な要素となります。 Biovitalsプラットフォームのモジュール性により、非常に短い時間枠でCOVID-19の危機的状況に対し、プラットフォームを迅速に適合させることができました。私たちの目標は、できるだけ多くの人々と国々を支援することです。プロジェクトを拡大し、各国に変化をもたらすことを楽しみにしています。   - ありがとうございました。今後の展開に大きく期待しています。   聞き手:The Medical AI Times編集部(株式会社トウキョウアナリティカ内)

インド – COVID-19により加速する遠隔医療

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を抑止するため、インド政府は25日、国内全土に21日間に渡る強力な「ロックダウン」を宣言した。通常の受診行動にも大きな影響を与えることから、同国では急速な遠隔医療の展開が始まっている。 インド・ムンバイに本拠を置くThe Economics Timesの報道によると、インド政府は先週、遠隔医療に関する新しいガイドラインを示した。インド国内では、Max Healthcare・Fortis・Manipal・Aster Hospitalといった大規模病院群が率先して遠隔ビデオ相談を実施してきたが、この種の遠隔システムを積極的に推進する内容となる。インドのデジタルヘルスケアプラットフォームで知られるPractoは、従来システムから医師数を50%増加させるなど、関連企業の体制強化も急速に進んでいる。

高齢社会の孤独にヒトとAIはどう立ち向かうか

自宅外での活動自粛、対面での各種集会の中止など、新型コロナウイルス感染症による社会情勢への強い圧力が続いている。いわゆるインフォデミックInfodemic(過去記事)によって、情報の非対称性や格差が更なる混乱を招き、世代間の軋轢や不満も増している印象がある。我先にと物資の買い占めに走る姿は最たる例だろう。浮き彫りにされた社会的孤独にAIはどのように貢献できるのか。 英BBCの報道では、高齢者の孤独対策にAIを用いた音声技術が紹介されている。スウェーデンは全世帯の半数以上が一人暮らしであり、欧州で最も高い割合と言われる。その孤独感に対処するため、専用設計の音声アシスタントとスマートスピーカーの社会実験が同国では始められた。スピーカーはユーザーの思い出に対して有意義な会話ができる。例として78歳の高齢者の「世界中を旅した」という会話のきっかけに、スピーカーは「スウェーデンとその他の国でどのような人間関係の違いがありましたか?」と続き、そのスウェーデン人は「個人主義的で独立的な私たちの性格に焦点が当たる」と会話を続け、同国の生活で困難な側面を指摘した。 社会実験に携わっているスウェーデンのエネルギー会社Stockholm ExergのThomas Gibson氏は「彼ら高齢者が自分の話を共有されることを本当に喜んでいたことに驚きました。相手が音声アシスタントやスピーカーであろうとまったく自然なことでした」とインタビューに答えている。同社はこれら会話の一部をポッドキャストで視聴できるようにすることで「世代間差別の解消と社会的包摂: social inclusion(弱者を援護し社会の一員として取り込み支える理念)」につながることを期待している。感染拡大によるストレスで露呈した独善的なヒトの弱さに対して、人々が英知を結集し平穏を取り戻すことができるか、その瀬戸際に立たされているのではないだろうか。

Nanox – CureMetrixとの提携で医療画像プラットフォームにAI機能を追加

イスラエルのNanoxはCureMetrixとのパートナーシップにより、同社が進めるクラウドベースの医療画像プラットフォーム・Nanox.CLOUDにAI機能を追加する。 Medical Buyerの報道によると、Nanox.CLOUDは包括的な医療画像サービスを目指し、画像リポジトリ・放射線科医マッチング・診断レビュー・レポート作成・診断補助AI・医療費請求など、広範な機能を備えることになるという。Nanoxは1月の資金調達ラウンドで2,600万ドルを確保しており、これがシステム開発とその商品化に充てられることになる。 Nanoxは特に乳がんスクリーニングを重視しており、早期発見の重要性を強く訴える。また、マンモグラフィ画像の読影は、高濃度乳房(デンスブレスト)の存在や読影医が限られていることなどによって早期発見が阻害されている状況を指摘し、AIによる補助的画像診断の有効性を強調する。

AIが糖尿病黄斑浮腫の第一治療選択を決める

糖尿病による視力低下・失明原因のひとつに黄斑浮腫がある。網膜血管の透過性亢進によって水分の漏出が起き、網膜に浮腫を起こすものだが、慢性化すると神経細胞に不可逆なダメージをきたす。硝子体への薬物注入療法、特に抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬が治療の第一選択として使用されるケースが多いが、すべての症例に効果が期待できるわけではない。抗VEGF薬治療の恩恵を受けられる患者群を予測するAIが米デューク大学のグループから学術誌Biomedical Optics Expressに発表された。 メディアScienceDailyで同研究のアルゴリズムは紹介されており、網膜画像の検査「光コヒーレンストモグラフィー(OCT)」を治療前に1度実施するのみで、抗VEGF薬治療に良好な反応を示す患者を予測できたという。畳み込みニューラルネットワークから構築された同アルゴリズムは、治療前後で網膜の厚みが改善する患者の選別で、平均のAUC 0.866・精度85.5%・感度80.1%・特異度85.0%を達成した。 非侵襲的な画像検査 OCTを自動解析する同研究は、過去の画像や患者記録などを必要とせず、治療前のワンポイント検査のみで第一選択となる治療法を適切に決定できる点を強みとする。研究グループはアルゴリズムが臨床医の意思決定を補佐することを期待し、大規模臨床試験への拡張を計画している。糖尿病性網膜症の画像診断とAIは、良好な相性で様々な実用化が進む注目の領域である(過去記事)。

脳とコンピュータの接続技術確立へ – 米 Paradromics社

稀代の実業家のひとりイーロン・マスクが2019年7月に発表した、脳とコンピュータを接続する新システムと企業Neuralinkは世界中に衝撃を与えた(過去記事)。同様の構想でBrain-Computer Interface(BCI)技術を進める研究が多方面から打ち出されてきた。成果のひとつが米国スタンフォード大、および英国のフランシスクリック研究所とユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの共同研究チームから学術誌Science Advancesに発表された。 ScienceDailyが紹介する同研究は、人間の毛髪の15分の1にまで細められたマイクロワイヤー電極を脳内に設置し、脳の電気活動を受診するだけでなく双方向性に電気信号を送ることを可能とする。マウスでは数百本、大型哺乳類では10万本以上まで、動物の大きさに応じて拡張できる設計で、将来的なヒトでの実用の可能性を秘める。脳を電気制御する理論が確立することで、麻痺・感覚障害・治療抵抗性の精神神経疾患によって苦しむ患者に福音となるかもしれない。 同研究は著者のひとりMatthew Angle氏によって創設されたParadromics社での実装化が進められている。脳内への電極埋め込みというコンセプト自体は以前からあった。しかし、課題であった3次元空間の複雑な層状に分布する多数のニューロンの活動を記録するために、極細ワイヤを任意の3次元形状に配置するという解決策を同研究は示した。開発競争が盛り上がることで、ヒトでの実用化がすぐそこまで近づいたことを感じさせられる。

イスラエル – 新型コロナウイルス感染症の隔離治療施設をオープン

イスラエル最大の病院であるSheba Medical Centerは今週、新型コロナウイルス感染症患者のうち、特に重篤な患者の治療を行うための新たな地下施設を開設したことを公表した。 イスラエルメディアNoCamels.comが23日報じたところによると、この隔離ユニットは同医療センターの地下にあり、40を超える追加ベッドと高度な遠隔医療システム・モニタリングシステムを備えるという。医療機器・電気・酸素ラインには独自のインフラで対応し、特に人工呼吸器の利用が必要な患者と高度な集約的治療を要する患者が対象となる。 イスラエル保健省の報告では23日現在、国内1238名に感染があり、24時間で264名の増加が確認されるなど、感染拡大の危険性が示唆されている。イスラエル政府は厳格な隔離措置に取りかかっており、今後同等の施設が拡充される可能性もある。

周囲の咳の音から感染症アウトブレイクを監視 – ポータブルAIデバイス FluSense

インフルエンザあるいは新型コロナウイルス感染症も同様であるが、上気道の感染で発生する咳は臨床症状として注目される。病院の待合室・大規模な公共スペースでは、呼吸器感染症のアウトブレイクを監視・予測するツールに対する需要が高まっている。マサチューセッツ大学アマースト校からの研究成果として、インフルエンザなどの流行状況を予測するポータブルAIデバイス「FluSense」が発表されている。 ScienceDailyによると、FluSenseは低コストのマイクと熱画像センサーで監視環境中の咳の情報を処理するAIデバイスとして紹介されている。研究用のデバイスは大きな辞書ほどの長方形の箱に収められて病院の待合室に複数配置された。35万件以上の熱画像と2100万件の音源を収集・解析して構築されたFluSenseのアルゴリズムは、インフルエンザおよび類似疾患の院内臨床検査結果と強く相関した待合室の患者発生率をとらえることができた。 同研究の目標は個人レベルの疾患発生ではなく集団レベルでの感染症流行予測モデル構築にある。プライバシーにも配慮され、音声データなど個人を特定する情報は保存されない。コンパクトなデバイスが機械学習システムの最先端にありながら安価な点を研究チームは主張している。同研究はマサチューセッツ大学アマースト校のクリニックという試験場所を越えて、他の公共エリアでの実証と技術の一般化が進められる予定となる。大規模流行性の感染症に対抗する公衆衛生学上の画期的なデバイスとなるか、さらなる発展が期待される。

Odonata Health – 妊婦と胎児を守る産科AI

米ミネソタ州ミネアポリスに所在するOdonata Healthは、非侵襲的なウェアラブルデバイスによって妊婦と胎児のバイタルサインをモニターするとともに、胎児心電図をAIによって解析することで胎児ジストレスの発症を早期に予測する取り組みを行っている。 Twin Cities Businessの報じたところによると、Odonata Healthは現在、Microsoftの投資部門「M12」などが開催する「女性創業者コンペティション」のファイナリストに選出されているという。同コンペティションは、優勝したスタートアップに対して100万ドルの資金提供が約束されるもので、女性創業者に対して公平な活躍の場を創生することが狙い。 Odonata Healthはメイヨークリニックを臨床パートナーとしており、妊産婦の罹患率・死亡率低下を主要な目的に掲げる。米国における妊産婦死亡は問題視されているが、CDCの公表によると、特に出産時には年間700名前後の女性が命を落としているという。

脳の蛍光染色画像におけるアストロサイト自動検出AI

トルコ・米の共同研究チームは、脳組織の蛍光染色画像において、グリア細胞の1つである「アストロサイト」を自動検出・セグメンテーションするための深層学習フレームワークを開発した。全てのコードはオープンソースとしてリリースされ、科学コミュニティが自由に利用できるとする。 20日、学術誌Scientific Reportsに掲載された同論文によると、アストロサイト画像を効率的に処理し、複雑な形態学的特徴を定量するための正確なフレームワークを構築したという。これにはマルチスケール方向フィルタに基づく革新的な細胞検出モジュールと、深層学習・スパース表現の活用によりトレーニングデータの必要量を減らしたセグメンテーションルーチンなどが含まれる。 アストロサイトは複雑な星型形状を持つグリア細胞のサブタイプで、過去10年間の多くの研究によって「アストロサイトが基本的な脳プロセスにおいて非常にアクティブな役割を果たしている」ことが明らかとされた。近年では、脳障害や神経損傷を治療するための有望なターゲットとして、アストロサイトへの関心は劇的に高まっている。一方で、アストロサイトの顕微画像における自動解析は、サイズと形態の大きなばらつき・複雑なトポロジ・高度にもつれた細胞ネットワーク、などのためにこれまで特に困難とされてきた。

AIがトリアージする時代へ – 機械学習でCOVID-19死亡リスク予測

新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行するなかで、医療資源の枯渇から治療を優先的に受けるべき患者の選別・トリアージが迫られるケースが増えると指摘される。しかし、最前線で治療にあたる医師にその選別を行わせるには、意思決定の要素が複雑で負担が大きい。中国の研究者グループが血液サンプル分析でCOVID-19患者の生存率を予測するAIツールを発表している。 TheStarの報道によると、湖北省武漢にある華中科技大学(HUST)と同済病院の研究グループが、COVID-19患者400名以上で入院日に採取された血液検体から死亡リスクを予測する機械学習モデルを作成した。成果は非査読研究のプラットフォームMedrxiv.orgで公開中である。COVID-19の予後予測因子として血中の3つのバイオマーカー、LDH・hs-CRP・リンパ球の解析に基づくモデルという。患者の生存可能性を約16日前に90%以上の精度で予測できると同研究グループは主張している。 同研究は、集中治療室や人工呼吸器のような限られた医療資源の分配など、厳しい選択に迫られた現場の医師の意思決定を補助できる可能性がある。しかし、一方でAIが生死の決定にどの程度関与すべきか、多くの倫理的課題を抱えている。AIによるトリアージが一般に受け入れられるか、世界的大禍を過ぎた後にどのような世論が形成されるだろうか。

ホワイトハウス – コロナウイルスに関するリサーチデータベースを無償公開

米ホワイトハウスは、MicrosoftやAllen Instituteなどと協同し、コロナウイルスに関する学術論文データベースを無償公開した。 Venture Beatの報じるところでは、COVID-19 Open Research Dataset(CORD-19)と名付けられた同データベースには、コロナウイルスに関する29,000を超える学術論文が収められているという。医学系および自然言語処理技術系などの研究者コミュニティによる利用を想定し、テキストデータのマイニングによって、COVID-19への有効な対策を導くのが狙い。 ホワイトハウスCTOのMichael Kratsios氏は「AIは科学者が情報を分析するにあたって、非常に強力な助けになる」と述べ、AIの積極利用を推進するとともに、同データベースがMicrosoftのAIツールによって索引付け・マッピングされていることも明らかにしている。

AIバーチャルアシスタントにCOVID-19対応機能追加 – スタートアップGYANT

一般消費者向けの健康管理AIチャットボットとして立ち上げられたGYANTは、次第にB2Bモデルに移行して医療機関や保険会社との提携プログラムを提供するようになった。その一環として、イリノイ州拠点の医療機関OSF HealthCare(OSF)が「新型コロナウイルス感染症 COVID-19のスクリーニングと患者教育を提供するアシスタント機能」を緊急追加している。 Becker’s Health ITではGYANTからの3月17日付けのリリースを報じている。OSFは以前からGYANTにサービスを提供しており、その機能のひとつとしてCOVID-19対策アシスタントClareを実装した。ClareはCOVID-19の症状とリスクに関する正確な情報をユーザーに伝え、質問に回答し、患者を適切なケアと機関へ誘導する。感染症流行により急増したコールセンターの負担が軽減されている。今後もCDCとWHOのガイドラインに基づきプログラムはアップデートし続けるという。 AIアシスタントClareの実装から最初の2日間でCOVID-19に関する14000件のやり取りが行われ、患者の85%が肯定的にとらえている。OSFのシニア・バイス・プレジデントJennifer Junis氏は「この医療危機と言える状況では、Clareのようなフレンドリーで高い接続性が不可欠でしょう。患者らは私たち医療関係者とコミュニケーションすることを望んでいるのです」と語っている。

中国における2019年医科学系ベストトピック

中国国内紙Health Newsは、2019年に話題となった医科学系トピックのトップ10を公表した。選出にあたっては、政府健康委員会や疾病管理予防センターの専門家、臨床医学系および公衆衛生領域の科学者らが招待された。 中国主要メディアChina.org.cnは昨日、このランキングを報じている。リストのトップ2を占めるのは、権威ある学術誌The New England Journal of Medicineに掲載された2つの研究について。いずれの論文も、慢性腎臓病(CKD)に伴う貧血を対象とした治療薬・ロキサデュスタットの臨床試験に関するもので、上海の研究チームが報告している。 3番手として示されたのが、眼疾患の診断支援を行うAIプラットフォームで、広東省の中山大学中山眼科センターの医師が構築したもの(関連論文)。同システムでは、87%という高精度診断と高速診断を実現したとして話題となった。その他には、複数の大規模疫学研究や、脳血管疾患・肝がん・肺がん・ジカ感染に関する新規治療法の開発などが含まれていた。

VRで医学教育を拡張 – 英 Oxford Medical Simulation社

仮想現実(VR: Virtual Reality)の医学トレーニングへの適用が進んでいる(過去記事)。シミュレーションによる医学学習という概念自体は以前からあるものの、精巧なマネキンあるいは献体の必要があった。その学習法は高価かつ手順は複雑で、学習に参加できる人数も限定されてきた。英国では医療資源の不足をVR学習による教育リソース拡充でカバーする動きがある。 英メディア The Guardianでは、医学教育VRソフトウェア開発のOxford Medical Simulation(OMS)を紹介している。AIの専門家らによって設計されたVR環境で、医学生はヘッドセットを装着し、患者の病室に入るところからシナリオを開始、仮想空間には心電図モニターなどが設置され、視界を巡らせると聴診器や注射器に手を伸ばすことが出来る。一般開業医が行うような患者の病歴を調べる・体温を確認する・聴診器を背中に添わせて胸部を聴診する・のどを懐中電灯で照らすといった医学行為がシミュレート可能である。膨大なシナリオには敗血症・尿路感染・脳卒中・心不全・糖尿病などが網羅されている。OMS社によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで医学生の臨床研修が休止されている状況から、安全に訓練できる同製品に対する需要は急増しているという。 OMS社はイギリス国民保健サービス NHSの医師であったJack Pottle氏らによって創業された。VRは医学生の学習曲線を短縮、あるいは外科医の手技を改善し、NHSが抱える医療資源の不足を補うことを期待されている。VRが従来のシミュレート教育より相対的に安価でアクセスしやすいのみならず、より効果的であるとの証明も進む。オックスフォード大学の2019年調査では、VRの教育効果は従来法と同等か上回るという報告が出されている。そのリアリティから倫理的にも医学生が患者に対する真の義務感を感じるようになったのではないか、と教育にあたる講師らは実感しているそうだ。

スマートグラスが切り拓く視覚障害者支援 – 蘭Envisionの最新AI

メガネ型ウェアラブル端末「スマートグラス」は、2012年に製品テスト開始のGoogle Glass(過去記事)で耳目を集めた。しかし、撮影機能によるプライバシーの懸念などから、Google Glassは一般消費者用の開発を中止。普及が進まず流行は下火となる。一方、製造現場ではAIやIoTによるスマート工場化で、スマートグラスの活用が模索された。また医学領域でも、手術中にハンズフリーで患者情報を視野に投影するような活用法で需要が続いている。 テックメディアSilicon Canalsでは、視覚障害者向けAIを提供するオランダ発スタートアップ「Envision」の新製品を紹介している。Google Glassに搭載される同社のAIは、周囲の風景・人の顔・食品ラベル・手書きの文章などを60以上の言語で認識し、状況や内容を音声で読み上げてくれる。今年3月、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校(CSUN)主催の障害者アクセシビリティに関する世界最大級の国際会議で同製品は発表された。 AIに職が奪われるという昨今の議論には、AIによる人間の能力拡張の観点が不足する。ハンディキャップを抱えた人々をサポートするAIの多面的発達は、さらなる就労支援を切り拓く可能性もある。現在Google以外にもAmazon・Microsoft・Facebookがスマートグラスの開発を行っており、普及の機運が再び高まっている。Envisionの取り組みが視覚障害者支援の未来を形作ることを期待したい。

新型コロナウイルスによって急増する外来受診者数 – バーチャルケアの可能性

遠隔診療をはじめとした「バーチャルケア」のグローバルリーダーとして知られる米Teladoc Healthは、新型コロナウイルス感染症への懸念から米国で急速に増加する外来受診者数に関連し、同社プラットフォームの利用者も急増していることを公表した。 Teladoc Healthの発表によると、同プラットフォームでは先週1週間に100,000件ものバーチャル診療を提供しており、実数として前週比で50%増であるという。インフルエンザの流行ピーク時の需要さえ日々上回るが、これは広範な医療提供体制への負担軽減にも直結する。米政府の公衆衛生当局は、国民にバーチャルケアサービスの利用を奨励する背景もあり、今後も需要の加速は続くと考えられる。 一般的に、コミュニティの医療システムは突発的な受診者数スパイクに脆弱で、不測の感染症アウトブレイクによって過度の圧力を受けた場合、早晩に瓦解してしまう恐れがある。バーチャルケアはこのような医療システムへの負荷を緩和するとともに、患者集積によって医療機関が感染源となるリスクを避けることもできる。今後同様のプラットフォームへの関心と有効性の再認識は強まっていくに違いない。

ディープラーニングロボットが採血と点滴を変革する

血管から採血し点滴することは、診断と治療に重要な最初の一歩である。検査・輸液・薬物投与・ステント留置・モニタリングといった医療行為がそこには含まれる。しかし、血管へのアクセスが決して容易ではないことに、医療現場を知る者は同意するだろう。学術誌 Nature Machine Intelligenceに発表された「ディープラーニングロボットのガイド下での自動血管アクセス」では、デバイスによる自律システムが人の手による血管アクセスを上回るパフォーマンスの可能性が示唆されている。 科学メディアScienceDailyでは、Nature Machine Intelligence収載の米ニュージャージー州ラトガース大学の研究チームが開発した採血ロボットに関する研究成果を紹介している。同ロボットはディープラーニングを赤外線および超音波イメージングと組み合わせ、組織内の血管を特定・分類・深さの推定を行う。その後モーショントラッキングなど複雑な視覚タスクを実行し、針を血管に穿刺する。静脈が浮き出ていないような条件の悪い血管でもロボットによる血管アクセスは88.2%の初回穿刺成功率が得られているなど、人の手技と同等あるいは超えることが期待されている。 小児・高齢者・血管の状態が悪い慢性疾患患者らでは、初回穿刺の成功率が50%未満となったり平均5回以上の穿刺が必要といった報告もある。医療従事者は冷や汗をかき、一方で患者は痛みと不安に耐えながら日々の血管アクセスを確保している。血管アクセスがうまくいかないことは、人々の時間とエネルギーを拘束し、現場の医療資源を損なっている。そのような現場の風景にAIとロボティクスによる変革が訪れるのはさほど遠くはなさそうだ。

ヘルスケアネットワークとサイバーセキュリティの脅威

米カリフォルニア州・サンタクララに本拠を置くサイバーセキュリティ企業Palo Alto Networksは、その最新レポートで医療機関におけるネットワークセキュリティの深刻な脆弱さを指摘する。 Venture Beatが当該レポートについて報じたところによると、医療機関では古いオペレーティングシステムが常用され、ライフサイクルの長さのために医療IoTデバイスで時代遅れのセキュリティレベルが維持されているという。ヘルスケアネットワークに対するサイバーアタックにおいては、主としてネットワーク上に接続されたデバイスをスキャンし、マルウェアの拡散源となる脆弱性が検索されている。 National Cybersecurity Center of Excellence(NCCoE)は過去に、医用画像システムの83%が既知の脆弱性を持つことを報告し、これはWindows7のサポート終了に伴い56%もの増加をみた結果であるとしている。医療機関が完全に閉ざされたネットワークを利用した時代は過去のものとなっており、世界基準と潮流に適合した適切な対策と体制の維持が求められている。

台湾の新型コロナウイルス初期対応に世界的な高評価

各国の新型コロナウイルス感染症 COVID-19 への初期対応が振り返られるなか、台湾の感染率の低さ(3月8日までに45件)が注目されている。中国との関係性から人的な往来が盛んであり、感染者数が世界第2位になるだろうという周囲の予測を完全に覆したことは学術的にどう評価されるか。権威ある米国学術誌 JAMAに米スタンフォード大の王智弘 准教授(Dr. Wang)らが執筆した「台湾のCOVID-19対応」が掲載された。 米国の金融関連メディア TheStreetには、Dr.Wangに対するメールインタビューが掲載されている。台湾の45件という発症数が検査数不足ではなく初期の予防対策に由来するとDr. Wangは強調する。いち早く開始された渡航者の検疫とそれを支えた電子システム、国民健康保険と統合したビッグデータ解析、渡航歴や臨床症状からの感染リスク分類、隔離措置、マスクなど防護設備・各種医療資源の適確な配分、国内への公衆衛生教育と周知など、全方位的な施作が台湾では有効に機能した。同インタビューでは、米国での国民保険プログラムの欠如そのものが今後のCOVID-19対策の主要な論点ではないと触れている。米国でもハイテク企業・州知事・政府機関の連携で対処できる十分な潜在能力があると結語した。 台湾がかつて経験したSARS(重症急性呼吸器症候群)の蔓延は、今回の対策へ確実に活かされている。Dr. Wangは携帯端末の普及とAI・機械学習技術で迎えた公衆衛生の革新の時であるとも語っている。先端技術が独り歩きするのではなく、運用する人材と組織、そこにある強力な意志こそが重要であると、台湾の事例から学ぶことは多い。