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従業員の64%が上司よりロボットを信頼する世界 – AI at Work オラクルの調査

AIが職場における人々とテクノロジーの関係性をいかに変えているか。以前にはフィリップスの Future Health Index というAI医療利用の世界的な調査を紹介した(過去記事)。 2019年10月、米大手ソフトウェア企業のOracleが発表した AI at Work では、従業員の64%がマネージャーよりもAIおよびロボットに信頼を寄せるという結果を示した。人材管理などを専門とする企業 Future Workplace と共同で行った調査は、10か国8,370名の従業員・マネージャー・人事リーダーを対象に行われた。全体平均64%に対して、インド(89%)や中国(88%)は極めて高いロボットへの信頼であり、日本も76%で平均を上回る。 ロボットがマネージャーより優れていると感じる項目については、情報提供の公平さ(26%)、作業スケジュール管理(34%)、問題解決力(29%)、予算管理(26%)という内訳であった。 一方で、マネージャーがロボットより優れていることについては、感情の理解(45%)、コーチング(33%)、職場のカルチャーを生み出すこと(29%)となる。 Oracleの担当者 Emily Heは「過去2年間と比較して、労働者が職場にAIが採用されることやAIが人材管理を行うことに対して楽観的になってきていることがわかってきました。AI主導型の職場における、管理職の役割が再定義されようとしています」と語った。

Ambient Clinical Intelligence – 医師を書類作業から救うAI環境開発

テック大手のMicrosoftは、音声認識で知られている米Nuance Communicationsと提携し、医師の煩雑な書類作業を激減させるAI環境開発を進めている。 Fierce Healthcareの報道によると、Microsoft AzureのクラウドプラットフォームとAI技術に、Nuanceが持つ臨床文書および臨床現場での音声認識に関する専門技術を統合し、Ambient Clinical Intelligence(ACI)の開発を図るという。具体的には、新しいこのテクノロジーは診察中の医師と患者の会話を「聞く」ことで、会話データを電子カルテのコンテキスト情報と併せ、自動的に患者の医療情報を更新することができる。Microsoftでヘルスケア戦略を担当するGreg Moore医師は「コンピュータは大抵の場合で、医師と患者間のやり取りやアイコンタクトの妨げとなり、両者の不満足な体験に繋がる」としている。ACIは医師による積極的な入力作業を要さない極めて静的なシステムであることから、医師は臨床現場でより患者にフォーカスすることができるようになる。 近年の研究では、プライマリケア医は「患者ケア1時間あたり2時間もの電子カルテ作業に追われている」との報告もあり、診療時間後にも書類作業にあたるなど、医療記録の入力作業自体が医師の燃え尽きを助長することが指摘されてきた。

XAIとは何か? – ブラックボックス化しない説明可能な医療AIを目指して

AIが指摘した病変部位や診断について、アルゴリズムの思考過程が説明できない、いわゆるブラックボックス化(過去記事)は常に論点になってきた。AIが出力した情報を補助し、判断根拠を説明するための技術全体を示す用語「XAI(エックスエーアイ): Explainable AI」が、米国国防高等研究計画局(DARPA)の主導するプロジェクトなどから派生し、浸透してきている。 米メディアForbesでは、医療分野特有といえるXAIが求められた背景や今後の方向性を解説している。そもそも医療以外の分野では開発した貴重なAI技術を企業秘密として保持することが許容され、ブラックボックス化を問題とする風潮が少ない。スマートスピーカーの返事に対して、どうしてそのような回答をしたのかと悩む消費者は少数だろう。ところが医学的判断では、その誤りが重大で不可逆的な結果となることを許容しにくい。そうして、医師やFDAなど規制当局が、説明不可能なAIを信頼することが難しくなる。さらには、開発されたAIアルゴリズムは、その後に臨床現場での妥当性の検証を経る必要があるため、末端のユーザーは説明不可能なAIの検証作業に協力できなくなる。 XAIに対する関心は高まり続けている。一方、どのような説明方法が適切か、知見の蓄積は不十分といえる。XAIという言葉をきっかけに、社会的な認知度が高まり意識が共有されることで、改善が進む側面も期待される。XAIは医療における主流なアルゴリズムとなる可能性があり、開発にあたるグループや企業にとっては大きなリソースを当てることがますます重要になるだろう。

股関節の形状から変形性股関節症の将来発症を予測するAIアルゴリズム

オランダ・ユトレヒト大学の研究チームは、レントゲン撮影によって得られる股関節形状から「将来的な変形性股関節症の発症」を予測するAIアルゴリズムを構築した。研究成果はOsteoarthritis and Cartilageに先週公開された。 ベースとなるデータは、前向きコホート研究である"CHECK-study"(平均年齢56歳、84%が女性である1002名を8年に渡り追跡)に基づく。チームの開発した機械学習アルゴリズムは、単純レントゲン写真によって得られた股関節形状を、追跡期間中の変形性股関節症発症データからグレーディングするもの。このShape-Scoreは、検証フェーズにおいても単独指標として十分な予測力を持つことを示したという。 股関節形状のみで将来発症を予測できることは、予防的観点からの早期介入を実現し得る点で非常に意義深い。また、Shape-Score算出に高度な医療設備の導入を必要としないことも、日常診療レベルでの評価を可能としており、追加検証を重ねた上での実臨床利用と普及が期待される。

AI画像診断でインドの結核を撲滅 – スタートアップ Qure.ai

結核の流行と薬剤耐性による大きな負担を抱えるインド共和国の事情について、以前にも紹介した(過去記事)。結核診断の遅れは周囲への感染拡大リスクを増大させる大きな課題である。ここでは、AIによる胸部X線画像診断で結核の早期診断に取り組むスタートアップQure.aiを紹介する。 インドでは、健診施設へのアクセスに10km以上歩くことが一般的にある。そして医師一人あたりが医療を提供する人口は11,082人との統計があり、一般に推奨される医師人口比の目安1:1000の10倍以上となる。この著明な医師不足は、結核の早期スクリーニングにも困難をもたらす。インド政府が解決策として参照したのは、かつて同様の流行状態を抱えた1950年代日本の取り組み - X線装置を載せた移動検診車によるスクリーニング - である。検診車の配備は進み、結核の流行地域に移動してのX線撮影が可能となった。そしてその次に現れた課題こそが、医師不足の状況で誰がそのX線画像を読影するかであった。 the better indiaの記事によると、Qure.aiが開発した胸部X線のAI診断システム「qXR」は、インドにおける診断プロセスの短期化を主眼に置く。Qure.aiはX線画像をクラウド上で診断するか、あるいはポケットサイズのデバイスでローカルに診断できるAI診断システムqXRを開発した。同社のアルゴリズムは、ローカルで動くハードウェアのスペック要件を50ドル程度で用意できるシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」に制限している。それにより1スキャンあたりのコストを1ドル未満に抑制することができたという。現地でAI画像診断を行うことで、これまでインドの医療事情から診断までに数週間を要していたスクリーニングを5分以内に短縮できた。 Qure.aiは「最小限のコストで結核を根絶する」目標を掲げている。同社のAIプロダクトは貧困を抱えるインド以外の国にも恩恵をもたらす可能性がある。また、既にかつての発展途上とは異なるが、日本の高コストな医療体質や医療過疎・地域差を考える上で、今一度原点に立ち返る参考にもなるのではないだろうか。

どの知見が医療を大きく変化させるか – 研究インパクトを予測する機械学習モデル

あらゆる医学研究成果は論文化され、科学的知識の集体に加えられることで、将来的な医療発展の礎となる。世界中から無数に生み出される新しい医学的知見のうち、「どの成果が最終的に実臨床を変化させる可能性が高いか」を予測する機械学習モデルが開発された。論文はPLOS Biologyに先週公開されている。 米国立衛生研究所(NIH)のチームは、どの研究成果が将来の医療発展を直接的に促しているのかを予測するため、「ある研究知見が後の臨床試験実施やガイドラインへの取り込みに結びつく程度」をプライマリアウトカムとしたAIアルゴリズムとそれに基づく新指標を構築した。"Approximate Potential to Translate"(APT)と名付けられたこの新指標は、対象とする研究論文と、さらにこれを引用する研究論文群とを併せて評価することで算出される。出版後データはたった2年分を利用することで正確な予測を実現しており、研究者達の迅速な意思決定を可能とすることで、医学の発展速度を上昇させる可能性がある。 APTはデータ主導の意思決定コンポーネントの1つとして、より発展性が高い領域や臨床的な潜在的有効性が高い領域を定量的に抽出することができる。これまでの直感や経験に基づく研究分野選定にAPTを加えることで、限られた研究資源を将来性の高い領域に効率的に投入できるため、医学研究コミュニティに与える影響も極めて大きい。

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