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米Jvion社 – COVID-19ワクチン接種優先順位づけをAIが支援

新型コロナワクチンの接種が世界的に開始されているが、他国と比較し米国でのワクチン接種が想定より進んでいない現状が伝え聞かれる。米国でのワクチン接種は行政単位ごとに、CDCガイドラインに基づいた優先順位がつけられている。効果的な優先順位づけのため、医療AI開発企業のJvionは「AIを適用したCOVID-19ワクチン接種優先順位指数(VPI: Vaccination Prioritization Index)」の提供開始を発表している。 Jvion社の19日付プレスリリースによると、同社の提供するVPIは昨年春から発表してきたCOVID-19に対する地域脆弱性マップに更新を加え、CDCガイドラインと社会経済的脆弱性に基づき、地域のワクチン接種優先度を指標化したものである。ワクチン接種優先順位は、郡と郵便番号ごとに1から6までのスケールで評価するレイヤーがマップ上に示され、公衆衛生当局がワクチンの優先順位の高いエリアを地域社会の構造に基づいて絞り込むのを支援する。VPIツールはMicrosoft Azure上に構築された「Jvion CORE」という機械学習と予測分析を行うJvionの基幹AI技術で実装されている。2020年3月の公開以来Jvionのマップは、ホワイトハウスタスクフォース・連邦緊急事態管理庁(FEMA)・各軍組織・州および地方自治体のメンバーを含め、200万回以上閲覧されてきた実績を持つという。 日本においてもCOVID-19のワクチン接種計画が次第に明らかにされてきたが、初期の接種対象者である医療従事者の間でも計画に対する不安は否めない状況にある。COVID-19の打開策として期待される第一歩のワクチン接種が効果的に進むか、優先順位づけを含む各国の計画の推移に注目していきたい。

精子の細胞内pHから「体外受精の成功」を予測する機械学習アルゴリズム

体外受精(IVF)は不妊治療の1つで、取り出した卵子と精子から体外で受精卵を作り、これを子宮に移植するものだ。米ワシントン大学やノースウェスタン大学などの共同研究チームは、正常精子のpHからIVFの成功を予測する機械学習アルゴリズムを構築した。 Fertility and Sterilityからオンライン公開されているチームの研究論文によると、IVFを受ける男性で、精子に異常のみられない76名のデータからこのアルゴリズムを導いたという。ここではIVF成功予測のための主要な決定因子として、精子の細胞内pHを仮定している。精子pHおよび膜電位、臨床データから構築した勾配ブースティングによる機械学習アルゴリズムは、AUC 0.81、感度0.65、特異度0.80でIVFの成功を予測していたという。 研究チームは、臨床パラメータとともに精子pHなど受精能のマーカーを利用することで、IVFを受けている正常精子男性からの受精成功を予測できると結論づけている。生殖領域における機械学習手法の有用性にも言及しており、対象集団を拡張した研究継続とエビデンスの蓄積が期待されている。

ユーイング肉腫患者の5年生存率を予測するAIツール

ユーイング肉腫は小児期から青年期に好発する悪性骨腫瘍の1つだ。これまで個別化された予後予測手法は限定的であったが、このほど中国・福建医科大学などの研究チームは、米国患者データを利用し、ユーイング肉腫患者の5年生存率を個別化予測できる機械学習ツールを開発した。現在、開発されたウェブベースのアプリケーションは無償公開されている。 17日、Journal of Orthopaedic Researchから公表されたチームの研究論文によると、米国で1975年から2016年の間にユーイング肉腫に罹患した2,332名の患者データから、この機械学習アルゴリズムを導いたという。患者コホート全体としては、5年間の追跡調査による全生存率は60.72%であった。ツールには最も高い予測パフォーマンスを示したランダムフォレストモデルが選択され、診断時の年齢や性別、婚姻状況、原発部位、腫瘍グレード・ステージ、放射線治療の有無など13項目から高精度な予測を実現している。 著者らは「ユーイング肉腫における予後予測のための最初の機械学習ツール」として、研究成果の重要性を強調している。簡便に利用できるツールではあるが、現時点で臨床的有効性・妥当性の程度を外的に評価されたわけではないこと、またベースとなる対象集団が米国人が中心であることなどから、日本人を含む他集団への一般化可能性は未知であり、ツールの利用には注意が必要となる。

WIDEX社 – AIによる補聴器の技術革新

米国国立衛生研究所(NIH)によると75歳以上の半数が何らかの聴覚サポートを要する状況にあり、高齢化にともなう補聴器への需要は高まる一方である。しかし、従来の技術による画一的な補聴器の調整では、個々の感性の違いなどから着用者の満足度を高める難しさがあった。AI/機械学習による技術革新は補聴器の分野にも進出し、個別化された自動調整機能をもつ補聴器の市販が進む。 国際的な補聴器メーカーWIDEXがPRNewswireに提供したプレスリリースで、同社はリアルタイムAIによる聴感コントロールが可能な補聴器を初めて提供したメーカーと謳っている。「自動環境適応機能」はユーザーの環境を常に分析して、環境特有のノイズを抑え、会話音声を聞き取りやすくしたり、コンサートなどでは臨場感あるサウンドを提供することもできる。「サウンドセンスアダプト」はユーザーがボリュームを上げるなど設定切り替えを行う度に学習し、同様のシチュエーションでの自動調整機能をもつ。「サウンドセンスラーン」は機械学習アルゴリズムの恩恵で、従来では膨大な回数を必要としていた個人の好みに合うように調整するA-B比較テストが十数回にまで省力化でき、2,000パターン以上の設定が可能となる。 Widex社の聴覚学責任者Lise Henningsen氏は「私たちの研究で、補聴器ユーザーはAI/機械学習によるパーソナライズされた設定をとても好み、80%の人がこの機能を他者に勧める結果でした。AI搭載の補聴器は、バーチャルアシスタントやスマートウォッチと並ぶ、新しいライフスタイル『ヒアラブル(hearables)』に近いものといえるでしょう」と語っている。

「新型コロナウイルスに立ち向かう医療AI」まとめ

2020年は東京オリンピック開催に伴うメモリアルイヤーとなるはずでもあったが、実際は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「試練の1年」として、多くの人々の記憶に刻まれることになった。数え切れないほどの人命が危機に曝されるとともに、医療提供体制の限界と脆弱性も各所であらわになった。ソーシャルディスタンスという言葉が一般的となって人の動きは大きく様変わりし、経済は混乱し、政治は確信の持てない決断を何度も迫られた。2021年となった今も状況は改善することはなく、日本はまさに第3波の脅威の最中にある。 こういったなか、科学コミュニティは自身の研究フォーカスをこの未知の感染症へと移す動きが加速し、結果として短期間に無数の知見が集積した。抗ウイルス薬を始めとした根本解決手段はいまだ得られていないが、多面的な研究アプローチとその成果は、この未曾有の危機を乗り越えるための示唆を与えてくれるものとなっている。 我々のメディア・The Medical AI Timesでは、特に「新型コロナウイルスに立ち向かう医療AI」を題材として多数取り扱い、2020年中には関連する研究開発を中心として約200本の記事をリリースした。ここでは、これらの記事を参照しつつ「新型コロナウイルスと医療AIのこれまで」をまとめておきたい。   A. 診断モデル(画像) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の識別は現在、ウイルス遺伝子を増幅させて検出するPCR法がゴールドスタンダードとなっている。一方で、検査結果が出るまでにかかる時間、人的・物的リソースの制約、検査精度の限界、などが問題となってきた。医療AI領域では、主として画像や血液検査結果、その他の生体試料を活用し、このPCR検査をサポートする診断・予測モデルの開発が1つのトレンドとなった。 画像種は、医療リソースの乏しい国・地域を含めても広く利用されている「胸部単純レントゲン」が最多を占め、次に「胸部CT」によるものが続いた。 画像診断モデルの事例: 1. ノースウェスタン大学 https://aitimes.media/2020/11/26/6642/?3728 Radiologyに収載されたチームの研究論文によると、DeepCOVID-XRと呼ばれるこのAIプラットフォームでは、胸部読影を専門とする放射線科医と比較して診断速度で10倍、正確性で1~6%高い値を示すなど、高度のスクリーニング性能を示した。 2. behold.ai https://aitimes.media/2020/04/16/4675/?3728 同社の「red dot」プラットフォームは、胸部単純レントゲン写真を「正常と判断する能力」を強みとして、欧州CEマークを2020年4月段階で取得しており、COVID-19のトリアージ迅速化に貢献した。 3. アリババ https://aitimes.media/2020/06/08/5207/?3728 胸部CTからCOVID-19による異常陰影を識別するAIソフトウェアを開発しており、日本のエムスリーと提携したことでも話題を集めた。 4. Zebra Medical Vision https://aitimes.media/2020/06/02/5113/?3728 医療画像AIスタートアップの雄は、胸部CT画像からCOVID-19を識別するAIシステムをインド全土の病院群へ展開。 特に胸部CT画像による診断モデルは高い識別精度を示すものが登場し、スクリーニングの域を超えた「十分に診断に寄与する」モデルが提唱されつつある。これには政府・民間を問わず、開発を積極的に後押しする多くの枠組みが生まれたことも大きな役割を果たしている。 枠組みの事例: 1. 米Children’s National Hospital https://aitimes.media/2021/01/14/7019/?3728 米国立衛生研究所やNVIDIAと協力し、COVID-19を胸部CT画像から診断するAIモデルを競うコンペティションを実施。 2. 米国立衛生研究所 https://aitimes.media/2020/12/24/6880/?3728 COVID-19のスクリーニングや診断、重症度予測のためのAIシステム開発に対して2億ドルの助成金を割り当てるなど、関連研究・開発に対して大規模な助成を進める。 3. Google https://aitimes.media/2020/09/11/6042/?3728 COVID-19を巡るAI開発とデータ解析を支援するため、2020年9月段階までで世界31組織、850万ドル以上を寄付。 4. NCC-PDI https://aitimes.media/2020/06/16/5283/?3728 また、英国における保健福祉の執行機関であるPublic Health Englandは、ケンブリッジ大学の要請に対し、匿名化した「新型コロナウイルスの感染患者データ全て」を科学者たちに提供することを早期に決定するなど、これまでにない迅速かつ大胆な判断が研究の活性化を促したことも見逃せない。米国も同様に、新型コロナウイルス感染症対策へのAI活用の重要性を認識しており、Caption Healthの事例では、AIソフトウェアのアップデートに伴うFDA認証をたった25日間のレビューで実現している。 政策的判断の事例: 1. 英国 https://aitimes.media/2020/04/08/4605/?3728 2. 米国 https://aitimes.media/2020/05/13/4875/?3728   B. 診断モデル(画像以外) 画像以外をベースにした診断モデルとしては、一般血液検査項目に基づくものが数多く提案された。ルーチン取得される入院時血液検査結果からスクリーニングする手段は、新規の大規模な医療資源投入の必要がなく、現状の臨床ワークフローを乱さない効率的なものとなるため、臨床現場からの期待も大きい。 一般血液検査に基づく診断モデルの事例: 1....

乳がん識別AI – 人の学習過程を模倣したAIが放射線科医のパフォーマンスを凌駕

乳がんは依然として世界的な課題であり、2018年には世界で60万人以上が乳がんのために命を落としている(参照論文)。死亡率を低減させる有効な取り組みとしてマンモグラフィによるスクリーニングが推奨されているが、増加する撮影済み画像数に対して読影専門医の増加が十分でないこと、偽陽性率および偽陰性率が見逃せない程度に高いことが問題となってきた。 11日、Nature Medicineに発表された研究論文では、上記の課題に対応するため新しい深層学習モデルの構築方法を明らかにした。より有効性の高いモデルを得るために重要となる点として、ラベル付きトレーニングデータを大量に取得すること、および母集団・機器・モダリティの全体で一般化を確実にすること、にフォーカスしている。チームは人間の学習過程を模倣するアプローチを採用しており、AIモデルを段階的にトレーニングし、各フェーズで学習した事前情報を活用していくことで高度にラベリングされたデータへの依存を減らし、正確に乳がんを検出するモデルの導出に成功したとのこと。 研究チームが構築したマンモグラフィのスクリーニングAIを5人の読影専門医と比較したところ、ツールは5人全てのパフォーマンスを上回り、感度は平均14%向上したことが示された。また興味深いことに、欧米人のデータからトレーニングされたこの深層学習モデルが、中国人集団においてもAUC 0.971を示すなど、モデルの高い一般化可能性も併せて明らかにしている。チームの着想が乳がんスクリーニングのあり方を変革させるものとなるか、期待は大きい。

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