Infinite Load Articles

がん患者の健康状態をモニターするゲーミフィケーションアプリ

ゲーミフィケーションは、ゲーム要素を取り入れることでユーザーの行動変容やパフォーマンス向上を狙うもの。近年では医療分野においても発展の余地が模索されている。スペインのコンプルテンセ大学とサラゴサ大学の共同研究チームは、がん患者における心身の健康度モニタリングへのゲーミフィケーション応用に努めている。 Journal of Healthcare Engineeringに掲載されたチームの研究論文によると、Close2Uと名付けられたこのアプリケーションでは、がん患者に対して気分や疼痛部位に関する一連の質問に答えさせ、モチベーション向上を狙ったアドバイスや歌などが報酬として与えられるゲーミフィケーション機能がテストされている。疼痛の強弱測定においては「非常にひどい」と「非常に良い」を結ぶ直線上をマークする、疼痛部位の測定においては身体画像に該当領域をマークするなど、視覚的なスケーリングを取り込みゲーム性を高めている。また、患者間の報酬交換機能も備え、コミュニティにおける緩やかなコミュニケーションも実現する。 EurekAlertの取材に対し、研究を率いたGarcía Magariño氏は「このアプリにより、楽しみながら適切な健康モニタリングと相互支援を提供することができる。ただし、私たちのリソースと潜在的なユーザーの関心が重要であるため、いつ製品化されるかは分からない」とする。一方でスマート家電やスマートウォッチなどのデバイスに搭載することを計画するなど、野心的な一面ものぞかせている。

歯科のAI導入を促進する団体「DAIC: Dental AI Council(歯科AI協議会)」

歯科医療におけるAIの可能性を探り検証することで、AI導入を加速する目的の団体「DAIC: Dental AI Council(歯科AI協議会)」が米国において発足された。 歯科業界メディア DentistryIQに28日付で発表されたプレスリリースによると、DAICの設立メンバーは開業歯科医院・歯科業務支援組織(DSO)・メーカー・ソフトウェアプロバイダー・保険会社・研究所・大学などに所属し、歯科業界を代表する15名が集結した。DAICは、歯科業界がAIの活用に遅れをとっているという認識のもと、AIに対する懐疑的な見方や誤解を、正しい理解へと主導する役割を果たそうとしている。 AIによる歯科領域への直接的な恩恵である画像診断AIの一例を以前にも紹介した(過去記事)。DAICはその他にも診療計画・補綴物製作・審美歯科・保険請求などあらゆる面への活用を想定する。特に保険請求では過重な審査業務にもかかわらず不正請求が多数紛れこみ、無駄なコストは顧客に転嫁されている。その矛盾をAIが解消することで保険料が安くなり、歯科医療を求める人が増える。そのような業界全体が受ける恩恵をDAICは模索し提案していく。

ディープラーニングで変わる麻酔管理

全身麻酔で静脈注射されるプロポフォールの制御方法がディープラーニングによって変わろうとしている。現在主流のプロポフォール麻酔を制御する手法 Target controlled infusion(TIC)で血中濃度の目標を適切に維持するには、麻酔科医の専門的判断を要してきた。適切な麻酔レベルを自動制御できる次世代の手法の探究が進められている。 本年開催の International Conference on Artificial Intelligence in MedicineでMITのグループから発表された研究では、プロポフォール投与を管理するためのニューラルネットワークが開発された。論文の全文はプレプリント版としてarXivに公開中である。同研究では深層強化学習(Deep Reinforcement Learning: DRL)によって適切なプロポフォール麻酔深度が仮想環境で訓練された。 開発されたアルゴリズムは、標準となる自動制御手法のひとつであるPID制御の性能を有意に上回る結果を示した。同研究は、実患者で試行されていない仮想環境内の結果であり、承認を受けた臨床試験に進む必要がある。しかし、将来的には従来の機械制御にとって代わり、理想的な麻酔量をさらに洗練させる可能性を秘めているだろう。

チャットボットベースの症状チェッカーに欠けているもの

チャットボットベースの症状チェッカー(CSC)は現在、スマートフォンアプリとしても広く普及を始め、初期診断と受診先選定の拠り所となろうとしている。一方で、「CSCには決定的にかけているものがあり、従来の受診プロセスに及ばない」とする研究成果が明らかにされた。 Medical Xpressが報じたところによると、米ペンシルベニア大学の研究チームは、この種のCSCアプリがサポートするのは既往歴の確認や症状評価、初期診断、追加検査の選定、紹介などに限定されることを示した。研究チームは、既にサービス提供の行われているCSCアプリの機能レビューのほか、インタビューによるユーザーエクスペリエンス分析を加えた定性評価を行った。アプリ単独では実際の検査施行や検査結果の解釈、最終診断の提供などの機能が不足することを指摘する。また、アプリユーザーは柔軟な症状の伝達ができないこと、曖昧な病歴が許容されないこと、意図の分からない質問などに機能の不足を実感していた。 研究チームは、入力システムの改善や分かりやすい文章表現・説明、チャットボットにおける会話機能の向上などによって大幅に改善できる可能性があるとする。CSCが完全に臨床ワークフローに取り込まれるのは時間の問題とみる向きが強い一方、研究成果は当該テクノロジーの進む方向性にひとつの示唆を与えるものとなっている。

ヘルシンキ大学 – 頭に浮かぶイメージを画像化するAIテクノロジー

フィンランド最大の教育・研究機関であるヘルシンキ大学の研究チームは、脳波(EEG)をモニタリングすることにより「頭で想像するイメージ」を具体的な画像として描出する技術を開発した。これは近年急速に技術革新の進む「ブレインコンピュータインターフェース(BCI)」に基づくもので、文字のスペリングやPC上のカーソル移動などについては既に一定精度での実現をみており、新時代の技術として多大な関心を集めている。 オープンアクセスの査読付き学術ジャーナルであるScientific Reportsに今月掲載されたチームの研究論文によると、「neuroadaptive generative modelling(神経適応型生成モデリング)」と名付けられた新手法が成果の根幹をなすという。研究参加者はEEG測定下において、笑っている顔や年老いた顔などといった特徴的な顔貌を想像するように求められ、眼前のスクリーン上には大量の顔画像を連続して表示した。研究参加者のダイナミックな脳波変化から学習したAIアルゴリズムは、人間が頭で想像するイメージに類似した顔画像を生成し提示できるようになり、最終的な精度は83%を示していた。 Science Dailyの取材に対し、研究を率いたTukka Ruotsalo氏は「コンピュータは表示する画像と人間の反応をモデル化することで、ユーザーの意図に一致する全く新しい画像を生成できるようになった」とした上で、人間の顔を取り扱うことはこの新手法の一例に過ぎないことを強調する。将来的には、何かを描いたり説明する際にコンピュータが人間の創造性を補うといった活用や、人間の社会的・認知的・感情的なプロセスへの洞察を得る可能性までに言及している。

社会的孤独をスピーチから解析する研究

COVID-19の流行は社会的孤独をめぐる現状を浮き彫りにしており、孤独に対する技術について以前に紹介した(過去記事)。自己申告による孤独の評価には限界もあるため、表現される言語から感情を定量化するための自然言語処理が模索されている。 カリフォルニア大学サンディエゴ校からのニュースリリースによると、同校の研究グループは「自然言語処理で高齢者の孤独感を評価する手法」を学術誌 American Journal of Geriatric Psychiatryに発表している。研究に参加した80人の高齢者へのインタビューから言語的特徴を抽出し、機械学習アプローチによって質的な孤独感を精度94%、量的な孤独感を精度76%で予測することができた。 同研究によると、孤独を抱える人は孤独についての直接的な質問に対して「悲しみの表現が多く、回答が長くなる」特徴があった。また女性は孤独を自認する傾向が強く、男性は恐怖と喜びに関する表現が多用される、という解析結果もあわせて示された。「孤独者のスピーチ」を解析する手法の社会実装が近づくことを実感させられる研究のひとつである。

HOT NEWS