低線量CTへのAI利用 – 心血管疾患リスクを推定

イスラエルのテルアビブ大学やZebra Medical Vision、米ユタ大学などの共同研究チームは、低線量CT画像を解析するAIアルゴリズムを利用し、心血管疾患リスクを推定できるとする研究成果をまとめた。 オープンアクセスジャーナルのPLOS ONEに3日掲載されたチームの研究論文によると、The National Lung Screening Trial(NLST)と呼ばれる低線量CTによる肺がんスクリーニング研究の患者データベースを用い、レトロスペクティブに解析を加えたという。冠動脈の石灰化、肝臓の脂肪蓄積、肺における気腫の程度、の3つをそれぞれ異なる機械学習アルゴリズムで評価し、これが心血管疾患発症および死亡の予測因子となるかを多変量解析によって調べた。種々の交絡因子を考慮しても、機械学習アルゴリズムによる各項目のスコアリングのうち、冠動脈石灰化と肝臓の脂肪蓄積については、統計学的有意に心血管疾患発症および死亡と関連していた。 本研究は撮像済みの低線量CT画像であっても、アルゴリズムの適用によって新たな臨床情報を付与できる可能性を示唆しており、医師の医学的判断の大きな助けとなる可能性がある。

日常言語から精神疾患発症リスクを捉える機械学習技術

米エモリー大学とハーバード大学の研究チームは、日常的な話し言葉から将来的な精神疾患発症の危険性を捉える機械学習アルゴリズムを構築した。研究成果は学術誌npj Schizophreniaに今月公開されている。 Medical News Todayが報じたところによると、両大学の共同研究チームは、精神疾患発症リスクの高い若者を対象に、日常会話における「内容の薄さ」や「音に関連する言葉の使用」から、実際の精神疾患発症を予測する機械学習アルゴリズムを構築したという。同アルゴリズムによる予測精度は93%と高い値を示していた。 これまでの研究と臨床知見から、将来的な精神疾患発症に至る患者は、現在の話し言葉にわずかな特徴が共有されていることが示唆されていたが、これを具体的に明示したものはなかった。エモリー大学精神科のPhillip Wolff教授は「機械学習手法により、隠された話し言葉の特徴を明らかにした」と成果に自信を示している。

中国の医療ポータルサイト「DXY」- Tencentらから5億ドルの資金調達

「DXY」は中国における医療従事者向けSNSプラットフォームを2000年に開始し、近年では一般消費者向けの医療ポータルサイトとしても成長している。中国人の健康に対する意識の高まりとともにオンラインの医療産業は発展を加速し、プレイヤーの乱立で群雄割拠の状態にあるが、DXYは度重なる豊富な資金調達で頭角を現してきた。 PR Newswireで報じられたDXYのプレスリリースによると、同社は12月28日付で上海拠点のPEファンドTrustbridge Partners主導のもと、Tencent社らから5億ドルの追加資金調達を完了したことを発表している。資金は主に医師を対象としたサービスブランド「DXY.cn」と一般向けサービス「DXY Doctor」の二本柱の事業強化に充てられるという。 COVID-19パンデミック下でDXYのようなオンライン医療プラットフォームが強い成長をみせているのは、日本と同じ様相である。同社をみても中国企業で論点となりがちな個人情報保護に関する取り組みの不透明さは意識せざるを得ない。しかしそのようななかでもDXYのプラットフォームは、COVID-19の世界的データを一般向けにリアルタイムでレポートする機能を率先して導入し、科学知識の普及・風評に対する反論記事・オンライン無料相談会・公開講座など、公共福祉性の高いサービスを提供してきた。そのような新型コロナウイルスとの戦いへの貢献を同社はリリース内であらためて強調している。

Twintの活用 – 新型コロナワクチンに対するインド国民の感情分析

インド政府はCOVID-19の危機を早期に終焉へと導くため、集団予防接種プログラムを展開している。一方で、予防接種自体は必須ではないため、プログラムの成功には国民感情が重要な鍵となる。南インドに所在する国立工科大学(NIT)の研究チームは、Twitterへの投稿データから新型コロナワクチンに対する態度と感情を分析する機械学習研究を行っている。 Diabetes & Metabolic Syndrome: Clinical Research & Reviewsに掲載されたチームの研究論文によると、PythonライブラリであるTwintを利用し、「COVIDワクチン」という単語を含むツイートを網羅的に抽出し、AIアプローチによる解析を加えたという。結果、47%が中立的なトーン、17%が否定的なトーンであったことが明らかにされ、ワクチンに肯定的な立場を取る人は全体の35%強にとどまっていた。このことから研究チームは「インド政府はプログラムの実施前にまず、ワクチンに対する恐怖に対処することが欠かせない」点を強調している。 ツイート内容をスクレイピングして、傾向分析によって有用な医学的知見を導出する研究成果が近年多くみられる。一般的にはTwitter APIによって抽出作業を行うが、申請時にやや煩雑な作業を要するため、APIを介さずにTwitterプロファイルからツイートをスクレイピングできるTwintの価値は高い。また、Twintには地理的フィルタリングのオプションがあるため、容易に発信地域を限定した投稿データ収集を可能とする。Twintを活用し、当メディアの読者からも積極的な近傍研究への参画のあることを期待したい。

Cognitive Apps「毎日の音声とテキストで従業員のメンタルヘルスを管理するAIアプリ」 – Ehave社が独占契約

従業員のメンタルヘルスに配慮する企業の取り組みはますます盛んとなってきた。そのような企業が従業員と医療者をつなぐ連続性のあるケアを行うため、従業員の精神的な健康履歴にアクセスできるデジタルツールへの需要が高まっている。米Cognitive Apps社は「メンタルヘルスを音声とテキストから毎日モニタリングするAIアプリ」をApple HealthKitおよびGoogleFitで提供してきた。 GlobeNewswire掲載の7日付プレスリリースによると、Coginitive Appsの同AIアプリについて、デジタル治療を手がける米Ehave社がG20諸国内で独占的にプラットフォームを提供するパートナーシップ契約が発表されている。アプリはMDとPhDをもつ精神科医による設計で、従業員(患者)から毎日5秒間の音声とテキストメッセージを取得し、声のトーンや感情を分析するAI制御のツールである。また、ウェアラブルデバイスなどから収集される身体活動・周囲の騒音・ワークライフバランス・睡眠といったデータがバックグラウンドで処理されている。 Ehave社はプラットフォームをG20諸国で主に企業を対象として配布し展開していく予定という。同社CEOのBen Kaplan氏は「Cognitive Appsのプラットフォームによって、雇用者は従業員のレッドゾーン(ストレス・疲労・抑鬱状態の増加)を判断できるようになります。そして、生命を脅かすような個人の行動を未然に防ぐことが私たちの目標です」と語っている。

AIによってガンの目印となる物質を検知

ガンの免疫治療を行うGritstone Oncology社は、がん細胞に特有のネオアンチゲンという物質を発見するAI「EDGE」を開発し、その有効性を証明する論文を発表した。このAIを用いることで、ガンの免疫治療に関する研究が大幅に進展する可能性が高いという。 ガン細胞については、遺伝子変異の影響によってネオアンチゲンという物質を生成するということが知られており、この物質は各患者に固有のものである。すなわち、体内ではネオアンチゲンをガン細胞の目印とすることで、ガン細胞のみに作用し、副作用の少ない薬の開発が可能になるのである。MedCity Newsによると、EDGEを用いることで、これまで発見が難しかったネオアンチゲンを比較的高精度で検知することが可能になるという。今回発表された論文では、EDGEと従来のネオアンチゲン検出方法を比較する形で行われた実験について詳細が述べられている。この論文によると、従来の方法では12人中4人のネオアンチゲンしか見つけられなかったのに対し、EDGEは11人のネオアンチゲンを検出したという。 Nasdaqによると、今回開発されたAIによって、患者一人ひとりに合わせたガン治療が進展する可能性が大きいという。また、Gritstone Oncology社の研究員であるTimothy Chan氏は、この最先端のAIがガン免疫治療の発展に貢献できるとうれしいと述べている。

AIの研究利用 – 長期療養施設に関連した自殺者数調査

米ミシガン大学の研究チームは、自然言語処理の可能な機械学習アルゴリズムを利用し、長期療養施設への転居や居住、転出などに関連した高齢者の自殺者数を調査した。研究成果は、医学ジャーナルJAMA Network Openにて公開されている。 研究チームの論文によると、National Violent Death Reporting System(NVDRS)に13州で13年間に渡って集積された死亡データをもとに、機械学習アルゴリズムによって「長期療養施設に関連した自殺」の抽出を行ったという。55歳以上高齢者では1037件を同定し、これは施設コード単独を利用した従来の推計が過小評価していた可能性も示しているとのこと。 NVDRSは、自殺を含む暴力死の現状を評価し、防止策の立案を行うために2003年からCDCが開始したシステム。正確な現状分析にはデータ解析の観点から難があったが、自然言語処理および機械学習技術が有効利用できる余地が示されたことにもなり、今後の利用促進が期待されている。

AI聴診器のStethoMe – 欧州で複数の遠隔医療プロバイダーと提携

StethoMe社のAI聴診器は、家庭での利用を目的としたEU認証の医療機器として知られる。患者の呼吸音異常を早期に捉え、AIによる診断結果と併せて臨床医に情報が共有されるシステムを構築している。StethoMeはこのほど、欧州の主要な遠隔医療プロバイダーであるMaQuestionMedicaleおよびHomeDoctorとの提携を公表した。 医療グレードとして認証された最初のAI聴診器であるStethoMeは、フランスとスペインの主要プロバイダーと提携し、両者が展開する遠隔診療プラットフォームに統合される。これによりEU域内での更なる利用者増が確実視され、AI聴診器のシェアにおける優位な立ち位置を一層強固にする。 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、遠隔医療への関心は世界各国で急速に高まっている。StethoMeのテクノロジーがヘルスケアの向上に直接寄与することを強く期待したい。

デジタルリサーチプラットフォームのOwkin – 2500万ドルの資金を調達

研究者向けのAIプラットフォームで知られる米Owkinは先週、新たに2500万ドルの資金を調達したことを公表した。2016年創業の同社はこれにより、計5500万ドルの資金を得たこととなる。 Owkinの誇るAIプラットフォームでは、医療画像や遺伝子データを含む無数の臨床データから、疾患に結びつくバイオマーカーや生物学的メカニズムを探索できる機能を持つ。アカデミアの研究者や臨床家だけでなく、製薬企業における新薬開発にも重要な役割を果たす可能性があるため、業界からの期待も大きかった。 Owkinは現在、COVID-19対策にも注力しており、新たな調達資金をCOVID-19ツールの研究開発にも充てることを明らかとしている。
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AI研究がマラリア対策の時計の針を進めるか – インド工科大学ボンベイ校

マラリア原虫が蚊によって媒介される感染症「マラリア」は、近年、世界で年間の症例数2億人以上、年間の死亡者は40万人以上を記録し続けていた。その原因・予防・治療が確立されてきた現代でも、いまだ致死的な感染症として広大な影響力を維持し、世界的な対策の進展は止まっていた。なかでもインドは総人口の85%がマラリア危険地帯(いわゆるマラリア・ベルト)に居住しており、世界最大のマラリア好発国として疾患が人々に与える負荷は極めて強い。 インド工科大学(IIT)ボンベイ校のリリースによると、同校の研究グループによる新研究が「マラリア患者の血中タンパク質を機械学習モデルで解析し、マラリア原虫の種の識別・デング熱との鑑別・バイオマーカーによる重症度分類の可能性」を示したという。同研究はNatureの姉妹学術誌Communications Biologyに収載された。マラリアの原因として筆頭に挙がる2種の原虫(Plasmodium vivaxおよびPlasmodium falciparum)の鑑別や、未確立である予後予測のバイオマーカー探究で、マラリア好発地域における医療の質の向上が期待される。 研究成果で得られたタンパク質の同定結果から、マラリア重症症例を検出し、デング熱と鑑別する迅速診断キットの開発が着手されている。血液標本の顕微鏡観察からマラリア原虫を確認する古典的な診断法は流行期における医療の負担が大きく、従来の迅速診断キットでは感度や特異度が課題とされていた。AIによる手法が、近年足踏みし続けていたマラリア対策進展の鍵となるだろうか。

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診断AI市場は2027年までに660億ドル規模へ

医学的診断におけるAIの市場規模は2019年の36億ドルから、2027年までに660億ドル規模と拡大することが予測されている。これは年平均成長率(CAGR)では44%と急速で、市場の成長は主として「疾患の特定と診断におけるAI活用機会の増加」および「ヘルスケアAI企業への投資増加」に起因するもの。 Research and Marketsによる最新レポートによると、現在同市場において最大シェアを保持するのは医用画像ツールである一方、2027年までに最高のCAGRを記録するのは疾患自動検出システムになるという。また領域別では腫瘍学分野がリードする現シェアに対して、同期間のCAGRとしては放射線科分野が最高となる見込み。さらに、現在遠隔受診・相談サービスを柱とする遠隔診療領域では、リモートモニタリングが最大の成長を記録するとしている。 医療AIは麻酔薬や抗生剤に並ぶ技術革新と評する向きも強まるなか、専門人材の不足や関連法規制の未成熟が市場の成長を妨げる主要な要因とみられている。米中の国策としての強力なAI戦略が推し進められる一方、英国は国立の医療AI研究所設立やテック企業との積極的な連携を進め、これを追随している。日本は次の10年この領域で何をなし、どういう立場を得られるだろうか。

ディープラーニングで変わる麻酔管理

全身麻酔で静脈注射されるプロポフォールの制御方法がディープラーニングによって変わろうとしている。現在主流のプロポフォール麻酔を制御する手法 Target controlled infusion(TIC)で血中濃度の目標を適切に維持するには、麻酔科医の専門的判断を要してきた。適切な麻酔レベルを自動制御できる次世代の手法の探究が進められている。 本年開催の International Conference on Artificial Intelligence in MedicineでMITのグループから発表された研究では、プロポフォール投与を管理するためのニューラルネットワークが開発された。論文の全文はプレプリント版としてarXivに公開中である。同研究では深層強化学習(Deep Reinforcement Learning: DRL)によって適切なプロポフォール麻酔深度が仮想環境で訓練された。 開発されたアルゴリズムは、標準となる自動制御手法のひとつであるPID制御の性能を有意に上回る結果を示した。同研究は、実患者で試行されていない仮想環境内の結果であり、承認を受けた臨床試験に進む必要がある。しかし、将来的には従来の機械制御にとって代わり、理想的な麻酔量をさらに洗練させる可能性を秘めているだろう。

UCLA 医療データの統合にMicrosoft Azureを利用開始

米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)は、大量の電子カルテデータと研究用データの統合に向け、UCLA Healthの標準プラットフォームとしてMicrosoft Azureの利用を開始した。これにより、UCLA Healthに所属する研究者・臨床医たちは、同プラットフォームを介したクラウドベースのデータ管理・解析を実現することとなる。 EHRIntelligence.comが4日報じたところによると、UCLAは効率的な医療データ統合と解析を通し、新しい医学研究成果を精力的に示していくため、Microsoft Azureの導入を決めたという。UCLA Health Sciences のCIO・Michael Pfeffer氏は「統合される医療情報には、血液検査や医薬品情報などの構造化データだけでなく、医療文書や医療画像、ゲノム情報などの非構造化データも含まれる」とし、研究利用を前提とした包括的なデータ管理を目指すことを明確にしている。 医療情報は最も高度な個人情報のひとつにあたり、法整備の遅れを背景として、データ管理・解析のクラウドベース化は依然として進んでいない。一方、クラウドコンピューティングが提供する高速演算環境による処理速度の大幅短縮や、遠隔地との研究協力を容易に実現できる点など、医学研究、特にAIを利用したデータベース研究との親和性は非常に高い。

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