術中迅速病理診断で医師を上回るAI

米ミシガン大学を中心とした研究チームは、脳腫瘍に関する術中迅速病理診断で、AIが病理専門医をやや上回る精度を示したことを明らかにした。研究成果は学術誌Nature Medicineで6日、レター論文として公開されている。 英国のオンラインペーパーIndependentが今日報じたところによると、チームの構築した画像診断AIは病理専門医による診断精度を1%上回ったという。ただし、従来の20分から30分を要した診断手順に関しては、2分30秒未満へと劇的な短縮を実現している。研究者らは「人が病理検査室で行うプロセス」と「実験的AIによるプロセス」が結果に対して異なるバラツキがあることを指摘し、病理専門医とAIが協調することでより高い精度を導ける余地があるとしている。 手術中の限られた時間内に病変部が悪性かどうか、転移や取り残しがないかを的確に知るには病理組織的な視点が欠かせない。一方で、通常の病理検査とは比較にならないほど短時間で行われる術中迅速診断では、組織標本の質も低いため診断自体が非常に難しい。AIによる診断医へのサポートは、精度担保・向上に寄与する現実的手段として期待が高まっている。

AIによる免疫系マッピング – スタートアップ Immunaiが2000万ドルの資金調達

がんの治療選択肢として、オプジーボやキイトルーダなど免疫チェックポイント阻害薬に代表される免疫療法に注目が集まる。しかし、免疫反応の複雑さから多岐にわたる副作用が予測しにくい点や、開発にかかる多大なコストが課題となる。ニューヨークを拠点とするスタートアップ「Immunai」は機械学習アルゴリズムを用い、免疫システムのマッピングによって診断と治療の改善に取り組む計画を発表している。 Venture Beatが報じたところによると、Immunaiは今回の計画発表に際して2000万ドルの資金を調達しており、研究体制の拡充に取り組んでいる。同社の技術はひとつの血液サンプルから1テラバイト以上のデータを取得し、機械学習によって細胞のタイプと状態をマッピング、データベースとの比較で免疫プロファイルを作成する。このプロファイル情報はがん治療に応用が期待される新規バイオマーカーの発見をサポートする可能性をもつ。例としてプログラム細胞死に関係するタンパク質PD-1とVD279を阻害する研究で、Immunaiのチームは腫瘍と戦うT細胞の起源に関する情報を明らかにしている。 Immunaiはツールとノウハウの開発によって、免疫腫瘍学や細胞療法の研究者をサポートし、医薬品開発と市場投入のスピードを上げることを狙いとしている。同様のアプローチとして、MicrosoftとスタートアップAdaptive Biotechnologiesがアルゴリズムの共同研究を行っていることも話題となっている。この領域への注力はまだまだ続いていくだろう。

axial3D – 医療と3Dプリンティングを繋ぐ英スタートアップ

英ベルファストに所在する医療系スタートアップaxial3Dが先週、The European DatSci Awardsの'Best use of Data Science/AI in Health/Wellbeing’(健康医療分野でのAI利用への表彰)に選出された。 axial3Dは機械学習技術を利用し、臨床医が3Dプリンティングを容易に実臨床に導入できるソフトウェアやサービスを提供している。具体的には、複雑な外科手術に際し、外科医が3Dプリントされたモデルを利用することで事前の精緻なシミュレーションを実現した。また、この種のモデルを患者教育や術前説明に利用することで、患者のより良い理解が得られることは多くの先行研究が明らかにしているという。 同社は本年7月に、シリーズAラウンドとして240万ポンド(約3億2千万円)の資金を調達しており、現在大幅な事業規模の拡大に着手している。医療の質向上に貢献する先端技術利用には今、大きな注目が集まっている。

AIが描くヘルスケア産業の未来〜医療編〜

ヘルスケア分野において、 AI が存在感を増してきており、業界内には多大な変革がもたらされている。AIは、人間よりもずっと早く、そしてミスなく業務を遂行することができる。 そしてヘルスケア業界の中でも特にAIが結果を出しているのは、病気の診断サポートだ。 電子メディアHealth Techによると、AI の分析方法を用いた機械学習ツールを使うことで、がん患者が持つ DNA を分析し、遺伝子の変化が予測可能になるという。これにより、医療従事者は通常よりも早く癌を発見することができ、結果的に患者の生存確率を上げることになる。心臓病の早期発見を助けるウェアラブルデバイスの開発も進んでおり、適切な治療によって病気の進行を未然に防ぐことは、どんどん可能になっているのだ。 世界的コンサルティングファーム・Deloitteが発表した「2018年ヘルスケア概観」によると、毎年25億ドルものお金が、適切とは言えない治療や医療費に使われているという。AI技術を医療画像の解析処理に用いれば、患者の医療費を最小限に抑えられる可能性は大いにある。また、腫瘍のある患者のCTスキャン画像を機械学習でAIに覚えさせれば、医師の判断をサポートできるようになることも期待されている。。

BioSerenity – COVID-19に伴う脳波異常を報告

フランス・パリに本拠を置くBioSerenityは、生体センサーを活用した遠隔診断・患者モニタリングソリューションを展開する研究開発型スタートアップとして知られる。このほど、同社の研究チームは「重症のCOVID-19患者において珍しい脳波が計測されている」とする研究結果を報告した。 Annals of Neurologyに公開されたチームの論文によると、COVID-19の一部重症患者において、説明のつかない精神状態の異常・意識消失・覚醒遅延・反応不良などがみられることから、探索的な脳波測定を行ったという。調査された26名の患者のうち5名の脳波には、前頭葉に定常的な異常発火を確認しており、これが中枢神経障害との関連を示唆するものであるとする。 本研究はケースレポートに近く、以後のさらなる知見集積が望まれているが、近年における生体センサーの利用拡大はこの種の新たな病態・病因の解明に繋がり得るメリットもある。BioSerenityは保有するデータを患者治療に活かすため、医療者への提供も検討している。

術中迅速病理診断で医師を上回るAI

米ミシガン大学を中心とした研究チームは、脳腫瘍に関する術中迅速病理診断で、AIが病理専門医をやや上回る精度を示したことを明らかにした。研究成果は学術誌Nature Medicineで6日、レター論文として公開されている。 英国のオンラインペーパーIndependentが今日報じたところによると、チームの構築した画像診断AIは病理専門医による診断精度を1%上回ったという。ただし、従来の20分から30分を要した診断手順に関しては、2分30秒未満へと劇的な短縮を実現している。研究者らは「人が病理検査室で行うプロセス」と「実験的AIによるプロセス」が結果に対して異なるバラツキがあることを指摘し、病理専門医とAIが協調することでより高い精度を導ける余地があるとしている。 手術中の限られた時間内に病変部が悪性かどうか、転移や取り残しがないかを的確に知るには病理組織的な視点が欠かせない。一方で、通常の病理検査とは比較にならないほど短時間で行われる術中迅速診断では、組織標本の質も低いため診断自体が非常に難しい。AIによる診断医へのサポートは、精度担保・向上に寄与する現実的手段として期待が高まっている。

医療費請求を自動化する機械学習ツール – Nym Health

米国における医療費の請求は、複雑なコード入力によって医療システム全体に負荷をかけている。コード関連の医療費支払い拒否が、医療機関に年間150億ドルのコストを負わせているという試算もある。イスラエル拠点のNym Healthは、病院の請求書発行を自動化する機械学習ツールを提供している。 TechCrunchでは、Nym Healthがツール開発と販売拡大のために新たに1650万ドルの資金を調達したと報じている。Nym社のツールは医師のカルテから自動的に適切な請求コードに変換する技術を用いている。臨床の用語を理解するための自然言語処理と分類のアルゴリズムによって、処置・検査・治療に対して最適な請求額を決定できる。 Nym社のソフトウェアは、医療の意思決定に対して介入しないコンセプトで「医師は最善を尽くしてプロトコルを守っている」と仮定しており、不正な水増し請求には対応していないという。現在、同社のサービスは分析1件あたり1-4ドルの料金で、米国内の約40の医療機関と提携している。

診療録から小児科疾患の診断を行うAIアルゴリズム

米国と中国の研究チームは、小児患者の症状・病歴・検査結果などの診療録から、高精度に疾患診断を行う自然言語処理AIシステムを開発した。中国において60万人に及ぶ患者データから構築されたこのアルゴリズムは、小児科領域の幅広い疾患群に対応している。研究成果は11日、学術誌Nature Medicineにて公開された。 ニューヨーク・タイムズの報道によると、カリフォルニア大学サンディエゴ校を中心とした研究チームは、中国南部に所在する小児医療センターに蓄積された患者データを用いたという。研究を率いたKang Zhang博士は「複雑な状況などにおいて、医師は必ずしも全ての疾患可能性を考慮できるわけではない。このシステムは医師の見逃しを防ぐ目的にも利用できる」としている。 精度の高いAIアルゴリズムを得るためには大規模なデータを要することが多いが、患者データの取り扱いには規制が多く、AI医学研究の1つの壁となっている。一方、中国では個人情報を取り巻く法規制が他国に比べて圧倒的に緩く、この事実が、中国企業や研究機関による同分野の躍進を支えている側面がある。また、World Economic Forumが過去に報じたように、中国は極端な医師不足下にあり、窮地をAIの代替によって脱したい思惑も種々の国策から垣間見えている。

東大発ベンチャーLPIXEL – 胸部X線画像解析AIで医療機器製造販売承認を申請

LPIXEL(エルピクセル株式会社)は、胸部X線画像から肺結節を疑う領域を検出し、医師の診断支援を行う画像解析ソフトウェアについて、PMDAに医療機器製造販売承認の申請をしたことを公表した。 同社の発表によると、この医用画像解析ソフトウェア・EIRL Chest X-ray Lung nodule(仮称)は、AIを活用した独自アルゴリズムによって結節を疑う領域を同定、医師の見落としを防ぐことで医療の質的向上を図るという。 LPIXELは東京大学発ベンチャーで、ライフサイエンス分野における画像解析AIに高い技術を持つ。昨年10月には、脳MRI画像から脳動脈瘤を疑う部位を検出するEIRL aneurysmが、薬事承認を取得し実際の販売を開始している。
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ブリティッシュコロンビア大学 – 医学生向けAI教育を開始

カナダの公立大学・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)はこのほど、医学生向けのAIコースを設定し、10月からのワークショップ型授業としての提供を開始する。 UBCが明らかにしたところによると本コースでは、AIエンジニアによる機械学習の理論講義、Pythonを利用したAIプログラミング演習、AIアプリケーションの評価トレーニングなどが含まれているという。また、受講者にはAI研究者らとの交流の場が用意され、「臨床キャリアにおけるAI」を考察する機会が設けられる。 ヘルスケアにおけるAIは急速な発展をみせており、次世代の臨床現場においてAIを度外視することはできない。医学生に対するAI教育の必要性も多面的に議論されるようになり(過去記事)、標準的な医学教育科目として取り込まれる日も遠くないかもしれない。

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スマートヘルメットで発熱者監視 – 中国 KC Wearable社

COVID-19の流行下では多くの体温測定装置が市場に出回った。迅速に多人数の発熱スクリーニングを行うひとつの形として、ヘルメット型の発熱者監視装置(参照画像)が好評を得ている。 製品を提供する中国 KC Wearable社のニュースリリースによると、スマートヘルメット KC N901は警察・空港・病院など様々なシチュエーションで監視員が装着し、ヘッドセットに搭載された赤外線カメラからリアルタイムで周囲の人の体温を測定するもの。約2メートルの距離から誤差0.3℃以内の精度で同時に最大13人、1分間に200人の体温スキャンが可能という。 スマートヘルメットには顔認識やナンバープレート認識を活用できるAIも搭載されており、データベースとの照合も可能である。付属のスマートウォッチからヘルメットのすべての機能を操作する。中国・イタリア・オランダ・ドバイで運用されており、直近では南アフリカでの導入も報告された。感染の流行を制御する第一歩として、非接触型の高パフォーマンス体温測定装置に対する大きな需要は今後も続くと考えられる。

医療費請求を自動化する機械学習ツール – Nym Health

米国における医療費の請求は、複雑なコード入力によって医療システム全体に負荷をかけている。コード関連の医療費支払い拒否が、医療機関に年間150億ドルのコストを負わせているという試算もある。イスラエル拠点のNym Healthは、病院の請求書発行を自動化する機械学習ツールを提供している。 TechCrunchでは、Nym Healthがツール開発と販売拡大のために新たに1650万ドルの資金を調達したと報じている。Nym社のツールは医師のカルテから自動的に適切な請求コードに変換する技術を用いている。臨床の用語を理解するための自然言語処理と分類のアルゴリズムによって、処置・検査・治療に対して最適な請求額を決定できる。 Nym社のソフトウェアは、医療の意思決定に対して介入しないコンセプトで「医師は最善を尽くしてプロトコルを守っている」と仮定しており、不正な水増し請求には対応していないという。現在、同社のサービスは分析1件あたり1-4ドルの料金で、米国内の約40の医療機関と提携している。

Real Time Medical – COVID-19対策への適切な意思決定を支援するAIアプリ

カナダ・トロントに本拠を置くReal Time Medicalは、最新ガイドラインに信頼できる医療情報ソースをオーバーレイし、医療者や市民に対してCOVID-19対策における適切な意思決定を支援するAIアプリを開発した。COVID AIKnowledgeEnable(COVID KE)と名付けられた同アプリは、iPhone・Android・PCから利用でき、9月4日より世界中からのダウンロードを可能とする(専用サイト)。 Real Time Medicalが2日明らかにしたところによると、同アプリはカナダ研究評議会(NRC)が提供する研究支援プログラムの後援を受けて開発されたという。COVID KEは、米疾病予防管理センター(CDC)やNew England Journal of Medicine、Lancetなど、特に信頼性の高い複数のソースから情報を得、ここに各種ガイドライン、医師直接入力による集合知などを活用することで、ユーザーの検索項目に対して最新かつ実用的なアドバイスを与えることができる。 7月の欧州放射線学会でDr. Marie-Pierreは「COVID-19に関する25,000以上の記事のうち、メタアナリシスは48、確かな臨床試験は25」であるとし、信頼に足る情報に向き合うためのフィルタリングは困難を究める現状を指摘する。文字通り玉石混淆、情報の洪水となっている現在、このアプリが市民や現場の医療を担う臨床家たちの拠り所となるか、注目が集まっている。

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