熱傷による水分バランスや血中老廃物の異常から腎臓が急に機能しなくなる、いわゆる急性腎障害は、致死率80%ともいわれる危険な状態である。救命には一刻も早い診断が必要だが、これまでの尿量や血中クレアチニンのようなバイオマーカー測定には改善の余地があった。機械学習モデルで新しいバイオマーカーを解釈し、急性腎障害の診断までの時間を大幅に短縮する研究が2019年6月に学術誌Burnsに発表された。
Medical Xpressによると、米UCデイビスメディカルセンターのグループが、尿中の好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)という新しいバイオマーカーに着目した機械学習モデルを作った。これまでのバイオマーカーでは平均42.7時間かかっていた診断を、18.8時間にまで短くできたという。さらに診断精度の向上も達成しており、これまで測定値の解釈が難しいとされてきたNGALの弱点をカバーする大きな成果を達成した。
AIによる急性腎障害の超早期診断は、熱傷が起きやすい戦争での死傷者に応用が期待されている。急性腎障害を前線の施設で管理するのは難しく、早期に診断されれば、後方の高度医療機関へ適切な搬送ができるようになる。この流れは民間でも同じである。これまで専門的で解釈が難しいとされてきたさまざまなバイオマーカーに活躍の場面が与えられるようになったのは、機械学習の全盛期ならではの現象といえるだろう。