医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究熱傷(やけど)でダメージを負った腎臓をAIが超早期に判断する

熱傷(やけど)でダメージを負った腎臓をAIが超早期に判断する

熱傷による水分バランスや血中老廃物の異常から腎臓が急に機能しなくなる、いわゆる急性腎障害は、致死率80%ともいわれる危険な状態である。救命には一刻も早い診断が必要だが、これまでの尿量や血中クレアチニンのようなバイオマーカー測定には改善の余地があった。機械学習モデルで新しいバイオマーカーを解釈し、急性腎障害の診断までの時間を大幅に短縮する研究が2019年6月に学術誌Burnsに発表された。

Medical Xpressによると、米UCデイビスメディカルセンターのグループが、尿中の好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)という新しいバイオマーカーに着目した機械学習モデルを作った。これまでのバイオマーカーでは平均42.7時間かかっていた診断を、18.8時間にまで短くできたという。さらに診断精度の向上も達成しており、これまで測定値の解釈が難しいとされてきたNGALの弱点をカバーする大きな成果を達成した。

AIによる急性腎障害の超早期診断は、熱傷が起きやすい戦争での死傷者に応用が期待されている。急性腎障害を前線の施設で管理するのは難しく、早期に診断されれば、後方の高度医療機関へ適切な搬送ができるようになる。この流れは民間でも同じである。これまで専門的で解釈が難しいとされてきたさまざまなバイオマーカーに活躍の場面が与えられるようになったのは、機械学習の全盛期ならではの現象といえるだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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