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電子カルテから急性腎障害発症を予測するAIテクノロジー

患者の状態悪化を事前に予測し対処することは非常に大切だが、現実的には非常に難しい。院内死亡の11%が「患者の状態悪化を迅速に捉えることの失敗」によるとの報告もある。2014年Googleによって買収されたAI企業DeepMindの研究チームは、電子カルテ記録から急性腎障害の発症を予測するAIアルゴリズムを開発した。

7月31日、学術誌Natureに公開されたレター論文によると、電子カルテ記録から生命を脅かすような深刻な病状の悪化や疾患発症を予測することができるという。チームは一例として急性腎障害を挙げ、70万例を超える患者データから疾患発症予測AIを構築した。アルゴリズムは入院中の急性腎障害発症エピソードの55.8%を予測し、引き続いて透析が必要となる重篤な急性腎障害の90.2%を予測することができた。

AIによるハイリスク患者の同定は、これまでにない迅速な治療介入を実現できる可能性があり、臨床現場からの期待も大きい。適用疾患には拡大できる余地が多分にあり、これまでの患者管理を激変させるテクノロジーとさえなり得るだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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