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肝移植のためにAIができること – 米スタートアップ『InformAI』のツール開発

米国での移植用臓器を配分する民間非営利団体『UNOS』によると、移植を必要として待機する人は全米で11万を超え、史上最高人数を更新しているという。肝臓は、腎臓に次いで2番目に多く移植されている臓器である。自然の再生力を持つため、健康な人から移植する生体肝移植がよく知られている。それでも、移植を待つ人が多数存在する状況であり、限られた資源の移植臓器を効率的に利用することは大きな課題である。ヒューストンのベイラー医科大学とシカゴのセントルークス病院の医師達が、スタートアップ『InformAI』と協力して、肝移植結果を改善するAIツール開発を進めている。

テキサス医療センターのニュースによると、InformAIは過去30年間の肝移植結果からAI予測ツールを開発している。患者とドナーの健康状態、提供される臓器の質に関するデータなど、移植の結果を左右する可能性のある変数は膨大で、どれが本当に重要な情報なのか検討が繰り返されてきた。そこに適切なAIツールが働けば、従来の統計分析では見逃されていたかもしれない、データ内の微細な相関パターンを抽出することが可能となる。UNOSに蓄積された300種類以上の予測変数だけではなく、今後は電子カルテから更に多くの変数を取り込むことで、AIツールの精度向上も期待されている。

「あるデータが医療の結果を改善するか?」一つひとつ仮説を立てて検討するという手法には、限界と飽和が近づいている。提供された臓器と移植が、患者にとってよいものになるか。ときに判断を惑わせる多くの材料を扱うためにはAIがひとつの可能性となる。InformAIが開発した基本プログラムが、早期に臨床現場で検証されていくことを研究グループは願っている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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