米ペンシルベニアにおいて、数百万に及ぶ住人に医療サービスを提供するGeisingerは、同組織内の研究により「心電図波形から1年以内の重篤な不整脈発症や死亡を予測するAIアルゴリズム」を構築したことを公表した。研究成果は今月、米心臓協会(AHA)の年次会議にて報告された。
Geisingerのニュースリリースによると、この2種の研究においては、Geisinger system内に保有される200万件以上の心電図波形を利用し、ニューラルネットワークへのトレーニングを行ったという。研究アウトカムは、未発症者からの心房細動の1年以内発症、および1年以内の死亡の2項目で、いずれもAIモデルは高度な予測能を示したという。AIによって高リスク評価を受けた心電図波形については、3名の循環器専門医による個別評価を行ったが明らかなリスクパターンは認識できず、深層学習の潜在的有用性に新たな一面を加えた形となる。
無所見と思える心電図波形から将来の疾患発症・死亡を予測できることは、大きなインパクトのある研究成果であり注目が集まる。ただし、本研究はあくまでヒストリカルデータを利用したもので、他集団における前向き研究では有効性が消失する可能性も十分にあることに注意が必要と言える。今夏には米メイヨークリニックの研究チームが「非発作時の心電図波形から心房細動の存在を識別できる」ことを示すなど、心電図波形とAIの高い親和性を思わせる(過去記事)。今後も循環器疾患を中心に、同テーマで新しい知見の創出が進むはずだ。