医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例希少遺伝子疾患の臨床試験をAIでジャンプスタート

希少遺伝子疾患の臨床試験をAIでジャンプスタート

まれな遺伝子疾患であるADNP(activity-dependent neuroprotective protein)の変異は、自閉症スペクトラムや発達障害を説明する遺伝的原因のひとつと考えられている。アラバマ大学バーミングハム校(UAB)のHugh Kaul Precision Medicine Institute所長であるMatt Might氏は、ADNP遺伝子変異をもつ自身の子どもをきっかけとして、同分野の臨床試験に取り組んでいる。

Medical XpressにUABから寄稿された記事によると、ADNP症候群の臨床研究のスタートに飛躍をもたらしたのは、Might氏らが開発したAIソフトウェアエンジン「mediKanren」(日本語の「関連」に由来)の働きがある。同AIは膨大な医学・生物学のデータベースから治療法に結びつく情報を演繹・推論する。その結果、麻酔や疼痛管理などに用いられてきたケタミンを低用量使用することで脳細胞でのADNP産生を高め、患者に治療的意義を持つ可能性が検討された。

希少遺伝子疾患に有用な研究仮説を膨大な情報の中からAIで抽出する手法は、臨床試験を始めるにあたっての最初のステップを大幅に短縮できる。Might氏は、聴覚・発話・運動能力など発達の問題を抱える自身の子どもBenjaminのように臨床試験を待ち望んでいる患者と家族に朗報をもたらすことを願いながら、研究を進展させている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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