医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例うつ病リスクをウェアラブル装置からの心拍数で解析する新研究

うつ病リスクをウェアラブル装置からの心拍数で解析する新研究

うつ病と心拍数の関連性はこれまでにも指摘されてきた。しかし、うつ病の長い期間の病勢と、短期間観測される心拍数がどのように関連しているか確認することは困難であった。European College of Neuropsychopharmacologyのバーチャル会議で「ウェアラブル心電図測定装置で連日の心拍を解析し、うつ病を90%の精度で識別する研究」が発表され注目されている。

Medical Xpressでは同学会ECNPからの研究に関するリリースを報じている。過去の研究でも、治療介入の有無に関わらず、うつ病患者の心拍数が高く変動しにくいという傾向が示されていた。新しい研究で鍵となったのは、難治性うつ病の治療薬としての可能性が模索されている麻酔薬ケタミンであった。ケタミンにはうつ症状の急速な改善効果が示唆されているが、研究対象となったうつ病患者で1分間当たり10-15回高く記録されていた平均心拍数が、ケタミンによる治療介入で正常な対照群と近くなる解析結果を得た。また、安静時心拍数が高い患者の方がよりケタミン治療に反応しやすい可能性も示唆されている。

同研究はうつ病患者16名を対象とした極めて小規模な概念実証試験であり、対象者の総数とバックグラウンドの多様性を増した追試験が欠かせない。しかし、心拍数がうつ病のバイオマーカーとして利用可能となる可能性には大いに期待が高まっている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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