うつ病と心拍数の関連性はこれまでにも指摘されてきた。しかし、うつ病の長い期間の病勢と、短期間観測される心拍数がどのように関連しているか確認することは困難であった。European College of Neuropsychopharmacologyのバーチャル会議で「ウェアラブル心電図測定装置で連日の心拍を解析し、うつ病を90%の精度で識別する研究」が発表され注目されている。
Medical Xpressでは同学会ECNPからの研究に関するリリースを報じている。過去の研究でも、治療介入の有無に関わらず、うつ病患者の心拍数が高く変動しにくいという傾向が示されていた。新しい研究で鍵となったのは、難治性うつ病の治療薬としての可能性が模索されている麻酔薬ケタミンであった。ケタミンにはうつ症状の急速な改善効果が示唆されているが、研究対象となったうつ病患者で1分間当たり10-15回高く記録されていた平均心拍数が、ケタミンによる治療介入で正常な対照群と近くなる解析結果を得た。また、安静時心拍数が高い患者の方がよりケタミン治療に反応しやすい可能性も示唆されている。
同研究はうつ病患者16名を対象とした極めて小規模な概念実証試験であり、対象者の総数とバックグラウンドの多様性を増した追試験が欠かせない。しかし、心拍数がうつ病のバイオマーカーとして利用可能となる可能性には大いに期待が高まっている。