医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例ディープラーニングで変わる麻酔管理

ディープラーニングで変わる麻酔管理

全身麻酔で静脈注射されるプロポフォールの制御方法がディープラーニングによって変わろうとしている。現在主流のプロポフォール麻酔を制御する手法 Target controlled infusion(TIC)で血中濃度の目標を適切に維持するには、麻酔科医の専門的判断を要してきた。適切な麻酔レベルを自動制御できる次世代の手法の探究が進められている。

本年開催の International Conference on Artificial Intelligence in MedicineでMITのグループから発表された研究では、プロポフォール投与を管理するためのニューラルネットワークが開発された。論文の全文はプレプリント版としてarXivに公開中である。同研究では深層強化学習(Deep Reinforcement Learning: DRL)によって適切なプロポフォール麻酔深度が仮想環境で訓練された。

開発されたアルゴリズムは、標準となる自動制御手法のひとつであるPID制御の性能を有意に上回る結果を示した。同研究は、実患者で試行されていない仮想環境内の結果であり、承認を受けた臨床試験に進む必要がある。しかし、将来的には従来の機械制御にとって代わり、理想的な麻酔量をさらに洗練させる可能性を秘めているだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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