医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例機械学習モデルが示すCOVID-19症例数と陽性報告数の乖離

機械学習モデルが示すCOVID-19症例数と陽性報告数の乖離

COVID-19のパンデミック以降、研究者たちは実験室的に確認されるPCR陽性者数(報告数)と、実感染者数の差に注目してきた。米テキサス大学などの研究チームは、機械学習アルゴリズムによってこの実感染者数を推定することにより、報告数は実態に比して著しく過小である点を指摘している。

オープンアクセスの査読付き科学ジャーナルであるPLOS ONEから公表されたチームの研究論文によると、パンデミック以降、米国での実累積感染者数は報告数の3倍程度と推定されるという。チームのモデルでは今月4日の時点で米国では7100万人が感染したとしており、これは陽性報告数の2670万件を大幅に上回る。推定された7100万人のうち、現在罹患中の者は700万人と推定される。また、特に被害が大きかった米国以外の25カ国における実際の累積症例数は、報告数の5-20倍にもなるとしている。

チームの機械学習モデルは公開済みの疫学的パラメータと症例報告数から日々最適化を続けている。著者らは「報告数のみに依存することなく、実症例数を正確に推定することが有効な公衆衛生政策の策定に欠かせない」とし、同フレームワークの強化と拡張を目指している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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