子宮頸がんのスクリーニング検査は、1940年代から導入が進んだ古典的な子宮頸部細胞診による前がん病変の発見が長らく主流であった。しかし、低・中所得国における子宮頸部細胞診には、検査機会と医療資源の限界が指摘されてきた。そこに、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染による病態の発生が明らかになり、次世代の検査技術による補完と代替が期待されている。
マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究チームは、学術誌 Biophysics Reviewsに「AIとナノテクノロジーによる細胞プロファイリングで子宮頸がん検診の格差是正を目指す」と題した論文報告を行っている。そこでは、次世代の子宮頸がんスクリーニング検査技術のひとつとして、「AIM-HPV: Artificial Intelligence Monitoring for HPV」というMGHが主導する深層学習技術が挙げられた。
同学術誌の出版元である米国物理学協会(AIP Publishing)のリリースでは、AIM-HPVについてを詳細に紹介している。この技術においては、子宮頸部のブラッシングで採取された細胞から抽出されたHPVのDNAが、生体に適合するシリカビーズと接触するとダイヤモンド型の物質を形成し、顕微鏡で視認できるようになる。顕微鏡観察が難しい環境では、スマートフォン上のAIアプリによる読み取りが可能である。AIM-HPVは従来のコルポスコピー下細胞診に付随する主観性を回避しながらも、その検査結果は十分な精度を示したため、医療資源の乏しい環境を想定した臨床試験が続けられている。
研究チームは「素晴らしい技術があっても、国と地域によってはそれが十分に機能していない。だからこそ次世代の安価な技術を見つけることに対する大きなモチベーションがある」と主張する。新しいスクリーニング技術は子宮頸がん検診の民主化とがんの予防促進を実現できるか、その成果が待望されている。