卵巣がんリスクをAIで予測 – 豪州発の大規模プロジェクト

卵巣がんは自覚症状が乏しく、発がん要因にも未解明の部分が多いため、致命的な診断の遅れを招きやすい。進行がんとしての検出が半数近くとなる状況だが、進行例の5年生存率は30%前後であり、他のがんに比しても厳しい転帰となる。オーストラリアにおいて、AIで15年間の卵巣がんリスクを予測する、大規模研究プロジェクトが開始される。

研究を主導する南オーストラリア大学のリリースによると、連邦政府から120万ドルが支給された4年間の同プロジェクトでは、データベースに登録された27万3千人の女性患者記録に基づき、卵巣がんの遺伝的リスクおよび物理的リスクを機械学習モデルによりマッピングしていく。特に代謝物質の解析に焦点が当てられ、脂質代謝の変化が卵巣がんのバイオマーカーになると研究チームでは想定している。卵巣がんの発症には、年齢・子宮内膜症・肥満・排卵といったリスク因子が明らかになってきているが、それらの要因に対し、ホルモン剤や経口避妊薬、アスピリン、あるいは食事療法などによってリスクを低減できるか、近年期待が高まっていた。研究チームは、卵巣がんの適切なリスクマッピングによる早期スクリーニングの実現を狙う。

オーストラリアでは毎日3名の女性が卵巣がんで亡くなっているとの試算があり、「サイレントキラー」の異名をもつ卵巣がんへの対抗策には強い関心が寄せられている。栄養疫学領域で世界トップクラスの研究者として知られ、プロジェクトを率いるElina Hyppönen教授は「卵巣がんのリスク要因を包括的に解析する世界初の大規模研究により、発症原因・早期発見・予防について短期間で大きく前進できると信じている」とプロジェクトに対する意気込みを語る。

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The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。