ドイツの研究チームは、卵巣がん患者の病理画像から、相同組換え修復欠損(HRD)の状態と、PARP阻害剤の感受性を予測するディープラーニングモデルについての研究成果を発表した。本論文はEuropean Journal of Cancerに掲載されている。
PARP阻害剤は、卵巣がん患者に用いられる化学療法の一つであり、腫瘍組織において、相同組換え修復という遺伝子修復機構に欠損が認められる場合、有効性が高いことが示されている。これまでHRD状態の評価には、次世代シーケンサーを用いた検査が必要であったが、本モデルは迅速かつ低コストな代替手段となる可能性を持つ。
研究論文によると、チームは208人の患者から得た208枚のHE染色の病理画像のデータに対して、事前学習済みの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて特徴量を抽出し、HRD状態の分類タスクについてTransformerモデルに教師あり学習を行った。AUCは0.72という性能を示したが、外的検証ではAUCが0.57であった。一方で、生存時間解析では、同モデルを用いて定義されたHRD陽性患者群の無増悪生存期間(PFS)がHRD陰性群よりも延長していることが確認され、PARP阻害剤の感受性を予測できる可能性が示唆された。
著者らは、本研究について「同様のモデルで、外的検証において十分な精度を示したものは未だなく、今後の課題である。染色法や学習データのアノテーション方法、データサイズの工夫による精度向上を目指す」と述べている。また、PARP阻害剤の治療効果予測においては、より適切な治療選択が可能になることが期待される。
参照論文:
Predicting benefit from PARP inhibitors using deep learning on H&E-stained ovarian cancer slides
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