医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例網膜眼底画像を用いて糖尿病関連腎臓病の検出を行う深層学習モデル

網膜眼底画像を用いて糖尿病関連腎臓病の検出を行う深層学習モデル

糖尿病関連腎臓病(DKD)の早期発見と糖尿病性腎症(DN)の特定は、早期治療介入において重要である。中国の研究チームは、網膜眼底画像からDKDとDNを検出する深層学習モデル「Deep DKD」を開発し、その成果をLancet Digital Health発表した。

上海糖尿病予防プログラムのコホートから70万枚を超える網膜眼底画像を取得し、Deep DKDの事前学習を行った。DKD検出に関する内部検証では、約50万枚の網膜眼底画像と臨床データ(性別、BMI、喫煙状況、血圧、糖尿病罹患期間、HbA1cなど)を用い、AUCは0.842だった。外部検証は、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、イギリスにおける10のコホートから得られた多民族データセット(65,406名)を使用して行い、AUC0.791から0.826を達成している。また、DNと非DKDの鑑別に関しては、約1,000枚の網膜画像による内部検証でAUCは0.906を示した。外部検証は、中国、マレーシア、イギリスの3つの多民族データセット(244名)で行われ、AUCは0.733から0.844を達成している。さらに、上海のプライマリーケアクリニックで行われた前向き研究では、DKDの同定において感度89.8%を示した。

現在、DNの確定診断には腎生検が必要だが、このような侵襲的な検査を行うことなくDNを同定することが期待されている。研究チームは、「Deep DKDを網膜眼底検査の定期的な検査に組み込むことで、DKDのスクリーニング、ひいてはDNの同定が可能となり、費用対効果が高く、プライマリーケアの現場での活用が期待できる」と述べた。

参照論文:

Non-invasive biopsy diagnosis of diabetic kidney disease via deep learning applied to retinal images: a population-based study

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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