医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例メラノーマにおける腫瘍浸潤リンパ球(TILs)評価へのAI活用:客観的指標の確立

メラノーマにおける腫瘍浸潤リンパ球(TILs)評価へのAI活用:客観的指標の確立

メラノーマにおいて、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)は治療効果や予後と関係する重要なバイオマーカーであることが知られている。しかし、病理医による評価では、観察者間のばらつきが生じやすく、一貫性のない臨床的判断が生じるという課題があった。これに対し、カロリンスカ研究所らの研究チームは、TILs指標群を算出するモデルが、高い再現性をもって予測を行うことが可能であるとの研究成果を発表した。

JAMA Network Openに掲載された本研究では、既存のリンパ球識別モデルを改良したニューラルネットワークに、103枚の組織切片画像を用いて学習させ、111枚のテスト画像に対してTILs指標群の算出を行った。その下で、再現性や精度について、病理医による評価と比較した結果、総じてAIモデルが高い性能を示した。再現性を反映する級内相関係数(ICC)については、AIモデルが全指標で0.9超え、病理医では0.4~0.9であった。また、性別・年齢・病期で調整した多変量解析において、患者予後と関連する因子は、「病期」と「AIモデルが算出した指標群」となっており、予後予測においても有用であることが明らかとなった。

研究メンバーは「今後、再現性の高いAIモデルを用いることで、客観的な指標の算出が可能となるだろう。TIL指標群は免疫療法の効果とも関係することが知られており、今後は患者の層別化にも繋がることが期待される」と述べている。

参照論文:
Pathologist-Read vs AI-Driven Assessment of Tumor-Infiltrating Lymphocytes in Melanoma  


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R.A.
R.A.
東京大学医学部医学科。医学を学ぶ傍ら、機械学習や深層学習に関心を持ち、シンクタンク・AI企業でのインターンにて、データ分析や社会実装の現場を経験。テクノロジーを活かした知の発掘,医療の質向上の実現を目指している。
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