医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例うつ病患者に対するVRを用いた運動療法:ランダム化比較試験

うつ病患者に対するVRを用いた運動療法:ランダム化比較試験

適度な運動は、うつ病の症状の軽減に役立つとされていているが、運動療法を実施する際には、その継続性が課題となる。バーチャルリアリティ(VR)を用いることで、モチベーションの向上や多様な運動環境の提供につながり、運動療法の継続に寄与することが報告されている。中国の研究チームは、うつ病の成人患者を対象に、VRを用いたサイクリングマシンによる運動効果について、ランダム化二重盲検試験を実施し、その結果をJournal of Medical Internet Researchに発表した。

研究チームによると、2023年から2024年の間に、外来受診によりうつ病と診断された114名の患者が登録され、VRを用いたサイクリングマシンの高強度の運動、中等度の運動、VRを用いない中等度の運動の3群に無作為に割り付けられた。うつ病の重症度評価はハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)を用いて行われ、運動療法の介入後に12週間のフォローアップが実施された。各群の寛解率は、VRを用いた高強度群で74%、VRを用いた中等度群で74%、VRを用いない中等度群で40%と、VR実施群でよりうつ病症状の改善がみられた。2つのVR実施群におけるうつ病症状の改善には有意差は見られなかったが、中等度群の方が高強度群よりも患者の満足度が高い結果となり、適度な楽しさが治療継続に寄与することが示唆された。

研究チームは、「VRの使用により、運動の楽しさを追求できることが運動療法のアドヒアランス向上につながる。今後は、治療効果の判定をより適切に行うために、非運動群との比較が必要である」と述べている。

参照論文:

Stationary Cycling Exercise With Virtual Reality to Reduce Depressive Symptoms Among People With Mild to Moderate Depression: Randomized Controlled Trial

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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