医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究医療費請求データから自閉スペクトラム症を早期スクリーニング

医療費請求データから自閉スペクトラム症を早期スクリーニング

自閉スペクトラム症(ASD: autism spectrum disorder)を早期診断するため、多面的なAI手法の活用が模索されている。ASD児は「胃腸症・感染症・摂食障害など、特定の疾患リスクが高い」といった知見に基づき、過去の診断情報からASDリスクを予測する手法が提唱されている。これに関連し、米ペンシルベニア州立大学のチームは「医療費請求データからASD児のリスク予測を行う機械学習モデル」を発表している。

BMJ Health & Care Informaticsに掲載された同研究では、米国で2005〜2016年に収集された医療費請求データ(IBM MarketScan Commercial Claims and Encounters Database)から、ASD児12,743人と非ASD児25,833人を無作為抽出し研究対象としている。患者属性や診断、用いられた医療サービスなどを予測因子として、生後18/24/30ヶ月時点でのASD診断を予測するロジスティック回帰モデルとランダムフォレストモデルを構築した。その結果、24ヶ月時点でのASD診断予測は、ロジスティック回帰モデルでAUC 0.758、ランダムフォレストモデルでAUC 0.775を達成した。また、予測変数を外来と入院で分けることにより、ランダムフォレストモデルの性能は有意に改善し、24ヶ月時点でAUC 0.834、感度40%で特異度96.4%、陽性反応的中率20.5%を示した。

米国では生後18〜24ヶ月の定期健診で、M-CHAT(Modified Checklist for Autism in Toddlers)と呼ばれるASD児スクリーニング向けのチェックリストが用いられている。著者でペンシルベニア州立大学医学部のGuodong Liu氏は「新しいAIモデルの性能は、既存のスクリーニングツールと同等で、場合によって若干上回る。我々の研究のユニークな強みは、医療費請求データという情報学的アプローチであることで、臨床ワークフローと電子カルテに容易に組み込むことができ、高リスク児にフラグを立て、医師と患者家族の双方が早期に行動を起こせるようになる」と語った

関連記事:

  1. スマートフォン動画による自閉スペクトラム症の識別
  2. 「匂いや味への反応」から自閉スペクトラム症を識別
  3. 異なる言語間で共通する「自閉スペクトラム症の発話パターン」を検出
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事