ノルウェー科学技術大学の研究チームがRadiology: Artificial Intelligenceで発表した研究により、連合学習(FL)フレームワークがMRI前立腺分割および有意な前立腺がん検出の性能を大幅に向上させることが明らかになった。連合学習(FL)とは、患者データを各施設に留めたままローカルで学習し、更新したモデルパラメータだけを統合する分散学習手法である。この研究では、4つの施設からの1,294例の前立腺分割データと3つの施設からの1,440例のがん検出データを使用し、FlowerフレームワークによるnnU-Netベースアーキテクチャを訓練した。
研究結果は、FLにより両タスクで著しい性能改善を示した。前立腺分割では、1エポック300ラウンドのFedMedian集約により、Diceスコアが各施設のローカル学習の平均性能0.73±0.06から0.88±0.03へ向上した(p≤0.01)。がん検出では、5エポック200ラウンドのFedAdagrad集約により、PI-CAIスコアが0.63±0.07から0.74±0.06へ改善した(p≤0.01)。興味深いことに、最適化されたFLモデルは集中学習ベースラインと同等の性能を達成し、前立腺分割では有意差を示さなかった(Diceスコア0.87±0.03対0.88±0.03、p>0.05)。一方、がん検出では最適化により独立テストセットでベースラインFLモデルより有意に向上した(PI-CAIスコア0.72±0.06から0.74±0.06、p≤0.01)。
研究者らは、各機関が協力することにより前立腺分割およびがん検出モデルの性能を改善できると述べている。この手法により、プライバシーを保護しながらより汎化性の高いモデル開発が可能となり、実際の臨床環境での連合学習実装への道筋を示すものである。
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