放射線治療は、がんの基本的な治療のひとつとして効果を上げている。一方で照射する放射線量は、がんの種類と臓器によって一定量に決められており、がんの特徴や患者個人の状況を必ずしも反映していない。「AIが個別の違いを理解し、肺がんに対する放射線量を決め、治療が失敗する確率を5%未満に減らす」研究が、2019年7月にThe Lancet Digital Healthに載せられた。
Medical Expressによると、米クリーブランド・クリニックの放射線科が中心となり、患者のCT画像と電子カルテ記録から、がんに照射する放射線量を個別に決めるAIフレームワークを開発した。944名の肺がん患者データでディープラーニングを利用し、治療失敗の確率が5%未満となる最適な放射線量『iGray』を決めることができた。
肺がんの放射線治療は、手術ができない患者で、がんを長い期間にわたって抑え込める優れた方法である。特に治療の失敗が予想される一部の患者においては、個別に放射線量を調整することも考えられてきたが、近年のがん遺伝子に注目したディープラーニング適用でも、目立った進歩は得られずにいた。そのような中で、画像からのアプローチで治療成績を高めた同研究は飛躍的な成果であり、AIを利用した好例である。著者らは肺がん以外にも成果が応用されることを期待している。