医師の投薬オーダーのミスを減らす様々な技術の開発が進んでいる。その一方で現状のアルゴリズム開発が現場の投薬ミスを正確に認識できるかについて限界も示されている。カナダのモントリオールにあるラバル大学と、大規模小児医療センターのCHU Sainte-Justineで行われた共同研究では、投薬オーダーの異常を検知する機械学習モデルの臨床的な有用性が検証された。
プレプリント版としてarXivで公開中の同研究によると、2005年から2018年まで284万件以上の投薬オーダーから訓練された異常な投薬オーダーを検出する機械学習モデルについて、前向き研究が2020年4月から8月まで実施された。その間にオーダーされた12,471件の投薬に対して25名の薬剤師がモデルの性能を評価したところ、異常検出の精度F1スコアは0.30と低いパフォーマンスを示した。一方で処方箋内に「何らかの非定型な異常オーダーが含まれる」という予測であれば、F1スコアは0.59と満足できる精度を達成できた。
著者らによると、このモデルにおける個々の投薬オーダーの異常検出については薬剤師の信頼に及ばなかったが、どの処方箋に異常が含まれるか特定することについては満足できる結果であった。今後は、臨床の意思決定支援ツールとして利用するもののひとつとして、予測の質を向上させていくことが有益であると述べられている。