急速で広範囲なCOVID-19ワクチン接種キャンペーンが展開される中、米FDA認可の2種のワクチン(ファイザー/BioNTech製またはモデルナ製)の実世界における安全性を継続的に評価することが重要視されている。「AIプラットフォームにより電子カルテから情報を抽出・解析することで、従来では難しかったリアルタイムのワクチン安全性評価を行う研究」がマサチューセッツ工科大学やハーバードメディカルスクール出身者らで構成された研究者集団「nference」で行われている。
同研究の最新の成果はmedRxivにプレプリント論文として公開されている。米FDA認可の2種のCOVID-19ワクチンを接種した約31,000人および同数の対照群が用意され、「接種後21日以内の受診状況」および「各種有害事象の発生率」について、電子カルテ記録から情報抽出され解析が加えられた。情報処理にはGoogleの自然言語処理モデルBERTをベースとしたAIプラットフォームが用いられている。結果として、ワクチン接種後21日以内の受診割合は、非接種者と同等で有意差を認めなかった。また、7日以内の有害事象報告として高頻度のものから列挙すると、関節痛(初回0.59%・第2回0.39%)、下痢(初回0.58%・第2回0.39%)、紅斑(初回0.51%・第2回0.31%)、筋肉痛(初回0.40%・第2回0.34%)、発熱(初回0.27%・第2回0.31%)であった。
電子カルテに記録された内容という制約があるものの、それらワクチンの臨床試験段階で報告されていた有害事象の発生報告割合と比較すると、実世界での接種後報告割合は著しく低い結果となっている。よって「臨床上注意を必要とするワクチン関連の有害事象は想定より低く、安全性と忍容性が十分なものと再確認できた」と研究者らは主張している。AIプラットフォームによる迅速かつタイムリーなワクチンの安全性追跡調査は様々な形で今後も継続され、人々のワクチンに対する信頼を積み重ねていく助けとなるだろう。