脳の動脈がコブ状にふくらんだ状態『脳動脈瘤』は、やがて破裂して命にかかわる危険性がある。まだ破裂していないコブを見つけて治療すれば致命的な脳出血を避けられる。コブは様々なサイズでトリッキーな角度のことがあり、膨大な画像を繰り返しスクロールしてコブを見落としなく拾うことは、放射線科医にとって最も手間のかかる重要な仕事であった。
スタンフォード大のプレスリリースによると、同大のチームが開発したAIアルゴリズム『HeadXNet』は、脳動脈瘤の可能性の高い場所を赤いハイライトで強調して診断医に知らせるツールである。このツールを利用することで、100画像あたり6個の脳動脈瘤を追加的に見つけられるレベルにまで、医師の診断能力を引き上げるという。研究成果はJAMA Network Openに報告された。
脳動脈瘤をみつけるAIは様々なかたちで報告されている(過去記事)。その中でHeadXNetの強みは、AIの現場への応用を考えて慎重に設計されたところにある。プログラムには設計の長所と短所が必ず含まれ、過剰な診断能力は臨床にとって時にマイナスとなりかねない。HeadXNetは医師の脳動脈をみつける能力を引き上げながら、一方で、スクリーニング検査にとって大事な、コブがないという『不在を診断する能力』に害を与えない設計と検証がなされた。例えば半透明のハイライト表示は医師の画像チェックに配慮したものである。まさに人間の診断プロセスをAIがいかに支援するかという関係を示した好例と言えるだろう。