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AIを利用したパーキンソン病の診断と評価

パーキンソン病は振戦(ふるえ)や姿勢の保持困難など、運動障害が特徴的な神経変性疾患のひとつである。認知機能低下で広く知られるアルツハイマー病と並んで頻度の高い神経変性疾患で、日本においては特定難病に指定されている。

セルビアに所在するベオグラード大学の研究チームによると、適切なAIアルゴリズムを利用することでより効率的なパーキンソン病診断と評価が可能であるという。同チームがClinical Neurology and Neurosrugeryに公表するレビュー論文では、2007年から2019年に出版された48の関連論文を分析したとのこと。特に初期のパーキンソン病診断にアルゴリズムが有効であること、症状の重症度予測にはサポートベクターマシン(パターン認識能に優れる学習モデル)が最も価値ある成果を示していること、研究は互いに対象者・方法論・アウトカム測定で大きく異なっていること、アルゴリズムの妥当性を高めるには積極的な共同研究が好ましいこと、などが示されている。

パーキンソン病は40代頃の中年発症も多くみられるが、長く自立した生活を送るためにも、治療の有効性を高める早期発見が肝要となる。手の震えや動きの鈍さだけでは、パーキンソン病が強く疑われづらいことと、CT・MRIの一般脳画像検査では初期に著明な変化を伴いにくいことも、診断の遅れにつながっている。AIを利用した効果的なスクリーニング・診断・予後予測には、臨床医たちからの期待も大きいと言えるだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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