テック企業の巨人であるIBMは、医療AIのがん分野で、業界を高みへ導く環境づくりを行なっている。IBMのプレスリリースによると、スイスで2019年7月に同時開催された2つの学術会議ECCB: European Conference on Computational Biology(計算生物学の欧州会議)およびISMB: Intelligent Systems for Molecular Biology(分子生物学向けインテリジェンスシステム)で、三種のAIプロジェクトをオープンソースとして発表した。
まずひとつ目はPaccMann(あのパックマンを意識?)で、ディープラーニングによって化合物の抗がん剤としての可能性を予測。医薬品開発の合理化に大きな役割を果たす。次にIntERAcT、医学雑誌から重要な最新情報を自動で解析する。特にタンパク質間相互作用といわれる、単体ではなく複数で機能を果たすタンパク質の仕組みを解析し、がん治療と創薬の理解に必要な多大な労力を削減する。そして最後に紹介されるのがPIMKL、がんの組織サンプルの分子データから患者を分類・個別化する。より効率的な治療を計画する助けとなる。
これらは三種の神器とも呼べそうな、ビッグプロジェクトの集体である。オープンソースとすることは、分野を主導するIBMの強い意志がうかがえる。「ソースコードを多くの研究者が利用して、潜在的な可能性が最大限になることを望む」とIBMからは声明が出されている。