医療におけるAIとロボットは革新技術の両輪といえる。それらを応用して、医療専門職の人々を単純作業から解放し高度で生産的な仕事に集中させる取り組みが進んでいる。薬剤師を単純労働から救うAIとロボットの話題は以前に紹介した(過去記事)。病院内で働くロボットの中でも「非手術用・非外科用」というカテゴリーは、2025年までに需要が4倍になるともいわれ、手術用ロボットと別の視点から注目を浴びている。
世界4大産業用ロボティクス企業の一角ABBは、米国ヒューストンのテキサス医療センター(TMC: Texas Medical Center)を拠点として、モバイルロボットYuMiを実証試験している。同施設内のYuMiは、医療スタッフの研究作業や物流業務を手伝うように調整されている。例えば、薬液・試験液の投与や混合、遠心分離、装置のクリーニングなど、反復され繊細で時間のかかるタスクを人に代わって行ってくれる。
YuMiは協調性のあるロボット(collaborative robots)という点がユニークである。人と同じスペースで働くには危険でフェンスで囲われたような領域で作業する過去のロボットと、YuMiの設計は異なる。人間の同僚と衝突しそうな状況を感知すると瞬時に動きを停止し、作業再開も簡単にリモートコントロールできる。ABBは、食品や飲料の研究室で作業自動化に取り組んできた経験を、医療分野に適用する大きな可能性を見込んでいる。
テキサス医療センターのニュースでは、実験施設を運営するJosé Manuel Collados氏とのQ&Aで、プロジェクトの概要が分かりやすく解説されている。ABBは電力システム事業を、日本の日立製作所に買収されたことでも話題となった。非手術用ロボットが医療現場に革新をもたらすことが実証された際、果たして日本国内ではどのような動きが生まれてくるだろうか。