乳がんは、日本における女性のがん罹患率で最上位のがん種である。厚生労働省2018年の人口動態統計で死亡者数は年間1.4万人超と報告され、他のがん種と比較した増加傾向が話題となる。ピンクリボンなどのプロモーションで乳がん検診自体の認知度は上昇してきている。しかし、X線によるマンモグラフィーや超音波検査による検診では、「要精密検査」と判定された受診者のうち最終的にはがんではないと診断され、いわゆる偽陽性による心理的負担や過剰な生検を受けるなど大きな課題がある。検査と診断技術に改善の余地が求められるなか、ソウルに本社をおくLunit社はマンモグラフィーのX線画像をAIで診断するソフトウェア「INSIGHT MMG」を開発・販売している。
放射線医学関連のメディア Imaging Technology Newsによると、Lunit INSIGHT MMGは2019年に韓国食品医薬品安全庁(MFDS)からの承認を得てソフトウェアの国内販売を可能とした。そのAI技術は国内医療機関であるセブランス病院・ソウル峨山病院・Samsungメディカルセンターらと共同開発された。これまで20万件以上のマンモグラフィー画像、うち5万件の乳がん症例でアルゴリズムは訓練されてきた。マンモグラフィー画像をシステムにアップロードすると、悪性の可能性が高い部位を色濃度で視覚化し、悪性度はスコア化されるという。Lunitの公式発表によると同システムはAUCで96%の高い検査精度を達成している。
Lunit INSIGHT MMGは、乳腺の発達でマンモグラフィ画像全体が白く濃く映る「デンスブレスト」というアジア女性に多い難しい条件下での乳がん検出を強みとし、アジア各国での販路拡大を目指してきた。Lunit社は直近でTech in Asiaの報道にもあるように、SoftBank Ventures Asiaの支援などを受けながらシリーズCラウンドで韓国地元証券および投資銀行から2600万ドルの調達に成功した。Lunit社CEOの Brandon Suh氏は「AIを通じてがんと闘う私たちの献身が、具体的で意味のある成果をもたらし始めています」と語っている。AIで乳がんスクリーニング検査の有効性を高める同社の取り組みはアジアの乳がん診断の革新を始めているのかもしれない。