医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例急性か慢性か? - 腰痛のタイプをAIが判定

急性か慢性か? – 腰痛のタイプをAIが判定

多くの成人にとって身近な腰痛症であるが、その扱いは決して簡単ではない。米国を中心とした鎮痛薬の濫用、いわゆるオピオイド危機(opioid crisis)は腰痛症との関連も強い。腰痛の質の判定をAIが行うことで、管理法の改善と不必要なオピオイド処方を抑制しようとする試みがある。

科学系ニュースメディアScienceDailyでは、マウントサイナイ病院の研究グループが設計した「電子カルテ内の医師記述から、腰痛が急性か慢性なのかを判定できるAIモデル」を紹介している。同研究は学術誌Journal of Medical Internet Researchに発表された。16715人 / 17409件の電子カルテ記述からAIモデルは訓練され、AUC 0.98 / F値 0.70 という良好な精度で急性腰痛症を識別できた。

電子カルテ上では、急性と慢性の腰痛症は混在され同一コードで記録されていることも多く、記述の詳細をさかのぼることでしか区別できない側面もあった。このAIモデルによってコード付け・医療費請求・治療精度での向上が期待される。マウントサイナイアイカーン医科大学の公衆衛生学准教授 Ismail Nabeel氏は「AIの正確な判定によって、患者が通常生活にすぐに戻るか、休息と医師による診察フォローアップを必要とするか、決定する助けとなるでしょう」と語る。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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