医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AIが糖尿病黄斑浮腫の第一治療選択を決める

AIが糖尿病黄斑浮腫の第一治療選択を決める

糖尿病による視力低下・失明原因のひとつに黄斑浮腫がある。網膜血管の透過性亢進によって水分の漏出が起き、網膜に浮腫を起こすものだが、慢性化すると神経細胞に不可逆なダメージをきたす。硝子体への薬物注入療法、特に抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬が治療の第一選択として使用されるケースが多いが、すべての症例に効果が期待できるわけではない。抗VEGF薬治療の恩恵を受けられる患者群を予測するAIが米デューク大学のグループから学術誌Biomedical Optics Expressに発表された。

メディアScienceDailyで同研究のアルゴリズムは紹介されており、網膜画像の検査「光コヒーレンストモグラフィー(OCT)」を治療前に1度実施するのみで、抗VEGF薬治療に良好な反応を示す患者を予測できたという。畳み込みニューラルネットワークから構築された同アルゴリズムは、治療前後で網膜の厚みが改善する患者の選別で、平均のAUC 0.866・精度85.5%・感度80.1%・特異度85.0%を達成した。

非侵襲的な画像検査 OCTを自動解析する同研究は、過去の画像や患者記録などを必要とせず、治療前のワンポイント検査のみで第一選択となる治療法を適切に決定できる点を強みとする。研究グループはアルゴリズムが臨床医の意思決定を補佐することを期待し、大規模臨床試験への拡張を計画している。糖尿病性網膜症の画像診断とAIは、良好な相性で様々な実用化が進む注目の領域である(過去記事)。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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