各国政府と医療機関が新型コロナウイルスの拡散を抑えるため、Contact Tracing(濃厚接触の追跡)の技術活用を模索している。誰もが1台以上携帯端末を持つ社会では、「Bluetooth」のような近距離無線通信規格がウイルス感染者との接触履歴を追跡できる可能性がある。AppleとGoogleがアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)とオペレーティング・システム(OS)での技術協力を発表したリリースは、パンデミックと戦う技術者達を今一度奮い立たせるか。
新技術の先駆けでシンガポール政府が開発支援したアプリ「TraceTogether」は先月に無料配布を開始した。アプリはCOVID-19感染者と、少なくとも30分間・2メートル以内にいた人々を濃厚接触者と定義する。同アプリは日本の関係機関が注目している点でも話題となったが、現在iOS版などオリジナルアプリは日本国内ではインストール不可である。シンガポール最大の新聞社 The Straits Timesが4月10日に報じたところによると、国内で100万人以上(国民5人に1人)のユーザーがTraceTogetherをダウンロードしている。しかしこれはアプリがうまく機能するために最適とされるユーザー数に不足しているという。同新聞社の4月1日付けのインタビューでNational Development Minister(国家開発省)のLawrence Wong氏は、シンガポールの人口の4分の3が使用している状態が必要と述べている。
世界中の開発者がシンガポール政府のtech.gov.sg上でTraceTogetherのソースコードとプロトコルを無料で利用可能で、同国は国際的な協力を惜しまない姿勢を打ち出す。課題とされる個人情報・プライバシー・セキュリティには、アプリおよびAppleとGoogleは最大限配慮している。しかし、高度にIT化が進む都市国家シンガポールでさえ技術の速やかな普及が一筋縄でいかない現状をふまえると、日本はどうだろうか。iPhoneシェア率が異常に高いと指摘される日本で、そのアプリを使うことがクールである機運や相互扶助の意識が急速に高まればチャンスはあるかもしれない。AppleとGoogleの巨大連合のプロモーションは公衆衛生上の危機を救うきっかけになるか。