医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例COVID-19のトリアージ - 胸部X線画像を正常と診断するbehold.aiのAI技術

COVID-19のトリアージ – 胸部X線画像を正常と診断するbehold.aiのAI技術

英国NHSの病院では新型コロナウイルス感染症患者の治療優先度選別(トリアージ)のため胸部X線検査を主力としている。トリアージの特性である大量の患者を迅速にさばき、限りある医療資源を有効活用し、さらにコスト削減も達成するためには、正常画像を識別して除外する能力を強化するアプローチの有効性が高い。AI活用の視点において異常を検出することに焦点が当たりがちだが、臨床医の意思決定プロセスでは正しいものを正しいと後押ししてくれるAIのありがたみが分かる。

英国発祥のスタートアップ behold.ai のリリースによると、同社のAI画像診断プラットフォーム red dot は「胸部X線を正常と診断するAI技術」で英国とEUの技術適合CEマークを取得したことを発表した。この内容での認可は世界初といわれており、COVID-19のトリアージの迅速化に貢献しながら英国NHSに年間1億ポンド以上のコスト削減をもたらす可能性を同社は推算する。アルゴリズムの精度は経験豊富な放射線科医と同等とbehold.aiは公表しており、現在の感染拡大でNHSの放射線科医が自宅から診断報告している状況をAIが柔軟にサポートしようとしている。

学術誌Scienceにハーバード大のチームから発表された「社会的隔離が2022年まで必要となるシナリオの可能性」のような状況の長期化を危ぶむ予測が人々に大きな衝撃を与えている。そのようななか持続可能性に重点を置いた医療政策への発想のシフトが必要とされてくる。behold.aiのようなアプローチこそ、この局面でAIをよりよく活用する人の知恵のひとつではないだろうか。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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