脳腫瘍のひとつ、神経膠腫(グリオーマ)は非常に多くの腫瘍タイプを持ち悪性度も様々である。適切な診断と治療法選択のためには、実際に腫瘍細胞サンプルを採取して分析する「生検」が大きな意味を持つ。このほど、学術誌Neuro-Oncologyに発表された研究では、MRI画像のみからグリオーマの遺伝子変異を捉え、診断を補助できる深層学習アルゴリズムが紹介された。
テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターの研究チームは、脳MRIスキャン画像単独から、グリオーマにおける特定の遺伝子変異を97%以上の精度で特定できるAIアルゴリズムを開発した。グリオーマが認められた際、まず手術を受けることで腫瘍組織を得て、その分析結果によって予後と治療戦略が変化する。特にIDH変異があるかどうかが重要となるが、適切なサンプルを取得するためにはリスクを伴うことも多く、IDH変異を特定するための非外科的アプローチが研究されてきた。
同大学で神経放射線学で責任者を務めるJoseph Maldjian医師は「グリオーマにおいて遺伝子変異を捉えることは極めて重要だが、従来から行われてきた画像検査のみからステータスを識別できる新技術は大きな前進と言える」と成果の重要性を強調する。また、今回の研究では単一の深層学習モデルから変異の検出までに至っており、「腫瘍の境界特定」と「遺伝子変異の検出」をそれぞれ別のモデルを用意していた先行研究などに比較して、そのシンプルさと高い精度が際立つ。実臨床ワークフローに統合される日が来るか、今後の発展への期待は大きい。