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量産されるCOVID-19関連論文 – プレプリントについて

新型コロナウイルスのパンデミックに対応するため、世界中の研究者が自身の研究フォーカスをこの新しい感染症へとシフトさせている。結果として、本年1月の中国での発生報告以来、実に2,000を超える関連プレプリント(査読前の学術論文でオンライン上に公開されたもの)が世に示され、先週だけでも400近い新規論文が公開された。

通常の査読プロセスには長い時間を要することから、正式な学術論文として掲載されるにはその「即時性」をある程度放棄することとなる。新型コロナウイルス感染症のように、事態の推移が急速で、知見の共有に迅速性を要するケースではプレプリントの価値が高まる。また、プレプリントサーバーはオープンアクセスが原則となるので、情報の伝達・共有がよりスムーズとなる。

一方で、科学コミュニティは常に「査読を経ていない事実」への懸念を持ち続けている。本来淘汰されるべき「明確に誤った研究手法や再現不能な結果」などを含む論文が、常に一定数紛れ込むからだ。この非常時にあっても、価値ある研究成果を有効に伝達するためには、言葉尻に惑わされず確かな背景知識を持って冷静に読み解く姿勢が欠かせない。少なくとも「査読済み学術論文でさえ揺るぎないファクトを示しているわけでは決してない」ことを肝に銘じる必要があり、盲目的な研究結果の受け入れとその活用は時として大きな危険をはらんでいる。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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