まれな遺伝子疾患であるADNP(activity-dependent neuroprotective protein)の変異は、自閉症スペクトラムや発達障害を説明する遺伝的原因のひとつと考えられている。アラバマ大学バーミングハム校(UAB)のHugh Kaul Precision Medicine Institute所長であるMatt Might氏は、ADNP遺伝子変異をもつ自身の子どもをきっかけとして、同分野の臨床試験に取り組んでいる。
Medical XpressにUABから寄稿された記事によると、ADNP症候群の臨床研究のスタートに飛躍をもたらしたのは、Might氏らが開発したAIソフトウェアエンジン「mediKanren」(日本語の「関連」に由来)の働きがある。同AIは膨大な医学・生物学のデータベースから治療法に結びつく情報を演繹・推論する。その結果、麻酔や疼痛管理などに用いられてきたケタミンを低用量使用することで脳細胞でのADNP産生を高め、患者に治療的意義を持つ可能性が検討された。
希少遺伝子疾患に有用な研究仮説を膨大な情報の中からAIで抽出する手法は、臨床試験を始めるにあたっての最初のステップを大幅に短縮できる。Might氏は、聴覚・発話・運動能力など発達の問題を抱える自身の子どもBenjaminのように臨床試験を待ち望んでいる患者と家族に朗報をもたらすことを願いながら、研究を進展させている。