がん組織内の高次元のタンパク質発現マップ(空間プロテオミクス)は疾患理解や治療選択に有用だが、高価で複雑な実験装置が必要で臨床応用にハードルがあった。そのような背景から、米スタンフォード大学などの研究チームらは、ヘマトキシリン・エオシン染色(HE)病理画像から空間プロテオミクスを生成するディープラーニングモデル「HEX」を構築し、その成果をNature Medicineに発表した。
研究では、非小細胞肺がんを中心に、実際に得られた空間プロテオミクスデータと対応するHE病理画像を用いてHEXモデルを訓練した。HEXによるバイオマーカーの分布は、従来の臨床病理マーカーを用いた場合に比べて予後予測精度が22%、免疫チェックポイント阻害薬への反応予測精度が24〜39%向上した。また、HEXによる仮想空間プロテオミクス解析から、治療が効く腫瘍では「ヘルパーT細胞とキラーT細胞が隣り合って協調している」のに対し、効かない腫瘍では「免疫抑制性のマクロファージや好中球が集積している」という、具体的な微小環境の違いが明らかになった。
著者らは、HEXの重要な特長として、標準的なHE病理スライドのみを用いて、多数のタンパク質発現を低コストかつ高解像度で空間的にマッピングできる点を挙げている。今後、HEXが臨床現場へ実装され、複数のタンパク質の空間的配置に基づく生物学的解釈がより容易になり、治療反応や疾患進展に関与する新たなバイオマーカーの発見につながることが期待される。
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