脳卒中の主要な治療である機械的血栓回収療法(MT)は、発症後の時間経過とともに有効性が低下し、治療可能な患者の割合が低いことが課題となっている。この解決策として期待されるのが強化学習を用いた自律型ロボットナビゲーションシステムであるが、その実現にはリアルタイムで正確なデバイス先端座標の追跡機能が必要となる。しかし、X線透視下では低コントラストやノイズ、器具の重なりなどが障害となり、追跡が困難であった。英国の研究チームは、これらの課題に対処する深層学習を用いたリアルタイムのカテーテル先端追跡手法を開発した。本研究成果はInternational Journal of Computer Assisted Radiology and Surgeryに掲載されている。
開発された追跡システムは、フレーム読み込み、前処理、推論、後処理からなるマルチスレッドのパイプラインを採用し、処理の遅延を抑えている。深層学習のセグメンテーションモデルにはU-Net、U-Net+Transformer、SegFormerを用い、2クラス(背景画像とデバイスを区別)および3クラス(背景画像、ガイドワイヤー、カテーテルを区別)での性能を比較検証した。手動でラベル付けされた中等度の複雑さを持つ生体内透視画像データを用いた評価において、2クラスのSegFormerが平均絶対誤差(MAE)4.44mmを記録し最も優れた結果を示した。これはU-Net(4.60mm)や他の3クラスモデル(5.19〜7.74mm)を上回る精度である。この結果は、デバイスの個別認識をあえて犠牲にしてタスクを「2クラス」に単純化することが、複雑な解剖学的背景においても安定して先端を特定するための、現状最も現実的で優れたバランスであることを実証している。
本研究で示された追跡手法は、CathActionベンチマークにおいて過去の最高記録(Diceスコア)を最大5%上回る精度向上を達成し、強化学習ベースの自律型MTナビゲーションに向けた信頼性の高い基盤となることが示された。一方で、ファントム環境(1mm未満の誤差)と実際の生体内データ(4〜7mmの誤差)の間には依然として性能差が存在する。しかし、不確定事項の大きい生体内での実現可能性と汎用能力を示したという点で本研究の意味するところは大きい。
参照論文:
Toward real-time autonomous navigation: transformer-based catheter tip tracking in fluoroscopy
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