ディープラーニングで睡眠の謎に迫る

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睡眠中に脳波を記録する研究は多岐にわたるが、K複合(K-complexes: KC)とよばれる短い脳波のアップダウンの意義を探る研究がある。「K」に似た形と評されるその波形の出現が欠乏していると、アルツハイマー病や不眠症などの問題との関わりが示唆されてきた。

学術誌 Sleepに発表されたのは、オーストラリアのフリンダース大学のチームによる「KCをディープラーニング手法で検出する」研究である。KCは睡眠中2分ごとに半秒程度現れ、その項目を含めて一夜の睡眠時間からスコアリングするには、検査1件当たり専門技術者で0.5-1.0時間ほどかかるという。しかもスコアラーの間での一致度は50%程度とばらつきが大きかった。ディープラーニングアルゴリズムによってKCを自動スコアリングすることで、評価にかかる時間は1件当たり約3分間に高速化され、F1スコア0.78にまで検出精度への信頼が高まった(従来利用可能なアルゴリズムは0.2-0.6程度)。

KCの評価にかかる労力を大幅に削減することで、その意義・役割の研究が促進されるかもしれない。現状で有力な仮説として、睡眠中の感覚入力に対して起床するか睡眠を維持するかの意思決定処理を、KCは反映しているのではないかという。睡眠トラッキングは技術発展と製品の市販化が進む注目の領域である。AIが睡眠の謎の解明に重要な役割を果たすことが期待されている。

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TOKYO analytica
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1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcherを経て東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。