AIが医師の意思決定を支援することが徐々に浸透してきたが、そのパフォーマンスや臨床医がどのようにAIと付き合うべきか検証した研究はまだ少ない。「皮膚がんの診断でAIが臨床医を支援することが最も好ましい診断精度を達成できる」という可能性が、豪クイーンズランド大学を中心とした国際研究チームから学術誌 Nature Medicineに発表されている。
クイーンズランド大学のニュースリリースによると、同研究では色素性皮膚病変を診断する畳み込みニューラルネットワークが医師の意思決定を支援するパターンについて比較されている。その結果、質の高いAIが医師の臨床的意思決定を支援することが、AI単独や、あるいは医師のみでの診断よりも精度を向上させることが示された。また、経験の少ない臨床医がAI支援の利益を最も得られることも明らかとなったという。一方で、欠陥のあるAIは専門医にまで誤解を与える可能性も言及されている。
クイーンズランド大学のMonika Janda教授は「将来の臨床医にとっては、AIを用いたスクリーニングや診断サポートが日常的なものになることを意味しています」と語る。これまでの研究の多くは「AIが専門医レベルの診断精度に達するか」に主眼を置く一方、本研究は現実的な「AIの臨床活用のあり方」を踏まえた検討を行っている点で新規性がある。今後は、本研究のように臨床現場のワークフローを想定した改善効果を検証するものが存在感を増してくるだろう。