動物自身は症状を言語で訴えることはできない。獣医師が日常的に利用する各種検査で、診断の助けとなるAI技術を導入する動きがある。カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)の獣医師らは、イヌのアジソン病(副腎皮質ホルモンの機能低下)を血液検査から機械学習アルゴリズムで診断する研究成果を学術誌 Domestic Animal Endocrinologyの2020年7月号に発表している。
米国の獣医学会(AVMA)のニュースリリースでは同研究を紹介しており、UC Davisではイヌの血液検査からアジソン病をAUC99%以上の精度で診断できる機械学習アルゴリズムを開発しているとする。アジソン病のイヌは獣医師にとって診断が難しく、血液検査を行ったとしても、消化器・腎臓・肝臓などの疾患にも解釈できてしまうという。症例経験の乏しい獣医師でもアジソン病のスクリーニングが容易に行えるようになることを研究グループは期待している。
同研究グループのKrystle Reagan博士は、ヒトと同様にイヌも感染するレプトスピラ症の診断にも応用範囲を広げて研究している。UC Davisでは医学・獣医学・看護学など垣根を越えた学術的コラボレーションが可能なデータサイエンスとAIの研究センター(CeDAR: Center for Data Science and Artificial Intelligence Research)が設置されている。これらの研究はイヌの命を救うだけではなく、人間の医療にも橋渡しとなる大きな可能性があり、今後の動向にも注目したい。