米国で増大する医療費全体のうち4分の1が無駄遣い・不経済と指摘する研究がある。米国2018年の医療費約3.6兆ドルのうち、約2660億ドルが管理費で、医療費の請求1件あたり推定コスト120ドルを例として、無駄の中で管理費が最も大きな割合といわれる。特に、医療機関から保険支払機関への請求の約5-11%が査定・返戻となり、それを回避し回収するためのコストは医療機関にとって負担となっている。
そのような社会問題を解決する研究「医療費請求の提出前に保険支払いを予測する機械学習モデル」が、機械学習の国際会議 ICML: International Conference of Machine Learning 2020で発表された。「Deep Claim」と呼ばれるその予測AIを開発したAlpha Health社のプレスリリースによると、同システムは請求に含まれる患者属性・診断・治療・請求金額のデータから、保険支払いの最初の回答日・査定される確率・査定理由のコード・請求内の疑義がある領域を予測する。同システムは従来の基本システムより約22%上回るパフォーマンスを発揮した。
同研究では、ディープラーニングシステムによって保険請求プロセスを正確に自動化することで、個々の病院は年間数百万ドル規模の節約となり、米国全体で年間数十億ドル規模の経費削減が図れる可能性があると主張している。Alpha Health社の共同創設者でCEOのByung-Hak Kim博士は「AIによる診断や創薬に注目が集まる一方で、医療のバックオフィスにも同様のアプローチで大規模に適用できるチャンスが示されています」と述べた。