睡眠が「古い記憶の忘却」を妨げる可能性

人の脳は、新しい物事に挑戦する最中にも古い知識・記憶を消失しないようにするため、独自のメカニズムを進化させてきた。米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、「睡眠が古い記憶の忘却を妨げている」という仮説を立て、コンピュータシミュレーションによる検証を進めている。

ライフサイエンス分野の査読付きオープンアクセスジャーナルである「eLife」に収載されたチームの研究論文によると、視床皮質モデルにおいては、新しい記憶訓練を開始すると古い記憶の忘却に繋がる一方で、新しい学習の直後に睡眠をシミュレートすると、損傷が回復し記憶全体の強化がみられたという。新しい記憶が、以前に割り当てられ済みのニューロン/シナプスリソースを奪い合った場合、睡眠中に古い記憶を再生することでシナプスのフットプリントが変更され、重複するニューロン群が複数の記憶を格納できるようになったとのこと。

News-Medical.Net取材に対し、研究を率いたMaksim Bazhenov教授は「睡眠による古い記憶の修復機能は、先端のコンピュータシステムに欠けているものである可能性がある」と話し、高次元の継続学習を達成するためには「AIに対して睡眠に類似する状態を付与する必要性」があることが示唆されたとしている。

前の記事米NIH – COVID-19へのAI利用を推進
次の記事指から血液2滴でCBC 完全血球計算 – イスラエル Sight Diagnostics
TOKYO analytica
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。
The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。