医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究ICU患者の糸球体濾過量を推定するための機械学習アプローチ

ICU患者の糸球体濾過量を推定するための機械学習アプローチ

フランス・リモージュ大学などの研究チームは、造影剤のスパースな薬物動態データと限られた予測因子から、集中治療室(ICU)の患者における糸球体濾過量を推定する機械学習アルゴリズムを構築した。

Clinical Pharmacokineticsに14日公開されたチームの研究論文によると、86名のICU入院患者に対して、非イオン性造影剤として知られるイオヘキソールを静脈内投与した後、5・30・180・360・540・720・1080・1440分後の各時点で血液サンプルを採取したという。37の潜在的な予測因子を考慮した上で、ノンパラメトリック回帰である多変量適応型回帰スプラインと、決定木のアンサンブル法である勾配ブースティングから糸球体濾過量を推定する最良のアルゴリズムを導いた。結果的に、180分および720分の血中イオヘキソール濃度と3つの予測因子から、ICU患者における正確な糸球体濾過量の評価を可能とした。

糸球体濾過量はクレアチニンやイヌリンが一定時間内にどの程度尿中排泄されるか、あるいは血中残存があるかを測定することで、腎臓の濾過機能を評価するもの。項目としての臨床的な価値は高いが、正確な評価のためには長時間に渡って蓄尿を行う必要があり簡便な検査ではなかったため、本機械学習アプローチによる新しい評価法には今後の進展が期待されている。

TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事